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勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第11章 高天原の大宴会編

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第235話 スカサハのお説教

 黄泉比良坂での初の戦闘となる骸骨型の魔物との戦い。それは当初物理攻撃も魔術もイマイチ効果が薄い事で苦戦が予想されたが、海瑠の魔眼を活用して魔力の流れを見通す事により討伐は成功する。そうして更に歩を進める事にしていた海瑠達であるが、その前に討伐した所で立ち止まっていた。


「ふむ……これは使えんか」


 ぽいぽい、とスカサハが魔物の残骸を投げ捨てる。それに、煌士が興味を持った。


「何をなさっているのですか?」

「むぅ? 素材集め、という所かのう。海瑠が上手い具合にコアのみを破壊したのでのう。使える素材を使ってここらで使える物でも作ってしまおうかとな」

「使える物、ですか?」

「うむ……ああ、お主らは使わんでも良い。儂が使うだけよ」


 スカサハは相変わらず骨を選別しながら、煌士の問いかけに答えて頷いた。そうして彼女は十本程の太めの骨を見作ろうと、それを手早く十字に交差させる。


「これで後は……」


 スカサハは少し楽しげにそうつぶやくと、彼女の指の先から奇妙は半透明の光り輝く糸が出現する。それは明らかにスカサハの指から出ていた。


「糸……?」

「む? ああ、これか。これは魔糸(まし)という魔力で編まれた糸よ。敵の妨害や投げた武器の回収等、そこそこ便利よ。ウルクの大王よ。お主が武器の投擲に使っているのも、これでは無かったか?」

「それの応用と言って良いだろう。武器の投擲は基本、無誘導だが……こういう風に複雑な軌道を取らせる時にこれは有用だ」


 スカサハの問いかけを受けたギルガメッシュは一本の剣を魔力で編み出すと、それに触れずにひゅんひゅん、と複雑な動きで動かしてみせる。と、それに海瑠が驚きを露わにした。


「それ……お兄ちゃんがやってたのと同じだ」

「そうだな……オレとカイト、そしてエンキドゥの三人だけが、この地球上でおそらく無数の武器を生み出す事が出来る」


 海瑠のつぶやきにギルガメッシュは簡単な剣から大斧、槍、弓等様々な武器を生み出してみせる。それはどれもこれもが立体的で、その中の一つにあった刀でさえ空也が時折練習でしている刀を魔力で編み出すよりも遥かに精度が高かった。明らかに、段違いだった。


「これは中々に便利でな。覚えておけば武器が吹き飛ばされる様な事態になっても、魔糸を手繰って回収する事が出来る」


 ギルガメッシュはそう言うと、敢えて己の指から糸が見える様にしながら一本剣を創り出して遠投の様に投げてみせる。そうして投げられた剣には柄の部分に魔糸と言うらしい糸が絡みついていて、どこまでも伸びていく。


「これは基本的に当人の魔力で出来ている。なので術者の技量次第でどこまででも遠くに伸ばせる……そうだな。やった事は無いがオレだと日本全土は十分に行けるだろう」

「ふむ……儂の場合は……む。そう言えばこの間イギリスから日本まで届かせたか」

「……煌士様。少し気になったのですが」

「聞くな。数千ではなく数万だ」


 小声での詩乃の問いかけに煌士が思わず効かなかった事にする。相変わらず物凄い技量だった。さすがは戦闘の技量であれば世界で一番と呼ばれるだけの事はあるだろう。


「まぁ、それはともかくとして、だ。これを使って戦えば色々と器用な事が出来るし、魔力の繊細な操作の練習にもなる。何時かは、カイトがやらせるだろう……やらせるな?」

『やらせろ、って事でしょうが……』


 ギルガメッシュの確認というか圧力にカイトはため息混じりに同意する。実はこの魔糸。使いみち次第ではだめ人間製造機にもなるらしい。なので相手次第では教えたくないそうだ。なお、エネフィアではそういうことはないらしいので、普通に使わせている。そして意外なダメ人間達がここには居た。


