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勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第10章 異世界からのメッセージ編

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第202話 異世界からのメッセージ・3

 ちょっとした出来事により再び脱線した異世界からのメッセージを閲覧するという話。それもしばらくしてカイトが復帰した事で再開する事になる。と、言うわけでまず口を開いたのは煌士だった。


「あ、あー・・・あまり伺いにくいのですが、姉は無事なのですか?」

『おーう、無事無事。ピンピンしてる。まぁ、オレとの付き合い云々は横においておいても、彼女は非常に素質が高い。ソラと共にウチの内政面では一番活躍してくれてるかな』

「ソラ兄が?」


 唐突に出た見知った人物の去就に煌士が僅かに目を見開く。やはり気になるようだ。とは言え、それをここで彼が言う必要はない。それを知る為に、わざわざデータを持ってきたのである。


「そう言えば・・・以前風の大精霊様から風の加護を受けたという話を聞きました」

『あ、あいつ言ってたのか。そうだな。あいつは風の加護を受けて、それの使い手として結構強くなってるぞ』

「そうですか」


 空也が兄の状況に僅かに笑みを見せる。やはりどういう形とは言え兄が無事であるのなら喜ばしいのだろう。


『ま、そこらを知る為にも資料読んでけ』

「それは確かに」


 煌士はカイトの指摘に頷くと、途中で止まっていたパソコンの作業の手を再び動かした。と、そうして幾度かの質問等の後、おおよその事情が掴めた事で煌士が一つ頷いた。


「なるほど・・・実に興味深い。冒険者ですか」

『ああ。そういうわけで、オレが丁度ギルドマスターやっててな。で、その面子ってわけだ』

「ふむ・・・」


 煌士はカイトが選んだ冒険部上層部の人選に何度も頷いた。この人選はある意味では順当と言えるが、同時に順当ではなくもある。


「我輩の姉、神宮寺家の令嬢、一条家のご嫡男とその妹・・・ここまでに不思議は無いですが・・・」


 ここまで聞いただけでは、普通に良家の子女や帝王学を教え込まれた者達を選んだと言える。妥当な人選と言っても良いだろう。が、それ以外にもソラやティナら等、カイトの知り合いが占めていた。逆にそうではないのは、先の面子だけだろう。


『ま、色々とあってな・・・向こうも一筋縄じゃない。やれやれ、って話でどこの世界にも腐敗が沢山だ』

「・・・まぁ・・・」


 煌士とてカイトの言う事は理解出来る。が、そう言う類の話でもなかった。当たり前なのかもしれないが、人と人同士の諍いだった。死人にも出ていた。そしてそれは、学園生の中にも居た。そんな複雑な顔の煌士に、カイトはわずかに微笑んだ。


『・・・気にしてくれるな。そういう奴ってのは、どうしてもどの世界にも存在している。勿論、どんな年代でもな』

「・・・」


 煌士はカイトの慰めに、なんとも言いにくい物があった。ここの話は実は一度、覇王から聞いた事があったらしい。と言っても勿論、事件の事ではない。ここで出た死人の事だ。

 少し有名な生徒だったらしい。勿論、これは良い意味ではない。悪い意味だ。良くない生徒だったそうだ。とはいえ、それでも死んで良い生命かと言われると、彼にはなんとも言えなかった。


「・・・いえ、これは父達が考える事でしょう」

『そうだ。お前が考える必要はない・・・というわけで、だ。さて、こんな所だろう』


 カイトは沈んだ雰囲気を取り戻させる様に、努めて明るく振る舞う。ひとまず、向こうでの現状を理解する為に必要な事前情報としての知識は教えられたと考えて良い。

 基本的には、カイトが何度か語った通り冒険者という職業に就いていて、学園として帰還を目指しているという所だ。その中でとある大きな国際港をカイト達――と言うかカイトが中心となり――が防衛し、その対価として国宝を授与される事になったそうだ。


