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勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第9章 空也の刀探し編

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第168話 天下一への道

 天下五剣<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>の中に宿る付喪神・三日月との精神世界での対話によりその持ち手として一応認められる事となった空也は、対話の終了と共に精神世界の外へと出される事となった。

 そうして意識を取り戻した様子の空也へと、鬼丸が問いかけた。どうやら、介抱してくれていたらしい。そしてよく見れば、その横にはいつの間にか小狐丸が一緒だった。


「・・・終わったか?」

「はい」

『とりあえずの暫定的ではあるがまぁ、良かろう。悪くは無い』

「そうか」


 鬼丸は満足げに頷いた。やはり彼としても仲介したという立場がある。上手く行けば嬉しくはあった。


『む? これは小狐丸か』

「はい、お久しぶりです三日月」

『なんだ、お前も一緒だったのか』

「ええ。下手に鬼丸だけですと博物館を破壊しかねませんからね」


 小狐丸は笑いながら三日月と話し合う。彼らは同じ鍛冶師に打たれた謂わば兄弟刀という所だ。それ故か非常に親しげだった。そんな二人を横目に、鬼丸は持ってきていた一振りの刀を野球のバットを入れる袋から取り出した。


「さて。では、これをここに置いていくか」

「はい」

『っと、その前に少し契約をしておかねば。このままでは霊力が足りずしばらく実体化が出来ん』


 頷いた空也へと三日月が告げる。一応、所有者と認めたのだ。なのでそこらをしっかりと行っておこうという事だった。


「契約・・・ですか?」

『ああ・・・と言っても何か複雑な事をするつもりはない。出来るとも思えんからな。そちらはこっちでやろう。鬼丸、すまんが少し俺で空也の薄皮を切ってもらえるか?』

「うむ、よかろう・・・空也、三日月を手渡し、右手を差し出せ。何、少しチクリとするだけよ」

「はい」


 空也は鬼丸の指示に従って<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>を渡して自らの腕を捲くる。


「手を上に向けよ」

「はい・・・っ」


 鬼丸の指示を受けた空也が手のひらを上に向けると、それに向けて鬼丸が刀を抜き放った。そうして、軽く薄皮が切れて血がにじみ出る。


「刀身を血の滲む手で握れ」

「・・・良いのですか?」


 空也は驚いた様子で問いかける。血は血糊と言う。それは刀のサビや切れ味の低下の原因にもなる物だ。故の問いかけだった。


『貴様は俺達を何だと思っている。この程度で切れ味が落ちる事は無いし、これは一種の契約の為の物だ。問題は無い』

「はぁ・・・」


 三日月の言葉に空也はそれなら、と血が溢れる右手で<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>の刀身に触れる。すると、僅かに滲んでいた血が刀身へと染み込んだ。そうして、一気に魔力を食われる感覚が空也を襲う。


「ぐっ・・・」

『ふむ・・・少し食いすぎたか』

「何時から大飯食らいになった?」

『さてな』


 鬼丸の軽口に三日月は笑ってそうはぐらかす。なお、決して大食いというわけではない。<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>はそう言う意味で言えば霊的な力は低い方で、省エネ派と言える。空也が未熟なだけである。

 そうして、僅かに膝を屈した空也の目の前で<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>が光り輝いて実体を手に入れる。それは空也が精神世界で会った三日月の姿だった。


「ふぅ・・・久方ぶりの外か。すまぬな。久方ぶりの外とあって僅かに食いすぎた」

「いえ・・・私が未熟なだけですから」

「そうだな。それについては、しっかりと鍛えよ。俺を・・・天下五剣を手にしたのだ。日本一とは流石に言えぬが表で世界一となれるぐらいにはなってもらう」

「はい」


 空也は三日月の言葉にはっきりと頷いた。これを、<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>を手にしたのだ。日本の誇りを胸に、これから剣士としてやっていかねばならないと自らにそう課した。なので迷いは無かった。それに三日月は頷いた後、本題に入った。


「良し・・・さて、先程血を貰ったのは別に魔力欲しさというわけではない。あれは俺と貴様を繋げる為に必要だった事だ」

「はぁ・・・」

「まぁ、言ってわからんのは仕方がない・・・少しそこで待っていろ」


 三日月はそう言うと、一人倉庫の端へと歩いていく。そうして端に移動した所で、再び彼が話し始めた。


『さて・・・念話は届いているな?』

「はい」

『良し・・・まず、契約した事による特典の一つはこの念話だ。基本的に我ら武器と所有者は一括りにされて動く。故に担い手にはこのように念話とも少し違う念話で対話可能だ。これは所有者と我ら付喪神の間でしか聞こえん』


