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勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第10章 異世界からのメッセージ編

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第195話 三日後

 天桜学園の関係者へ異世界から送られてきたメッセージの閲覧許可から、はや二日。天道財閥を中心として準備は大急ぎで進められていた。


「これで、100枚」


 ふへー、と彩斗が何百枚目かの紙面の束の確認を終える。天桜学園の関係者、と一言で言えば話は早いが、その大半は当然魔術の魔の字も知らない――勿論、サブカルチャーと言う意味ではなく――一般市民達だ。

 まだこれが裏世界の関係者なら既にわかっている話なので殆ど口頭による注意だけで終わらせられるかもしれないが、普通の一般市民を相手にそうも言っていられない。人の口に戸は立てられぬと言うが、実際にそうなのだ。露呈させればどこからか漏れる。が、流石にこの事はなんとかせねばならないことだ。

 故に『強制宣誓文(ギアス・スクロール)』を使って箝口令を敷こうと考えたわけなのであるが、それ故にその量は莫大な量になっていた。天桜学園の生徒の総数はおよそ450人。それに教師50人という振り分けだ。その両親だけでも兄弟姉妹が通っていないという単純計算でもおよそ1000人分となる。

 そこに更に兄弟姉妹の分を含めれば、もはや数千人規模になってしまうわけだ。そこに更に万が一の書き損じに備えた予備をある程度用意したとすれば、用意された『強制宣誓文(ギアス・スクロール)』は万単位に到達しつつあった。この枚数は地球人類史上一度に用意された数としては最大だろう。


「お・・・おおお・・・目、目が痛い・・・疲れた・・・」

「老眼ではないと俺は思っていたが・・・そろそろ年か・・・」


 彩斗の横、桐ケ瀬と三柴の二人が同じく100枚の束に分ける作業を終了させ、箱の中にそっと置いた。この『強制宣誓文(ギアス・スクロール)』はそこまで扱いに困る物ではないが、散らばると数え直しだ。それは避けたいので一つ一つ箱詰めする事にしていたのであった。


「はい、次でーす」


 数え終えた三人の所に、渚が台車を押して再びやって来た。三人が確認を行っているのだから、当然彩斗組と呼ばれる部に所属する若者達も活動していた。

 若いのだから肉体を使え、ということで別の所で作られた『強制宣誓文(ギアス・スクロール)』を渚のように運んだり、製造班で足りなくなった材料を倉庫に取りに行ったり、という事をしていた。まだ渚のように台車を使えれば良いが、彼女の兄の薫等は台車に積み込むまで重い荷物を運ばされたりしている。こちらはこちらで重労働だった。


「「「・・・」」」


 やって来た千枚ぐらいの『強制宣誓文(ギアス・スクロール)』の束に、彩斗達三人は愕然となる。流石にこれはここからまた、三人で一枚一枚何か書面に誤字脱字等が無いか、教わった確認事項――魔術的な効力が失われていないか等――を確認しなければならないのである。


「あ、天ヶ瀬妹・・・これでどれぐらいだ・・・」

「えっと・・・大体5000枚ぐらいです」

「・・・」


 問いかけた三柴は返答に遠い目をする。これでまだ、半分程度だ。一日は長そうだった。


「やろう」


 三柴がおそらく自分に向けて、そう告げる。そうして、再び彼らは『強制宣誓文(ギアス・スクロール)』の確認作業に入る事にするのだった。




 というわけで、それから半日ほど。12時間近くにも及ぶ作業は途中から作成が終わったという事で参加した若者組――勿論、それだけではないが――を含めて、なんとか終わりを迎えていた。


「「「・・・」」」


 流石に一日で一万枚の書類を確認して保存・移送出来る形に整えるのは相当な手間だった様だ。全員疲労困憊で床に突っ伏していた。


「なんだ。体力の無い奴らめ」

「「「・・・」」」


 スカサハの言葉に誰も反応しない。流石に一万枚もの『強制宣誓文(ギアス・スクロール)』を一日で作る事は陰陽師達には出来ない。人海戦術なら可能だが、おおっぴらにしない為にも人海戦術は採用出来なかった。