「そういうことだな。冬場は特に便利だぞ」

「便利なんですか?」


 鳴海が興味本位で問いかける。やはり彼女の武器は筆だ。それ故か一番武器が吹き飛ばされる可能性が高いので一番真剣に聞いていた。それに、ギルガメッシュが笑う。


「ああ……カイトとエンキの三人並んでこたつでな。あれは中々に面白い光景だ」

『あははは。リモコン、で魔糸でふわふわー、と。みかん、でまた魔糸でふわふわー、と。あれはあれで団らんで良いんでしょうけどね。』

「こたつは偉大だな。これを使えばこたつから出ないで良い」

「「……」」

『……』


 浬と海瑠の視線を受けて、カイトは視線を逸らす。明らかにダメ人間だった。そうして、そんな彼は遠い目で明言する。


『……お前らも一度この味を覚えれば逃れられんぞ。勇者と数多の王さえ逃れられんこたつの魔力にせいぜい怯えろ』

「ははは……まぁ、それは良いか。スカサハ。そちらは出来たのか?」

「ああ、うむ。これで良かろう」


 ギルガメッシュの問いかけにスカサハは先程からしていた作業を終わらせて、作っていたそれを提示する。それは十字の骨。ブーメランだった。


「ブーメラン?」

「うむ。これの中心に魔糸を使って……」

「あれ? でもそれ……」

「流石に魔眼持ちはわかるか」


 海瑠の指摘にスカサハが満足気に頷いた。先程からギルガメッシュもスカサハも指先に魔糸は繋がっていた。が、この十字の骨を束ねている魔糸はどこにも繋がっていなかったのである。


「魔糸は特殊な術式を加えてやると、ある程度の時間は術者から離れても実体化を保っておく事が出来る。もちろん、その時間は術者次第ではあるが。更に言うとこれに特殊な魔導具を使って加工を施せば、自己再生する服として活用する事も出来る。更に極めれば、術者がその魔導具の役割もこなして指先一つで加工まで出来る」


 スカサハはそう言うと、十字に交差しているブーメランを五つ全て腰から吊り下げる。本物の骨なので女性のアクセサリーとしてはどうなのだ、という領域だがこの強度は先に海瑠らが実際に戦って確認している。十分、実用的だろう。が、やはり本物の骨なので女性陣は流石にドン引きしていた。


「他にもこれが出来ぬでもそこらにある蔦を使い、縛る事も出来る」

「え?」


 浬は己の真後ろを指さされて、ようやくそこに少しだが草花があった事に気が付いた。そういう所がいたる所にここにはあるらしい。


「戦場全てを使え……ということで、これをお主らに渡しておこう」

「「「え゛」」」


 どうやらスカサハが作っていたのはブーメランだけではなかったらしい。よく見ればそれ以外にも骨で出来た棍棒もあった。とまぁ、それはそれで良いのであるが、使うとなると話は別だ。故に浬らは眼前に浮かぶ人数分の骨の棍棒に気圧される。

 流石に一般女子中学生――一般かどうかは微妙だが――に骨の棍棒を持てというのは酷だろう。大抵の事なら気にしない様子の詩乃も思わず手を伸ばすのを躊躇っていた。

 なお、骨の棍棒であるが流石に重さの問題と海瑠が頭蓋骨を狙撃した事で使えなかったので頭の部分はそこらにあった石をスカサハが加工した物を使っている。敢えて言えば柄が骨というだけであった。が、それでも骨は骨である。躊躇われるのは躊躇われる。


「使え。お主らに今足りぬのは、打撃力よ」

「打撃力ですか?」


 スカサハの言葉に煌士が首を傾げる。打撃力と言われて思ったのは攻撃力だ。そしてそれなら現状十分と言えるだろう。が、これはそのままで良かった。


「違う。そのまま、打撃の事よ。殴る、蹴る、叩く……そういった物理的な攻撃の中でも壊す事に特化した一撃よ。先の魔物……スケルトンは基本、斬る、突くと言った一撃よりも叩き壊す事の方が良い。何でもかんでも技で行けば良いのではない。時として、力技こそが最適解の時もある」


 スカサハは煌士達に向けて、そう語る。先に空也達の斬撃が効果が無かったのは、骨を斬るには技量が足りていないからだ。骨で防具を作る、というのはゲームでは一般的だろう。骨で防具が出来るぐらいには、骨とは固いのである。それを斬るには必然技術が必要になる。が、逆に力技なら、どうにかなるのであった。


「斬れぬのなら叩き壊せば良い。今の相手なぞ何も考えずに頭を砕いてやればよかったのだ」

「あ……」


 スカサハに指摘されて、煌士はあまりに単純明快な答えに思わず呆気にとられた。そもそも場所が頭蓋骨の中だとわかったのなら、後は一気に叩き壊せばよかっただけだ。何も狙撃する等という面倒な事をする必要なぞどこにも無かった。


