第18話 処理と魔力草と3人姉弟
熱すぎて体力がなかなか持ってくれませんね。気分はマンボウです。
お姉のおかげで大量に対処出来たけど、この量をどうやって血抜きをするか...一々していたら時間消費が激しいし、血抜きをしていないボアが駄目になってしまう。
「モンモン、早く地抜きを済ませろ。全部やっていたら日が暮れる」
「さすがに全部は無理だよね。二十匹いると思ったけど三十匹以上もいるし。仕方が無い、依頼分だけ持っていこうか」
「だったら私に任せなさ~い!」
『ウッド・バインド』
お姉が呪文を唱えると地面から蔦が生え、ボア達の脚を絡め取っては近くの木々に吊るした。
「新しい属性魔法か?」
「うん!これなら血抜きを簡単に出来るでしょ?」
「凄いよ、お姉!助かったよ」
「それほどでも~」
照れているお姉をほっといて、アイテムボックスから適当にナイフを出してボアの首元を斬った。まだ仕留めてから間もないので鮮明に赤い血が流れ始めた。動物の血でも少し躊躇いがあったが、生きる為に覚えておかないといけない感覚なので、構わず次のボアの首元を斬った。お姉は手を伸ばさないと届かない高さだったので、お兄が手伝ってくれた。笑いを堪えながら。
これ以上お姉の高さの事を触れれば感ずかれるので、血抜きに全精神を集中する。
全部のボア達とジャイアントボアの首元を斬り、血が抜き終るのを待っていたらお腹が減ってきた。
「モンモン、お腹空いた」
「しまった、そういえば昼に食べるものを忘れてた。どうしよう?」
「おいおい、食べモンならそこに沢山あるじゃん」
お兄が吊るされているボアを指差した。
「僕、解体の仕方なんて知らないけど」
「一匹位なら大丈夫だろ。こんなに有り余っているのに」
「そう、だね。やった事は無いけどいっちょやって見ますか!」
元の世界で一度もやったことが無いが、やらなければお腹が減ってまともに動かなくなったら大変だ。やるしかない。
一番最初に血抜きをしたボアの前に立った僕はナイフを持ってどうするか考えた。まずは何処を斬るか...そういえば動物類は内臓を早く処理しなければ肉を痛めるって聞いたことがあるな。ならやってみよう。
お兄に吊るしている蔦を斬ってもらい、地面に下ろされたボアの腹部に近づいた。腹部の表面を斬るイメージで腹を割いた。すると中から内臓がこぼれだした。かなりグロいな...耐えろ、僕。お姉とお兄がシャール達とじゃれ合ってるのを横目で見ながら作業を黙々と続ける。
何とか内臓を中から全て取り出し、土に埋めた。一様、他の魔獣や獣を寄り付けない為に埋めた。帰り道に戦う精神力が残っているか怪しい所だ。
「これで良しっと。あとは皮を剥ぐ作業だけだな」
これはどうして良いか正直分からない部分だった。経験なしでここまでやったのが奇跡に近い。料理センスの部分もあるけど...ラノベではやり方を覚えて自力で解体するか、スキルを覚えて自動に行動して解体する場面があるけど。やっぱフィクションとは違うか。解体スキルって無いかな〜?
(スキル‘多様多芸’の効果で‘解体’を習得しますか?)