 三日月の語った内容に、空也はこれが自分にしか聞こえていない事を理解する。そしてこの様子ならこれは先程の契約で構築されたレイラインを使っている為、どうやっても盗聴は不可能らしい。一応フェル達クラスになると不可能ではないらしいが、それ以外となると厳しいそうだ。


「こちらからは?」

『勿論、可能だ。ただ念じろ。それで俺へ通じる・・・試しにやってみろ』

「はい・・・」

『こう・・・ですか?』

『それで良い。それで今、貴様の声は俺と貴様にしか聞こえていない』


 念じろ、というのがどういうのかわからなかったので、空也はとりあえず三日月を思い浮かべてそれに語りかけるイメージでやってみたのだが、どうやら上手く行ったらしい。というわけで、空也はその感覚を覚えておく事にする。後は慣れだろう。そしてそれを受けて、三日月は更に解説を続ける事にした。


『良し・・・では、しばらくは練習にそれで会話してみる事にしよう。次に、もう一つの特典だ。これは契約者となったが故に出来る事と言える。さて、次に今度は俺に来い、と念じてみろ』

『来い、ですか?』

『ああ、そうだ。ついでに俺の姿・・・<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>としての姿を思い浮かべろ。それで、来い、と強く念じるんだ』

『わかりました』


 空也は三日月の説明の通り、とりあえずまずは先程まで目にしていた<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>の姿を思い出す。まるで三日月の様に反りの美しい刀だ。反りのある日本刀では最古の一振り。日本刀の日本刀らしい姿の原点でもある。それを、空也は思い浮かべる。そうして思い浮かべられた所で、空也は来い、と強く念じてみた。


『・・・来い』


 空也の要請に応ずるかの様に、三日月の姿が光り輝いて消える。そして次の瞬間、空也の目の前に刀の状態の<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>が現れた。


「・・・これは」

『出来たな。これが、もう一つの特典。武器の召喚だ。残念ながら送還は出来んから、そこは注意しろ。銃刀法違反で捕まるなぞ間抜けな事にはなるなよ』

「あはは・・・はい」


 空也は三日月の冗談に笑って頷いた。とは言え、これは便利だ。もし武器が弾き飛ばされたとしても、これを使えば即座に呼び戻せるのだ。剣士にとっては何よりもありがたい力といえるだろう。


『まぁ、今教えられる力としてはその程度か』

「わかりました。ありがとうございます」


 空也は説明を終えた三日月へと礼を述べる。とりあえず、一通り出来る事については聞いたのだ。であれば、これで良いだろう。それにいつまでも倉庫に誰も入ってこないとは限らない。警備員が何時入ってきても可怪しくはないのだ。さっさと逃げるが吉である。と、そう思って鬼丸に提言しようとした所で、彼の側が楽しげに口を開いた。


「<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>の力については、教えてやらんのか?」

「<<三日月宗近(みかづきむねちか)>>の力・・・?」

「あはは。面白い事を言う」


 鬼丸の言葉に対して首を傾げた空也に対して、三日月は楽しげに笑う。


「流石に我が力を使うにはまだ空也は未熟よ。教えても宝の持ち腐れ。当分は使わせんし使わん」

「はぁ・・・」

「鬼丸もわかってて問いかけるな」

「かかか」


 鬼丸が三日月の言葉に楽しげに笑う。どうやら、教えない事をわかっていて問いかけていたらしい。そう言う力があるぞ、と教えてやっただけかもしれない。とは言え、これでやるべきことは全部終わったのだ。なのでこれ以上ここに居る意味も無くなった。


「さて、では帰るか」

「うむ。では、案内してくれ」

「はい」


 鬼丸の言葉に頷いた三日月に促されて、空也が案内する事にする。そうして、一同は隠形鬼の力を借りて博物館から脱出して、空也は新たな得物となる『三日月宗近(みかづきむねちか)』を手にする事となるのだった。




