第27話 落し物と3人姉弟 1
遅れて申し訳ございません。疲れが溜まっていて間に合いませんでした。
何か気持ち良い感触で目覚めると、モフモフとプニプニに顔を挟まれていた。シャールとプービーだった。
「...ふわぁああ...眠い...」
昨夜は早く寝たので朝早く起きれた。もちろん、僕だけがね。後の二人をいつも通りに起こして、冒険装備ではなく、動きやすい服装に着替えた。これから街全体を探し回るから重い格好はキツイはずだ。
準備が整った僕達は軽く朝食を食べた。相変わらずマヨネーズが人気で食堂に客で溢れている。シェリーちゃん曰く、最近冒険者の中で噂になって、この宿屋に泊まる冒険者が増えてるらしい。今では開いている部屋がなく、常に満室で料理も沢山注文するので、ギルガルドさん達は嬉しい悲鳴を上げているらしい。それは良かった。今日も朝食を大盛りで食べた。
朝食を食べた僕達は北の門へ向かった。落し物を北から南へと虱潰しで探すつもりだ。
「それじゃ、始めますかね?」
「私とモンモンは西のエリアを、キッキーは東のエリアを探し回ってね。その方が効率的だよ」
「こんぐらいなら半日あれば十分だ」
「流石お兄、頼もしいね。それだと、昼頃になったらギルドで一旦集まってから昼食を食べて、また夜まで探し回って行こう。昼に情報を更に集めよう」
「「オッケー!」」
「さぁ、探索開始だ」
二手に別れた僕達は街の西のエリアを北から南へと探索を始めた。辺りを見回すと遠くに誰かがゴミを捨てている姿が見えた。その場所は防壁の側にあった。ゴミ置き場を漁った。元の世界ではゴミを分別したり、匂いが広がらないように管理をしているが、このゴミ置き場は違っていた。鉄くず、生ゴミ、古い衣服、ましては動物の死体も見えている。ここには結構流れて来るらしい。ゴミを漁りに烏が集まっていた。
「直接手で触るのは危ないかな?鉄くずとか突起物が混ざっているね」
「どうする、モンモン?」
「早速詰んだね。どうするか...」
流石にこの量だとゆっくり探していたら想定期間を過ぎてしまうな。
“マスター、マカセル”
「プービー?」
地面にプルンと着地したプービーは自分の体を大きくした。そして大量のゴミの山を体に取り込み始めた。プービーの体の中で溶けていく物と溶けない物があった。溶けていく物は普通のゴミとか燃えても大丈夫なゴミ、溶けない物は燃やせないゴミや金属製の物が残っていた。溶かせる物がもう無くなったのか鉄くずを吐き出した。思いの外、綺麗に磨いたように輝いていた。汚れまで溶かしたみたいだ。
「プーちゃんすごーい!」
「これなら直ぐに探せそうだね!」
いつの間にかプービーにもあだ名が付けられているな。
ともかく、これなら直ぐに探せそうだ。このままプービーに分別させて、僕達は鉄くずの中から目当ての物を探し出す、この繰り返しだ。一応依頼の中には人形とかぬいぐるみもあったので、プービーに注意しながら探した。全部を溶かして確認したところ、落とし物リストから該当するものは6つしか無かった。見つけたのは指輪、ブレスレット、ボロボロになってしまった人形とぬいぐるみが2つづつ見つけた。見つけたのは一つの袋に入れてまとめておいた。それ以外の物は適当にアイテムボックスに放り込んだ。あとで、鍛冶をする時に必要になるだろう。個数を確認したら、同じ種類の金属で×何個と感じでまとまっていた。これは便利だ。全部バラバラだったらアイテムボックスの項目が大変な事になってしまうだろう。なんせ拾った個数が三行になってしまった。これはしばらく金属類の素材は大丈夫だろ。でも、まだ街全部を探していないのでもっと増えるだろう。
これまでかかった時間は約一時半。僕達は更に探し歩きながら次のゴミ置き場に向かった。もう一箇所のゴミ置き場も漁ってみたが、落し物は二つしか出なかった。いったん昼食前になったので、お兄と合流するために冒険者ギルドに向かった。
しばし歩いてギルドの前に到着すると、お兄が先に着いていて外で僕達を待っていた。何で中に入って待っていないのかと愚問に思っていたら、お兄の見た目が酷かった。服と体は泥塗れになって、手にはわずかだが傷も見えていた。
