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勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第8章 イギリス編

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第158話 留意すべき点

 研究施設にて偶然にも過去に死した魔女であるリアレという女性との会合を得る事が出来た三柴ら天道財閥社員達は彼女の有する研究施設を後にしていた。


「ふぅむ・・・なるほど、そう言う手段があったわけか・・・」


 三柴が盲点だった、と言わんばかりに深く息を吐いた。召喚術。それはよく知られている内容で、彼らも当然耳にした事があった。となると、考えるべき事は幾つもある。


「まず重要なのは、向こうに連絡を取る手段、か。これ、どうすりゃええんですかね」

「そう言えば聞いていなかったな・・・スカサハさん。何かわかりますか?」


 彩斗の言葉に三柴がスカサハへと問いかける。召喚術についての講義は受けたが、もう一つの向こうと連絡を取る為の手段については何も聞けていない。というよりも、リアレも眠くて忘れてしまっていたらしい。こればかりは間が悪かったというしかないだろう。


「ふむ・・・まず考えられるのは念話となるが・・・」

「念話・・・テレパシーの一種でしたか?」

「まぁ、そうなる。その一種と考えてよい」


 三柴の言葉にスカサハが頷く。これは魔術師にとって基本的な魔術の一つと呼んでよく、魔術師や魔術を使う者達であれば誰でも使いこなせる様になっているのが前提だ。


「とは言え、これで異世界にメッセージを送れるかというと、それはまぁ、あり得んな。理屈はわからん。おそらく規格がそれに合致しておらんのだろう」


 スカサハはこれは自分でも調査したことのない事だった為、あくまでも推測として三柴の疑問に答える。と言うかそもそも無理だからこそ、彼女はカイトへ連絡を送る為に何らかの魔術を展開していたのだ。当たり前である。


「ふむ・・・そうよな。歩きながらになるが、少し話すか」

「お願いします」


 スカサハは次の目的地まで少し歩く事になる為、その間に少し説明をしてくれることにしたようだ。そうして、歩きながら彼女が説明を開始した。


「そうよな。まず世界と世界の間には当然、隙間がある。この間は何処かの世界に属しておるわけではなく、敢えて言えば虚無があると言っても良いやもしれん。もちろん、純粋に虚無があるわけではないが。空間としては虚無があると言って良い」

「は、はぁ・・・」


 三柴はのっけっから躓きつつあったが、それでも生返事で返事をする。とりあえず録音はしているので、後で誰かに聞いてもらうのがベストだと判断したらしい。

 そもそもこんな理論を聞く事は彼らの予定には全く無かったのだ。情報が入手出来るので、そこを喜んでおくべきだろう。わからない事についてはそのままスルーしておく事にした。というわけで、そんな彼らの内心なぞお見通しなスカサハは詳しい解説はせず、そのまま続ける事にした。


「で、この間というのが難敵でな。そうよな。例えばこの空間を便宜的に『世界の狭間』とでも名付ける事としよう。この世界の狭間においてはこの世界の理論もエネフィアと呼ばれる世界の理論も通用せん。故に、この世界で開発された魔術はほぼほぼ通用せんと考えて良い」

「だから、接続できないと?」

「うむ。お主らの考え方で言えば電話線が途中で断線してしまうか、もしくはトンネルの中に入ってスマホとやらの電波が途絶してしまうと考えれば良い。まぁ、正確にはもっと複雑な話になろうが、お主らの考えとしてはそれで良かろう」

「なるほど・・・」


 スカサハの喩えは現代の喩えだったので、三柴達にもすんなりと受け入れられた。そしてそう言われれば、無理である事が納得できた。

 スマホだって電波が届かない所では使い物にならないのだ。念話とは魔術的な電話と同じ。ただ携帯もスマホも無いだけだ。であれば、何らかの信号が届かない以上は無理なのだろう。


「とは言え、これは他にも問題が含まれている。確かお主らの子らは向こうで腕を磨いているという事であったな?」

「ええ。以前ツクヨミ様に御助力を頂いた時に見た光景では、武術の鍛錬をしていました」

「それは良い事よ。最近の外の小僧どもは腕っ節が弱くてかなわん」


 スカサハは三柴の言葉に気分良さげに笑う。彼女は本質としては魔術師であるが、武芸で弟子を取っている事から武芸者としても名を馳せている。なので武術の鍛錬を積む事は好印象と言えるのだろう。


「とは言え、それで鍛錬を積んだとて、この狭間に落ちれば命はなかろうな。先に虚無というたが、これは純粋な意味での虚無ではない」

「先程言われていた事ですか?」

「そうだ。では、この狭間にもし生命が落ちればどうなるか。それについては推測になるが、おそらくひとたまりもなかろう」

「? 何も無いのに、ですか?」

「何も無いからこそ、よ」


 三柴の問いかけにスカサハはだからこそだ、と明言する。ここら、魔術師として世界のシステムを見る者だからこその話と言える。虚無の捉え方が少し違うらしい。


「儂が言うた虚無とは、本当に何もないと言う意味での虚無よ。本来世界そのものが個を守る為に展開している様々な防壁さえ失われている。故に、この狭間では身一つで己の身を守らねばならん。存在の拡散に様々な世界から漏れ出るであろう様々な理論の本流、幾つもの力の奔流をその身に受ける事になろう」

「は、はぁ・・・」


 何がなんだかさっぱりであるが、三柴はとりあえず頷いておく。存在の拡散だの理論の奔流だのと言われても何のことだかさっぱりだ。が、とりあえず危険だという事ぐらいはわかった。というわけで、結論を聞く事にした。


