第10話 ギルドマスターと歴史と3人姉弟
前回の修正で申し上げたようにこの作品のタイトルを変更させて頂きました。
毎話のタイトルとニュアンスが合わなかったので変更しました。
改めて、異世界冒険と3人姉弟を楽しく読んでいただきありがとうございます。最善を尽くします。
(6月20日修正)
「ギルドマスター、こいつ等になんとか言ってくれ。いきなりシャレにならない条件をオレ達に...」
「やかましいわ、このバカタレ共!!!」
ギルドマスターと呼ばれた男はモヒカン怒鳴りながら近づいた。身長は180は超える高さ、顔や肌が見える体には無数の傷が見え、それだけでも彼が苦難の道を歩んだ事を物語っている。顔は傷が多かったがダンディーな外見だった。歳はざっと六十に見える。
「そこの三人が条件を付けなかったとしても儂が近い内に何かしら手を打つつもりだった」
「な...」
「一部事情は聞いていたぞ。明らかにお前達が悪い。何度も言っているのに耳も傾けないバカタレ共には良いお灸だ。しばらく活動して反省すること。とっとと依頼でも受けて出直して来い!」
ギルドマスターはそう言いながら‘中二病’のメンバーを訓練場から追い出した。最後まで無様だったな。
「さて、お前さん達に聞きたい事があるので儂の個人室に来てもらう。後、ゴルファドのメンバーもだ、良いか?」
「「「「「はい」」」」」
「では付いて来い」
僕達は訓練所を後にギルドマスターに付いて行った。
融合時間が終わったシャールは僕の頭に乗り、プービーは僕が腕に抱き抱えている。通りすがる冒険者達は一瞬構えるが、ギルドマスターが一緒だったので警戒を解いたりしていた。
すぐにギルドマスターの部屋に着いた。
結構広い個人室だったので十人入っても余裕がある広さだった。ギルドマスターの作業するデスクと溜まってる書類があり、大勢来てもいいように椅子が十二席もあった。
「適当に掛けてくれ」
置いてある椅子に僕達は座った。座り心地が良かった。
「改めて自己紹介をさせてもらう。儂の名はギルデガル、ヒュースの冒険者ギルドのギルドマスターをしている」
うん?最近似たような名を聞いたような?気のせいかな。
「私は長女の善美です。ネイチャーウィザードです」
「俺は長男の元吉。職はウェポンズマスターです」
「僕は次男の元明です。ご覧の通りクリエイションサモナーです。こっちのシャドウ・キャットがシャール、このサンダー・スライムがプービーです」
「珍しく賑やかで楽しい家族じゃのう」
あれ?今、喋り方が親近感が沸くお爺さんっぽい口調になったぞ。
「さて、どうしたら良いかのう?Bランクの冒険者が一遍に現れたと思えば、実力だけ見ればCランクのパーティーに決闘で圧倒的に打ち負かすとは大したもんじゃ」
急に喋り方が変わったのでびっくりした。怖いイメージが優しく変わったのでギャップが凄いな。
「それ相当に報酬を出してやりたいのだがな、個人的な意見で周りから贔屓したように思われるしのう」
「ギルマス、それだけじゃ無いんですよ。彼等三匹のゴブリンリーダーが率いる百匹以上のゴブリン部隊をこの三人だけで撃破したのです」
オールさんが更に追加情報を付け加えた。止めて下さい...ある意味チートなんですから、大したもんじゃ無いんですよ。
「ほう、それは大したもんじゃ。その若さでか...長生きして見るものじゃ」
「そうですね。しかし、そのゴブリン部隊が現れた事で問題があります」
「何があった?」
また雰囲気が変わった。このお爺さん仕事と楽しむ事を適切に分けているので分かりにくいな。
「南の中央地区で遭遇したそうです」
「そうか、もうそこまで迫っているか...調査に向かってくれて感謝する」
「いえいえ、俺達は何も出来ませんでした。報酬の半分は彼等に出してください」
「そうか...」
何か重い雰囲気になった。何か問題があったのかな?
「えっと、すみません。何があったんですか?」
「ああ、確か君達は何も知らなかったな。ギルマス、‘邪神の進軍’の一通り説明させて頂いて宜しいですか?」
「邪神の進軍を知らないとは珍しいな。いいだろう、関係ない訳じゃないそうだな。おーい、茶を出してくれ」
ギルマスの言葉と共に三十代位の女性が人数分のティーカップとお菓子を持って入ってきた。
「彼女は副ギルドマスターのカーリーだ。主にここに来た客人にお茶を出したり、儂と共にギルドの管理を手伝っている」
「因みにギルマスは私の父です」
「「「へぇ〜...」」」
家族でギルドを運営してるとは凄いな。
「それはさておき、本題に入ろうか。君達は邪神ナルキスを知っているか?」
「あ、はい。邪神ナルキスを倒す為に旅に出たので」
「ほう、勇ましいな。だが、邪神ナルキスを知っていて邪神の進軍を知らないとは...簡単に説明させて貰おう。
時を遡る事数百年前、穏やかで農夫な大地に人達は平和に暮らしていた。だが、突如現れた邪神ナルキスは破壊と混沌をもたらし、世界を破滅させると宣言し、魔物を生み出しては戦争が起こった。当時は国同士争いも無かったのでお互い手を組み合い、何とか最初の進軍は食い止める事が出来たが、相手より連合軍の方が損傷が深すぎた」
「激しい戦争だったんですか?」
「正確な記録はもう残っていないが、十か国合わせて数千万人は出陣していたそうだ。それで生き残ったのは一割程だったそうだ」
数でも押しきれない程の戦闘力か...無理ゲーなんじゃね?