「派手に探し回っていたみたいだね、お兄」
「おお、来たか。助かった、このままギルドの中に入れなくて困ってた所だったんだ」
「キッキー頑張ったね!」
お、たまにしか出ないお兄への褒め言葉だ。小さいから威厳が無いので自分がやっても似合わないと自覚していて、人前も家でもあまりしなかった。まぁ、家の家事を穂飛んで僕がこなしていたので、褒める場面が無かったってのが多い。お兄は家事はあまりしなかったし、怠けていることが多い。自動的に褒め言葉の殆どが僕に向かう言葉になったしね。
「お姉、お兄の傷を癒してあげて。それと汚れも取らないと」
「どうすれば良いの?」
「う~ん...確か光が回復が高いイメージだけどね。汚れとかは水魔法だったかな?光で癒す、水で綺麗にする、と思えば出来るはずだよ」
「やってみる!」
お姉が魔法を発動するために魔力を高めた。
『ライト・ヒール』
『ウォーター・キュア』
呪文を唱えると、お兄の傷と汚れが見る見るうちに消えていった。
「おお~!」
「治った!綺麗になった!」
「ほえ~、やっぱ魔法って便利だね!」
「いや、自分で魔法を使っといて何言ってるの?」
「前使ったときは魔物を倒すか、物を削るときに使った攻撃魔法しか使っていなかったからね。改めて新鮮に感じちゃって」
「まぁ、僕達は最近まで日本の学生だったからね。無理も無いよ」
日本だとよほどの事が無い限り平和な国だ。ここだと命の価値が軽い。街から少しでも離れただけで魔物に襲われる。勿論、それなりに力を持っていれば防衛が出来るが、魔物より弱いか魔物の数が多いと確実に命は無い。正に弱肉強食の世界だ。
「そんなことより早く腹減った。ギルドで何か食おうぜ」
「そうだね、ここまでの現状を確認しながら食べよう」
「賛成!」
僕達は昼ご飯を食べに冒険者ギルドに入った。冒険者ギルドの中にも食堂があったのを前から知っていたが、毎度夜にしか訪れていなかった。夜だと他の冒険者が酒を飲んでは暴れているのを見かけていたので、夜にはあまり寄らないようにしていたので、ここで食べるのは初めてだった。
ここの食堂の不陰気はどっちかって言うとバーみたいな感じだった。でも普通に料理も出ていたので安心した。僕達はいつも通りの量を注文した。周りの視線が気になったが、構わず今日の結果をお互いに報告しあった。
結果、僕とお姉は八つ、お兄は五つ見つけた。でも全部玩具や人形だった。合計十三か...明らかに少ない。街の半分を探してもこれだと残り半分も期待が薄い。
「壊れた玩具や人形は僕が治せるけど、宝石類が中々見つからないね」
「もう誰か拾っているんじゃないか?」
「お兄、それを考えたらもうお終いだけどね」
「でも宝石とか売り飛ばせれたらもっと見つかり難くなるね」
「お姉、サラッとむごいことを言わないでくれる?」
全てを平らげてジュースを飲みながら現状確認をする僕達。色んな可能性を考慮して見るが、かなり絶望的だ。この依頼、達成なるか否か...出来れば全て探し出して、元の持ち主に返したい。
どうするか悩んでいると隣の席から他の冒険者が話しているのを聞こえた。
「最近、街に烏が多いな」
「そうなんだよ。俺この間、銀貨一枚を取られたんだ」
「そりゃあ大変だったな」
烏か...そういえば雑用の依頼に烏を追い払って欲しいとの依頼があったな。
そういえばゴミ捨て場に結構集まっていたな。でも、プービーが先にゴミを全て食べきった頃にはいなくなった。まさか...
「お兄、ゴミ溜めの近くに烏がいた?」
「そういえば何かいたな。何もしてこなかったからな。只、西の方角に全羽が一斉に飛んでいったな」
お兄の言葉でヒントを得られた。
「お姉、お兄。今すぐ西に向かうよ」
「「どうして?」」
見事にハモったな。でも流石に時間が無いと思うので、急ぐことにした。
「級にどうしたのモンモン?」
「いつもらしくないぞ」
「お姉、お兄。良く聞いて。さっきの烏たちは誰かに操られているの」
高性能な姉弟ですね。