『というわけで、各々のメッセージというわけだが・・・ま、誰から見たい?』

「誰って・・・とりあえず誰から見る?」


 とりあえず問われたので、浬が周囲を見回す。基本的にここにある物を使えば、誰のでも見れる。それこそ自分達に関係の無い生徒の情報だって見れる。勿論、生徒だけでなく教師の物だって可能だ。というわけで、モルガンが提案する。


「とりあえず、カイトので良いんじゃない?」

「んー・・・でもお兄ちゃん、どう見ても元気でしょ」

「それはそうだけど」


 浬のツッコミにモルガンはそれはそうだと頷いた。こちらに超強力な使い魔を残せる程なのだ。更には横に居るティナも元魔王だという。そのカイトの無事を確認する、という事が必要かと言われると微妙としか言い様がない。というわけで、次にヴィヴィアンが提案する。


「じゃあ、まずソラくんで良いんじゃないかな? 全員に関わりがあるし、気になるでしょ?」

「ふむ・・・ソラ兄か。確かに我輩も気になるな」

「あはは・・・まぁ、元気だとは思うけどね」


 どこか許可を貰う様な視線を向ける煌士に対して、空也が笑いながら頷いた。ソラというのは空也の兄だ。が、色々とあってカイトの家に何度も上がり込んでおり、浬も海瑠も知っている。

 そして家の繋がりから煌士も知っている。というわけで一番全員が気になる所ではあったらしい。そうして、しばらくの間全員で各々の関わりがある人物のメッセージを見る事にするのだった。




 と、そうしてしばらく。一通り各々の身内に関するメッセージを見終わり、残りカイト程度となった所での事だ。そこで見ていたのは三柴の娘のメッセージだった。

 基本的に煌士の姉も空也の兄もカイトと同クラスに在籍しており、クラス単位で分けられていた為、教師として別フォルダに入れられていたので後回しになっていたのである。


『と、言うわけで心配しなくて良いよー! 適当にこいつ引っ張り回して遊んでるから・・・』

『だからカメラマン引っ張んな! ってか当たってる!』

『当ててんのー』

『うぉい! 確かに素で良いだろ、とは言ったけどなぁ!? これ、検閲入るんだぞ!』


 画面の中でヘッドロックされたカイトがジタバタと暴れ回る。彼をヘッドロックしていたのが、三柴の娘の灯里だ。彼女は明るい様子の少し長めのショートカットの美女だった。


『あ・・・あ、そうだったそうだった。ごめんごめん』

『もう遅いわ!』

『いやー、カイトの権限でなんとかなんない?』

『出来るか!』


 たはは、と笑う灯里に対して、カイトが怒鳴る。基本的にこんな関係らしい。そんな様子を、一同で見ていた。


『やったんだけどね・・・』

「お兄ちゃん、いつも思うけど灯里さんに甘いよね」

「甘いね」


 カイトの言葉に浬と海瑠がツッコミを入れる。これにカイトも否定はしなかった。と、そうしている間にも、画面の中では騒動が起きていた。と言うより、主に灯里が暴走し、カイトが巻き込まれている様な感じである。


『オレ、大変だなぁ・・・』


 画面の中で灯里に振り回される自分の本体――カメラマンをしていた――を見て、小鳥形態のカイトが我が事ながらと遠い目をしていた。それに呆気にとられていたのは、煌士である。


「・・・」


 これがあの灯里なのか。煌士は見たものがいまいち信じられず、何度も目を瞬かせていた。というわけで、浬らに問いかけた。


「・・・え? これが灯里殿か?」

「あー、うん。灯里さんだわー」

「灯里さんだねー」


 困惑する煌士に対して、浬と海瑠からしてみれば自分達が知る通りの灯里の姿らしい。半分笑いながら、呆れていた。が、これでいて日本でも有数の大天才である。それこそ秀才と言える領域の光里を凹ませる程の天才だった。