 というわけでスカサハに協力を依頼――勿論陰陽師達も動いている――したわけであるが、彼女一人でおよそ7割を作っておいてまだまだ余裕そうだった。なお、彼女一人で7割というが実際には分身を動かしてやったわけで、結局は人海戦術だ。


「ま、これで終わりは終わり。後は明後日に備えて休んでおけ」


 突っ伏して反応しない彩斗達へ向けて、スカサハはそう告げる。もうこの状態になっては何かを言った所で無駄だった。というわけで、スカサハはその場から立ち去って、彩斗達もその後しばらくでのそのそと起き上がって帰宅していく事になるのだった。




 その一方。彩斗達の作業を行っていた天道財閥本社ビル地下の反対、上層階の社長室では覇王が一つの報告を星矢から受け取っていた。


「わかった。全部の検閲は終わったか」

『ああ・・・流石に量が多かった上、検査可能な人員が少なく時間が掛かった。が、終わった事は終わった』

「そうか。それは朗報だ・・・ソラくんのは見たのか?」


 覇王は少し楽しげに幼馴染に向けて彼の息子の事を問うておく。が、それに星矢はそっけない。


『まだだ。公私混同はせん』

「はぁ・・・これぐらい誰もなんとも言わんと思うがな」


 そう言う所は固いな。覇王は僅かにため息を履いた。とは言え、そういう愚直な性格だという事はこの40年近くの付き合いで知っている。なので別に何か思う事は無かった。


「とりあえず、検査の終了はわかった。早速、明日の朝一番にでも人員をこちらから派遣しよう。そちらも?」

『ああ。その予定だ。ブルーを介してマスコミに協力を要請している』


 覇王の問いかけに星矢は当たり前だ、と明言しておく。集めるのは基本的には首相官邸になるだろうが、一部の人員については天道家になる予定だった。こちらは、内容から考えての事だった。

 しかも500人分の家族を今から招集するのだ。国が主導しなければどうにもならない問題だ。故に基本は、国の施設に集める事になっている。が、ここにもやはり特例は幾つかあった。


「わかった・・・じゃあ、天道家に招く人員のリストを上げておいてくれ」

『ああ、すぐに送ろう』


星矢は覇王の求めに応ずる。やはりこの日本で最も防備が充実していると言えるのは、カイト達の所有する施設を除けば天道家だ。それは残念ながら首相官邸等の公共施設よりも上と言わざるを得ない。

 というわけで、どうしてもメッセージの内容があまりに重大な情報を含んでいると判断された場合にはどこかのスパイ等に入られないように天道家での閲覧という事にしたのである。こちらなら、天道家の家人しか入れない。エリナを見ても分かるようにスパイも手出しし難いのだ。


『基本的にはやはり上層部に位置する面子になっている』

「ふむ・・・ということは、天音の所やらか」

『そうなる。他、天神市の警察署に勤務する警察官の一家。当家、そちら、一条家という所だ。桜田については首相官邸で大丈夫と判断した』

「まぁ、ウチはもう見たので良いんだろうが・・・一条家か。あちらはなんて?」

『こちらは京都の本邸で見る、と言っていた。まぁ、源頼光(みなもとのよりみつ)を祖とし、現在でも坂田金時(さかたきんとき)を中心として裏世界につながりのある彼らの邸宅だ。聞けば、頼光殿が警備を買って出てくれたとの事だ。それについては金時殿が直々に使者として来たので、それで許可を下ろした』


 星矢は覇王の問いかけを受けて、京都にあるとある名家について言及する。源頼光とは太平記に記されている武士の事で、かの大妖怪・酒呑童子を討ったとされる武士の事だ。茨木童子が時折言及している者でもある。

 その子孫、つまりは摂津源氏直系の一族は今も京都に居を構えており、一条家と名乗っていたのである。その子孫の嫡男が異世界で活動するカイト達の仲間の幹部に名を連ねていたのであった。

 やはり彼のメッセージも秘匿性の高いメッセージと判断されたのだが、この来歴から裏世界にも繋がりが深い。故に祖先が出て来た事もあり実家でも大丈夫だろう、と判断したのであった。


「陰陽師達の執り成しか」

『ああ。流石に断れん』

「わかった。どちらにせよ一条瞬となると、単身・・・いや、今は妹ちゃんも一緒か。とりあえず高校で親元を離れてこちらに来た。京都のご両親を呼び寄せるのも手間か。それで良いだろう」