「でも問題はそこからだ。邪神は各国に強力な魔獣の個体を生み出し定期的に王都や中心地に攻め繰り返していった。それを儂達は邪神の進軍と呼んでいる」
「定期的にってどれぐらいですか?」
「十年に一度だが、国同士が手を組み合えばその国の進軍が同時になり、助けに向かえば助けに来た国が滅ぶ。過去に他の国に援軍を送った途端に攻められ滅びた国があったそうだ。そのせいで国同士の助け合いが無くなり、自分の国を守る事しか考えない思考になってしまった。その末裔や子孫は自己中心が激しい王族や貴族を生み出した。そいつ等のせいで各国の冒険者ギルドのギルドマスターは交渉や業務に駆り出される始末だ。更に、ランクの高い冒険者を雇ってはこちらの問題を無視するので被害が壮大になる」
うっわ〜...ドロッドロに腐り過ぎだろ。
「邪神ナルキスがそうなる様に仕組んだのだろう。悪趣味な事だ」
「邪神の進軍はいつ頃に起こるんですか?」
「早ければニヶ月後、遅くても三ヶ月後だと予測できる」
「え、そんなに早く迫ってくるんですか?」
「ああ、君達が殲滅させた部隊は恐らく偵察部隊だと考えられる。生き残りが残っていれば本部隊に戻って現状を報告するだろう」
しまった、取り逃がすんじゃなかったな。そうすればもっと遅くなるかもしれなかったのに。
「全滅させる事が出来ず、すみません」
「良いって事だ。遅かれ早かれ王国に報告するつもりだった、気にするな。でも、それだけの大群相手に無傷で生き残ったんだから、今後の活動に期待してる」
「「「はい!」」」
「では君達はパーティーを誰かと組むか考えているかのう?」
ギルデガルさんがパーティーの事を僕等に問う。
「お姉、お兄、どうする?」
「う〜ん、そうだね...今の所は私達三人姉弟で良いです」
「同感だ。当分は身内で活動する」
「まだ駆け出しの冒険者なので地道にランクを上げます」
「ククク、その実力で駆け出しか。これは面白い事になりそうじゃ」
「楽しまないでください、お父さん」
「すまんすまん。パーティー名は何にするか決めたかの?」
「まだ何も考えてないので、後日またここに来るのでその時にお伝えします」
「そうか、それなら次に来た時にすぐにパーティー結成出来るように手配しておく」
「「「ありがとうございます」」」
「良い返事だ。より高みのランクを目指すことだ。改めて、冒険者ギルドにようこそ」
この世界の歴史や一般知識の中で一番重要な情報を得られたので良い収穫だ。
「お父さん、彼等に与える報酬を忘れてません?」
「おお、そうだった。長話してたらすっかり忘れてたのう」
大丈夫なのかな?不安だ。
「ギルマス、彼等に我々が貰う報酬の半分を譲ってください。彼等がいなければ簡単に達成することは無かったでしょう」
報酬は要らないと言おうとしたらオールさんからの無言の圧迫感を感じた。色んな情報だけでも十分なんだけどなぁ...ここは大人しくもらうしかないな。
「分かった。調査の元々の金額は銀貨50枚だったが、邪神の進軍だと判明したので金貨3枚、そこから半分の1金貨50銀貨ずつ渡そう」
カーリーさんが金銀貨が入っている革袋二袋を持ってきた。オールさん達は一つずつ数えていたが、僕は貰った皮袋をアイテムボックスにしまって確認した。ちゃんと7金貨35銀貨と表記されていた。
「おお!アイテムボックスも持っているとは、こりゃあ驚いた」
「そんなに珍しい物なんですか?」
「珍しいも何も冒険者にとって夢の魔道具だ。冒険者だけではない、商人なんかは喉から手が出るほどの代物だ。無闇に持ち歩くのは危険だから気を付けるんだ」
「ははは、気を付けます」
そんなに稀少なんだ...神様が盗難防止の魔法を掛けたから心配ないな。でもそれを知らなく、欲求が半端ない悪人に目を付けられたら安心できないな。
「他に言うことは無いかのう?」
「はい、特に何もありません」
「しっかりしている弟だな。さぞかし上の二人は幸せだな」
「自慢の弟ですから!」
「それほどでも」
「そこは二人が威張る所じゃないからね?」
「くっはははははっ!気に入ったぞい。何か問題が起これば儂に言ってくれ力になってやるぞ?」
ギルドマスターの発言だけでも十分に影響を与えてしまいそうだ。
「お言葉だけでも十分にありがたいです」
「そうか、では何かあれば声を掛けてくれ。忙しくなければ大抵は合えるじゃろ」
「「「はい」」」
「オール達は残ってくれ。今後の事で話し合いがあるからな」
「分かりました。じゃあ俺達が話し終わったらギルガルドの宿屋で夕食を食べよう。それまで街を見回ると良い」
「分かりました。では後で会いましょう」
「おう、急いで向かうからな」
僕等はギルデガルさんの個人室を出て、この街を歩き回る事にした。しばらくはこの街を拠点として活動するから街の場所を覚えないと。
ギルドを出る時、周りの冒険者たちが道を譲ったり、パーティーの勧誘していた。丁寧に断ってギルドを出た。このまま街に出たら、シャール達を見てビックリさせてしまうかも知れないので帰還させて置いた。
さて、街の探検だ。
歴史の設定もなかなか難しかったです。今の所はこんな感じです。
後で深く語るでしょう(たぶん)。
3人姉弟の所持金10金貨95銀貨。
修正で召喚獣達の帰還を追加しました。召喚獣達の存在をたまに忘れる自分って...