『あ、そうそう。お父さん、これ見てるだろうから一つ。もし煌士くんに会ったら、大学にある私のPCの中の連絡帳の非常用って所に入ってる研究用の欄の研究者を動員する様に、って言っといて。多分あの子だけじゃ手が回んないだろうからさー。まー、私いりゃなんとかしてやれんだけど、流石にそんなの出来ないでしょ? 多分、あの子の事だから指示とかで色々と苦労してると思うんだわ。で、その人達集めれば格段にやりやすくなると思うのよねー』

「・・・」


 驚いた。煌士は灯里が今の自分の現状を正確に見通していた事に目を見開いた。が、思い直して、不思議はないと首を振った。


「いや・・・確かに灯里殿だった。というか、もしかして・・・今の言葉は」

『関係ねー・・・あの人が勝手に言いやがった・・・マジなにもんだ、あいつ・・・』


 以前カイトがなんとかしてみよう、という言葉を言っていた事を思い出したらしい煌士に対して、カイトが盛大に呆れながら明言する。本来はカイトも少し誘導してこれを引き出そうとしていたらしいが、その必要もなかったそうだ。


『聞いた話だと、万が一に備えてフォロー体制構築してたそうだぞ』

「・・・ほ、本当に我輩以下なのだろうか、彼女は・・・」


 もしかして自分より遥かに先まで見通していたのではなかろうか、という灯里に煌士がわずかに頬を引き攣らせる。彼女自身は私なんて煌士くん以下よー、等と言っていたのであるが、この万が一にも備えていたり、煌士が彼女が居ない所為で研究が上手く回らないと嘆いていたりする所を見ると下手をすると総合力では同等なのでは、と思えたのであった。


「ま、まぁ・・・詩乃。悪いが後に三柴殿にアポイントを取って貰える様に父上に頼んでくれ。灯里殿がなにかメッセージを残していないか気になった、とでもしておけば不思議はないだろう」

「かしこまりました。こちらで手配させて頂きます」


 詩乃は煌士の言葉をメモに取っておき、後で手配をしておくことにする。せっかく残してくれたのだ。使わないのは損だろう。というわけで、灯里のメッセージも見終わった事で一息吐く事にする。


「じゃあ、これで終わり?」

「ふむ・・・」


 こんな所か。煌士もその言葉に同意する様に少しだけ考える。が、一人残っていた。それをスカサハが指摘する。


「いや・・・バカ弟子二号が残っておろう」

「「「あ・・・」」」


 すっかり上手く誘導されてしまっていたが、全員がカイトのメッセージを見ていなかった。元気なので良いかな、と思ってしまっていたのである。


『ちぃ・・・忘れていれば良い物を・・・』

「ははは。儂にはまだまだ早い」

『たく・・・ソラ達のとおんなじフォルダだ。特例というかどう言うわけか検閲官が検閲したくない、ということで完全スルーの素のままのデータ送りやがった。人多いのは諦めてくれよ』


 カイトが呆れながら、少しだけ謝罪を入れる。どうやら、今まで以上にドタバタしているらしい。それを聞きながら、煌士はカイトのメッセージを見る。


「ふむ・・・」


 カチカチ、とダブルクリックで起動させた映像は、当初は普通にカイトその人とティナという金髪碧眼の女の子が映っているだけの映像だ。


「これが、ユスティーナと・・・もっと大きな女性を想像していたが・・・」


 煌士はティナがややもすれば中学生程度にしか見れない少女を見ながら、驚きを露わにしていた。これが異世界の魔王だというのだ。もっと大人の女性を想像していたらしい。


『いや、こりゃあいつ曰くあいつのローティーン程度の見た目らしい。本来は別だ』

「海瑠らも知っているのか?」

「一応・・・これが本当の姿じゃない、ってぐらいは。僕らもこっちの方しか知らないんですけど」


 煌士の問いかけを受けた海瑠は一応、これがティナである事を認めながらも本当の姿は知らない事を明言する。彼らとてこれを聞いたのは学園の消失以降だ。見せてもらった事はなかった。と、そんな二人の話を聞いて煌士は一つの推測を立てる。