 さて、その翌日。空也と三日月はというと、放課後になり隠れ家へとやってきていた。


「・・・ふぅ」

「ほぅ・・・」

「はぁ・・・」


 空也と三日月、そして海瑠が並んで豪邸の縁側でお茶を飲む。まぁ、なんというかその様子は一言で言えば、こうだった。


「・・・ジジ臭! というか、誰!?」

「むぅ?」


 浬のツッコミに三日月が振り向いた。


「おぉ、すまんな。お初、お目にかかる。三日月宗近の付喪神。まぁ、名は三日月で良い。宗近は父故な」

「あ、はぁ・・・」

「おぉ! 三日月宗近か! 天下一の名刀にして、天下一の美しさと言われる天下五剣の一振り! なるほど、確かに人型となってもそのような風格があるな!」


 当たり前であるが普通の女子中学生は『三日月宗近(みかづきむねちか)』なぞ知る由もない。というわけで何ら感慨もなく頷いていたが、やはり博識な煌士は知っている。

 と言うより彼も空也と共に天下五剣の展覧会には参加したのだ。知らないはずがなかった為、興奮を滲ませていた。やはり彼も男の子という所で、天下五剣は興奮するのだろう。


「ははは。何やら日ノ本を賭けた戦いに挑むという事なのでな。少々、助力させてもらおう」

「それは心強い!」


 煌士が三日月の言葉に喜色を滲ませる。やはり天下五剣の助力はありがたいのだろう。と、そういう会話をしていると、カイト達もまた隠れ家へとやってきた。


『よーっす・・・って、びっくりした・・・』

「ふむ・・・びっくりした、という事は・・・なるほど」


 どうやら三日月は蒼い小鳥が件の使い魔だと理解したようだ。そちらへと一度向き直った。そうして、一度己の姿の理由等を語っていく。


『ふむ・・・なるほどな。いや、確かに納得も出来る』

「どういうことですか?」


 説明を横で聞いていた空也が首を傾げて問いかける。それは三日月の容姿の事だ。何故カイトが驚いて、そして何に納得したかわからなかったのだ。


『ああ、それはその三日月のベースとなった最優の剣士というのは、かの上泉信綱公の事だ』

「ああ、なるほど・・・」


 言われて、空也もなるほど、と理解する。確かにこの世で最強の剣士と言われると、空也も塚原卜伝か上泉信綱のどちらかだろう、と思う。そしてカイトはその片方である信綱を師と仰いで教えを受けているわけだ。であれば、驚いたのも無理はないだろう。来てみれば師に似た人影があったのだ。


「そういうわけだ・・・それで、すまぬ。少しだけ内密に話しておきたい事がある」

『内密・・・こいつらは同席させない方が良いか?』

「まぁ、空也は構わん。我が使い手故な。しかし、他はまだ関わるかどうかもわからん。故に」

『わかった。悪いが一度全員退席してくれ。ああ、空也、お前も一応退席しておけ』


 カイトは三日月の申し出を受けて、浬達に退席を命ずる。それに興味津々だった煌士は兎も角、浬達は巻き込まれてはたまらない、と席を外す。なお、煌士についても詩乃が強制的に退出させた。そうして、全員が去った後。残ったカイトに向けて三日月が口を開いた。


「『数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ)』・・・数珠丸の事だ」

『日蓮宗開祖、日蓮上人の佩刀だな』

「うむ・・・それについての噂は存じ上げているか?」

『ああ。聞いている』


 どうやら、話したかったのは同じく天下五剣の一振りの事なのだろう。


『どこの勢力とは知らんが、追われている、とは聞いた事がある』

「うむ。少々、奴の霊刀としての力に目を付けた者が居てな。それ故、本来の居場所である久遠寺にも大本山にも帰らず、というわけだ。あれのみは帰りたくとも帰れん。故に、万が一の時、見かければで良いので保護を頼みたい」


 三日月の申し出にカイトは大凡の事情を理解する。やはり天下五剣だ。その逸話も凄いが、実際に持ち合わせている力もそれに見合った物だ。

 実は美術品としてではなく、優れた武器として狙う者は数多く存在している。勿論、それでも鬼丸の様に並の使い手であれば退けられる力はあるが、どうやら厄介な組織に狙われていたのだろう。であれば、カイトとしては迷う事はなかった。


『保護・・・ああ、わかった。御身にも空也が世話になる。そして道義としても見過ごせん。承ろう。こちらにも手勢は多くはないが潜んでいる。もし見付けられれば、率先して保護する様に手配を整えよう』

「かたじけない。やはり日ノ本に5つしかない同胞故、どうしても見過ごせぬ」

『いや、わかった・・・っと、それなら。フェル、悪いがオレは少し楽園へ向かって手はずの方を整える。その間は、こっちは任せた』

「わかった」


 カイトの求めを受けて、フェルが頷いた。そうして、カイトはそれを背に窓から飛び出て三日月の求めに応じて数珠丸とやらを探す手はずを整える事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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