 覇王は星矢の判断を良しとしておく。まぁ、こういう事情なので本来彼が天桜学園の消失に巻き込まれるはずはない。地元は京都だからだ。

 が、彼には陸上競技、特に槍に掛けて天性の才能があった。故に日本で最も設備が整っている高校とされた天桜学園にはるばる入学した、というわけであった。

 そしてこの際にそれを強力に推進したのが、他ならぬクー・フーリンだった。どうやら彼が教えていた教え子の中に、その瞬という少年が居たらしい。彼がその才能を見出して、育てたらしい。

 今でも瞬はクー・フーリンをその正体を知らないまでも恩師として敬服しており、それ故にクー・フーリンも自分の愛弟子の大事と率先して協力してくれていたわけである。というわけで、その彼の話は必然として出た。


「ああ、そうだ。一条家の嫡男・・・この映像をクー・フーリン殿も見たいという事だ」

『ん? ああ、そう言えば愛弟子だと言っていたか。わかった。それについてはこちらで対処しておく』

「頼む」


 星矢の応答を受けて、覇王はとりあえずそれに対する対処を整えておく。と言ってもやることは単に許可が出た、と大阪の支社を通じて告げさせるだけだ。そうして、幾つかのやり取りの後。二人は通話を終わらせる。


「さて・・・これでひとまず、対処は出来たと見るか」


 覇王は送られてきたリストを見ながら、一通りの準備が整った事を確認する。これで、明日には早々に人を集められるだろう。そしてそうであれば、覇王も明日に備える必要があった。


「・・・今日の所は俺ももう帰社する。明日は朝一番の会議には出席するが、午後からは家に控えておく。そこら、もし何かあればそちらに通すように」

「「「かしこまりました」」」


 覇王の指示に秘書達が頭を下げる。そうして、覇王はその後幾つかの対処や書類仕事を終えると、そのまま今日は珍しく早い内に帰宅する事にするのだった。




 さて、一方その頃。浬はというと、こちらはいつも通りの勉強を終わらせていた。


「お、終わったー! やった! 全部終わった!」


 浬は教科書――と言っても高校3年生の物――を投げ捨てる。これで、今の彼女の学力は大学生入学程度にまで底上げされたと断言して良い。しかも、これで彼女らが更に望めば大学院入試レベルだろうと博士課程だろうと高められるのだ。もう今後一生勉強に困る事は無いと断言して良かった。


「ふむ。ようやくか」


 そんな浬に勉強の監督を行っていたフェルが頷いた。とりあえず、この一週間は様々な事を起き得る可能性があるのでアテネは放課後は即座にギリシアへと帰っていた。

 御門も今日は久しぶりにインドで対処を決める、ということで帰ってきたし、ランスロットは天神市に残って全体の万が一に備えている。なので居るのは彼女を筆頭にお世話役のシギン、カイトらだけだ。


「他も・・・もう終わりそうか?」

「後もうちょっと」

「こっち終わったよー」


 やはり勉強という所で二人とより僅かに遅れていた侑子と、軽い見た目に反してそもそも勉強は出来た鳴海の二人がフェルの問いかけに応えた。なお、空也と海瑠については早々に終わらせており、既に訓練を行っていた。


「ふむ・・・であれば、明日からは普通の修行に戻して良いか。アテネらは居ないが・・・まぁ、私一人で出来ないわけでもない。それで良いか」


 時間は有限だ。そして目には見えないまでも、彼女らの身体を確実に呪いは蝕んでいる。何時までもこのままでも居られない。一刻も早く、力を付けさせる必要がある。故にフェルはそう考えて、しばらくは自分一人で彼女らの面倒を見る事を決める。


「ふむ・・・良し。二人共、終わったのなら明日からに備えて少しの準備運動でもしておけ。シギン、式神を出せ」

「はい」

「「え゛」」


 勉強が終わったと思ったら、すぐにこれだ。そんな容赦のないフェルに浬と鳴海が愕然となる。が、そんな事で彼女が止まってくれるわけもない。というわけで、この後は彼女ら――終わった侑子も含めて――は久しぶりに存分に身体を動かす事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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