「覚えておれ。策士は何も難しい策を考えるだけではない。時として簡単かつ効率的に刈り取る方法を考えるのも、策士の役目よ」

「……」


 スカサハの言葉に、煌士は一度だけ目を閉じて意を決した様に手を伸ばした。如何に彼でも魔物とは言え骨に躊躇いなく触れる胆力は無かったらしい。らしいが、今の言葉でこれが必要になる時が来るかもしれない、と思ったようだ。


「そうだ。それで良い。何がどう使えるかはわからぬ。わからぬが、その使いみちを考えるのがお主ら策士の在り方よ。別に何も捨てるな、とは言わん。言わんが、手札だけはなるべく多く持っておけ……で、浬。お主はもう少し道具の使い方をうまくなれ」

「え、あ、私……ですか?」

「うむ。そのカード。イメージで攻撃しておるな?」

「えっと……はい」


 浬は以前にフェルから受けた講習でそんな事を言われていた事を思い出して、おずおずと頷いた。そして現に彼女の訓練の多くはこのカードを如何に自在かつ連続して使えるか、という所にある。スカサハの見立ては正しかった。


「ふむ……土属性の攻撃はあるな?」

「あ、はい」

「これをお主、どう使っておる?」

「えっと……こんな風にガードに使ってます」


 浬はスカサハの問いかけに『土』と『銃』の組み合わせを使って何時も通りに防御用の壁を創り出す。これに、スカサハが僅かに目を瞬かせる。


「ふむ……いや、これはこれで儂の想定外であった。単に石の礫として攻撃しておるのかと思ったが……う、うむ。兄ゆずりの柔軟さがあったというわけか」

「???」


 どうやらこれはこれで称賛されているらしい。浬もそう理解すればこそ、思わず呆気に取られて困惑する。


「普通、そんな使い方を考えつく方が後よ。攻撃する札で防御をする。本来は柔軟な発想が何よりも必要となる事。十分に普通ではない。とはいえ……この発想が出来て何故頭上から降らすという発想が出来ん。これをこうして……ほれ」


 スカサハはカードを上空に放り投げると、それをある程度の高空にとどめて発動させる。それは無数の石礫の雨となり、地面へと降り注いでいった。これなら石の重ささえ調整すれば十分スケルトンの頭蓋骨をまるごとかち割れただろう。そうして、彼女が総括する。


「何をどうするのが最適か。全員で戦うのが最適ではない。最適かつ効率的に敵を倒す。それが肝要よ」

「というわけで、だ……ここからはそれを実際に活かす場だ」

「「「はい?」」」


 スカサハの総括が終わると同時に口を開いたギルガメッシュの言葉に、浬らが首を傾げる。と、そんな彼女らの眼の前には気付けば、分かれ道があった。どうやら彼が暗闇に魔術を展開して照らし出した事で、その先が見える様になったらしい。


「此処から先、男女で分かれる事になる。流石に煌士は女の側には行けないから、スカサハがアドバイスを出す事になっている。その指示に従う様に」

「アドバイス止まりだ。実際には己で考えるように」


 ギルガメッシュの言葉を引き継いで、浬らへとスカサハが明言する。どうやらここでわざわざ立ち止まって解説していたのにはここでしか出来ないから、という事情があったのだろう。と、いうわけで一応煌士が確認を取った。


「行けないんですか?」

「触れてみればわかろう……左が女。右が男。左に触れてみよ」

「……あ」


 煌士は妙な壁の様な何かがある事に気付いて、本能的にそちらには進めないのだと理解する。


「ここは光と闇の大精霊様がいらっしゃる場所。光と闇。陰と陽。故にその魔力の集積地にも二律背反的な要素が集う。左には闇……お主ら風に言えば陰気と言い、女に相性の良い場がある。右には逆に光……陽気というわけだな。まぁ、別にそれで何なのだ、という所であるが黄泉比良坂というか日本の力場的な関係でそう分けられるだけよ。別に女だからと陰湿というわけでもないし、男だからと陽気なわけでもない」


 スカサハはそう言って一応の明言をしておく。どうやらここらは陰陽論という所なのだろう。スカサハよりも日本人の煌士の方がよくわかっていたので、ここらは素直にうなずける所だった。そうして、ここで一度一同は二手に別れて進む事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。


 2018年7月15日 追記

・修正

 文章が途中で途切れていた部分がありましたので修正しました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「左には『闇』……お主ら風に言えば『陰気』と言い」の部分は「左には『陰気』……お主ら風に言えば『闇』と言い」だと思います。  分かりやすく言っている筈なのに逆に難しい言い回しになってい…
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