「ふむ・・・年齢を変える魔術というのもあるのか・・・では実際には老婆という事もあり得るか・・・」

『おい・・・一応普通に若いぞ。年増とか言うとブチのめされるから気をつけとけよ・・・後、進んでんぞ』

「っと、失礼した」


 カイトの忠告に煌士は慌てて思考を切り替える。ここらは彼の悪い癖だろうが、学者にありがちな性格とも言える。

 と、そうしてしばらく映像が続いた所で、登場人物が増えた。それは妖精一人と、愛らしい小さな女の子二人である。しかも片方の背中には羽根があった。まぁ、それは良いだろう。あちらは異世界。普通に羽根のある女の子ぐらいは居よう。可怪しかったのは、その羽根のある女の子のセリフである。


「義理の姉?」


 煌士が困惑した様子でカイトへと問いかける。どこからどう見ても女の子二人はローティーンどころかティーン以下である。それが義姉というのはどこからどう考えても可怪しかった。

 が、これは本当の話だった。というわけで、これは解説せねばならないだろう、と映像を止めてカイトが解説をくれた。


『本当だ。こいつが、アウローラ・フロイライン。オレの義理の姉で、許嫁というか婚約者の一人だよ。正確にはオレは婿養子って所だからな。向こうでオレの事を引き取ってくれた人のお孫さんだ。ご両親は・・・まぁ、こいつと出会う数ヶ月前に戦死されてな。あの頃が一番悲惨な時期だったらしい。いや、それは良いか』


 自分の義理の姉の来歴を言おうとして、カイトはその必要は無いと判断して首を振る。


『とりあえず彼女は天族という向こうにしか居ない種族でな。超長寿で、そのかわり成長も酷く遅いんだ。だから、この時点でもすでにオレより年上だった。だから、義理の姉ってわけだ』

「ほー・・・そんな種族が・・・」


 それなら納得だ。煌士は感心した様に頷いた。これなら、わからないでもなかったのだ。そうして片方を説明したのなら、もう片方も説明が必要だろう。というわけで、カイトは今度は所謂エルフ耳の女の子に視線を向けた。


『で、もう一人が義理の妹。クズハ・・・クズハミサ王女・・・?』


 カイトは自分で言って、自分で首を傾げる。何かが可怪しいと気付いたらしい。それに、スカサハが指摘する。


「確かお主の義理の妹は両親亡くしておったのではないか? であれば王女ではなくもう女王であろうに」

『あ、そうだわ。うん、というわけで、エルフの国の女王様。と言っても彼女はその更に上位種。ハイ・エルフだ。まー、今はお前と同じぐらいの年齢の見た目だから、んな変わらん』


 カイトはそう言って浬を見る。実際にこの二人は映像という事で300年前の姿――特にアウラもクズハもどちらも今の姿は映像に映っているので出れない――で出ているそうだ。


「ふーん」

『?』


 どこかどうでも良さげ――と言うより何方かと言えば不満げ――な浬に、カイトは首を傾げる。まぁ、この原因は浬も正確には理解出来ていなかった。が、敢えて言えばこれは自分以外の妹が居る事に少し不満を抱いていた、という所なのだろう。やはり誰が何と言おうと、彼女はブラコンなのであった。


「ま、お兄ちゃんが向こうで誰妹にしてても良いけどさ。とりあえず、続き」

『お、おう・・・煌士、頼む』

「う、うむ・・・」


 不思議な態度だな、と二人は思うものの、カイトも煌士も特に気付く事はなかったらしい。まぁ、他ならぬ本人も理解していない様子なのだ。仕方がなくはある。そうして、その後も映像は続いていく事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。次回は来週土曜日21時投稿です。

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