え、また?段々と‘多様多芸’の仕組みが見えて来た。僕が覚えたい、習得したい思いが強く、何か行動を移す事で発動するのかな?そうでなければこんなに簡単に習得するわけが無い。
詳しい事は後で検証するしかない。今は解体だ、習得するために強く念じた。
(スキル‘解体’を習得しました)
習得できたみたいだ。早速試してみよう。
ナイフを握り直し、ボアの体に刃を突き立てると、なぜか分からないが自然とやり方が分かった。その後の作業は割りと簡単だった。肉を切る生々しい感覚は無くならないが、それでも動きを止めなかった。徐々に体から皮が剥がされ、剥がされた後は各部位に分けられた。
十数分もしたらボアは見事に皮、肉、骨に分けられていた。
「ふう...終わったかな?」
「凄いよ、モンモン!」
一息つくとお姉が驚いていた。隣のお兄も驚いた表情だった。
「初めてなのに凄いな。やった事があったのか?」
「やったことは無いよ」
「え?じゃあどうやってあんなに手慣れた感じてバラしていたの?」
「僕に‘多様多芸’って言うスキルがあるんだけど、条件と僕が習得したい思いがあれば簡単に習得できるんだ。それの条件が揃って‘解体’のスキルを習得出来たから、すぐに解体出来たんだよ」
「すげぇな、魔法とかは?」
「まだ分かんないね。これから検証してみるけどね。さ、早く焼いて食べよ」
僕達は焚き火を起こし、周囲を警戒しながらボアの肉を焼いた。食べたらすぐに移動しなければ。匂いに釣られて他の魔物が集まってしまう。今回は特例だが、本来は自殺行為に近い行動だ。元の世界でも熊やりなんやりで危険だ。でも、ここは異世界なのだ。危険度が元の世界とは数倍も違うのだ。用心に越したことはない。
焼いている途中にスキル‘調理’を新しく覚えた。検証の為に習得したら、心なしか少し美味しくなった。調味料も無かったにも関わらず。お姉とお兄も喜んでもらったので試したかいがあったな。
ボアの肉は少し臭かったけど構わず食べた。
ある程度食べて休んで、全てのボアとジャイアントボアの肉を回収した。全てアイテムボックスに入れてから魔力草を探し回った。
オールさんの助言道理に僕とお姉は‘魔力感知’を使って魔力を強く感じる方向へと進んでいた。結構ぼんやりと魔力を感じているけど、お姉が正確な方向を教えてくれたので迷わずに進む事ができた。流石お姉の魔力量様様だな。
お姉のお陰で目的地に着いた。そこは広く清い輝きを放ち、周りには綺麗な花々を咲かしていた泉だった。
「綺麗...」
確かに魔力を強く感じる。魔力が満ちているのかは分からないが、確かに幻想的で綺麗だった。ここ最近はこの世界の自然を見ては感動する事が多いな。神様に感謝だね。転生できて良かったと思う。
さて、観賞している場合ではない。目的を忘れるところだった。この周りを探し回れば魔力草があるはずだ。鑑定を使いまくらないといけないな。
周りに生えている草を片っ端から鑑定した。雑草を多かったけどすぐに魔力草を見つけた。
―魔力草
魔力が含まれていて、調薬すれば魔力を回復できる。
良質:C
見た目は青い花が咲いていて、魔力を感じるから探しやすそうだ。
「みんな、これを見て覚えてから探そう。かなり広いから分かれて探そう」
「これだったら私でも探せるね」
「俺は魔力が感じられないから見た目で持ってくるから鑑定して。間違っていたら捨てるから」
「僕はお姉みたいに魔力を正確に区別する事が出来ないからこのまま鑑定で探すよ。シャール達も手伝ってもらって良いかな?」
“お安い御用です”
“マスター、テツダウ”
「ありがとう、それじゃあ二十分後に集合。遠くに行き過ぎず、危険があったら知らせてね」
「だったら、誰がたくさん取るか競争しようよ!」
「その話、乗った。ビリはデコピンだ」
「シャールちゃん達は罰ゲーム除外ね」
「ちょっ、待って!何勝手にきめてるの!?」
既に魔力草採取大会が始まってしまい、各自探し待っていた。遅れを取らないように僕を魔力草を探し出しては採取した。もちろん、傷つけないように採取した。
この勝負、負けられない。お姉は時々、予想できない時に勝負を提案し、お兄が許諾して勝負が始まってしまうのは良くある事―僕の意思は問わずにだが、お兄のデコピンは危険だ。前に食らって意識を飛ばしかけた事が数回あったのだ。絶っ対に、負けられない!
二十分過ぎて泉の近くに僕達は集まり、自分達が採取した魔力草を数えた。結果と言うと...
お姉:17本
お兄:22本
僕:15本
...逃げる!!
「おっと」
『ウッド·バインド』
お姉が蔦で僕が逃げ出す前に捕らえた。
「お姉、勘弁して!お兄のデコピンはやばいから!理不尽に程があるでしょ!」
「ありがと、お姉。後で何か奢る」
「美味しいデザート楽しみ!」
「お姉の裏切り者!」
「さぁ、動くなよ。目に当たるぞ」
「ヒィッ!?」
お兄は僕の額を狙いために構えた。
「少し手かげ...」
バチコーーン!
「いっだぁああああああああああ!!!」
僕の叫び声が森の中に木霊する。
思いのほか魔力草を大量に採取してしまった3人。