「あ、あの。それでもしそこに落ちればどうなるのですか?」

「うむ。良くて肉体が消し飛ぶ程度か」

「よ、良くてですか・・・」

「悪ければ魂も消し飛ぼう。ま、これは本当に悪ければなので大方消し飛ぶ程度で済もうな。一度死ぬ程度よ。生まれ変われる」


 その時点で十分悪い、と言う三柴達天道財閥社員達の内心を無視して、スカサハは笑う。ここらは生死感の差という所だろう。何処にでもある事なので誰も気にしない。


「で、よ。とりあえずそれは是が非でも防がねばなるまい。となれば、やはり向こうの抵抗を防ぐ意味でも連絡は取らねばなるまい」

「抵抗されて下手に失敗しても困るから、ですか?」

「うむ、その通りよ。所詮魔力なぞ意思の力。召喚と言うても一瞬で呼び出せるというのはよほど彼我の差がとてつもない以外では有り得ん。それを考えれば、連絡を取ってきちんと日にち等を取り決めた上で行うのが良かろう」

「なるほど・・・」


 三柴はスカサハの言葉は道理だな、と思う。向こうにだって向こうの事情があるのだ。あまり考えたくはないが、戦っている最中だということもあり得る。そこで呼び出して他の誰かの子供が死にました、はあり得て欲しくない。その誰かが、自分の、なのかもしれないのだ。避けるべきだろう。


「っと、そう言うて思い出した。そうよ、そう言えば、よ。リアレのヤツはうっかり言い忘れておったが、一つ言っておかねばならん事がある」


 納得していた三柴達へ対して、スカサハが何かを思い出した様に手を叩いた。どうやら本当はリアレも知っているらしいが、忘れていたらしい。


「それは?」

「うむ、世界の間で経過する時間が違うというのは知っておるか?」

「あ、はい。一応、考慮には入れております」


 三柴は煌士から上がっていた推測――と言ってもカイトの話を受けた実際の話だが――の中に世界の間での時間経過が異なっている可能性があるという推測があった事を思い出す。

 一応それは流石に数百年単位とは言われていないが、年単位になるかもしれない事は明言されていた。そこは彼らも前提として動いていた。


「うむ・・・であれば、よ。これは必然考えねばならぬ事であるが、そこらをなんとかする事も考えねばならんな。召喚に関して言えばそこは考慮せんで良いであろうが、連絡を取るのであれば、そこは考慮せねばなるまい」

「考慮・・・例えば、どういうことですか?」

「ふむ・・・」


 三柴の問いかけにスカサハは一度考え込む様なポーズを見せる。というより少し前に彼女自身がエネフィアとの間で連絡を取り合ったのだ。この時点で彼女としての答えは持ち合わせているような物だといえる。なのでこれは完全にポーズだ。


「そうよな。例えば、世界と世界の時間を調律して、どちらかの時間に世界を同期してしまう事か。まぁ、この世界広しと言えどもそこまで異世界との間で連絡を取り合う事の多い星があるとは思えん。これは簡単に出来るであろうな。儂ら超級も更に上でやっておる事だからな。というわけで自然、これはお主らでは無理よ。儂らであればこそ出来る事。あまりに属人的過ぎて当てにならんよ」

「そ、それは、まぁ・・・」


 世界側を調律してしまう。確かにこれなら確実だろうが、それにどれだけの技術と力が必要なのか彼らでは想像が出来なかった。なのでその時点でこれはあくまでもスカサハがやるなら、という前提で参考程度に留めておく事にした。


「ま、それに関してはお主らが考えよ。儂は儂の方法でできてしまう上にその気になれり開発の時間さえあれば儂の領域で使える転移もやってみせよう。が、流石にそこら儂が使わぬ魔術の開発にそこまで協力はせん。求められれば、意見ぐらいは述べてやるがな」


 スカサハはあくまでも気の乗った範囲での協力を明言する。ここらは必然だ。そもそも彼女らは過去の存在。積極的に関わってくれるわけではない。それに、また別の考えもあった。


「それに、それは違うからのう」

「? 何がですか?」

「うむ、儂が積極的に関わる事よ。儂はあくまでも協力者。主体となるべきはお主らよ。確かに挙国一致、星を上げて取り掛かる事もよかろう。が、それは違う。この一件はお主らがお主らの家族を取り戻す為に始めた事。そこに儂が過度な義侠心を見せても良いが、それは筋が通るまい?」

「はぁ・・・」


 三柴はスカサハの言葉に僅かに困った様な顔をする。確かに被害者家族である彼らからしてみれば、なりふり構わずとりあえず全力で協力してほしい、というのが素直な考えだ。これは当然の考えではある。

 が、ここら神様や彼女ら神話に生きた者達からしてみれば、甘えるな、と切って捨てられる内容だった。悪く言えば上から目線と言うべき所であるが、確かにこれもまた道理ではあるだろう。

 究極的には彼女らは他人だ。特に師匠という性質の強い彼女からしてみれば、自分で出来るけどそれは彼らの訓練にならない、という考えなのだろう。もちろん、それでも最悪の事態になったりはしない様にしてくれる――今回の案件でどこまでそれが通用するかは不明だが――のだろうが、だ。


「まぁ、そのために努力するというのであれば、儂らも戦士としてお主らに助力しよう。何か目的の為に死力を尽くす者に手を貸さねば戦士の名折れ。我らの武名とは我らの勲の為であり、同時に力なき者の為の物でもある。それを忘れては単なる暴。そこは、怠らぬよ」


 スカサハは再度、軽く協力だけは明言しておく。もちろん、その対価はもらうが、だ。というわけで、その商談の為には、売り物となる商品を相手に見せる必要があった。たどり着いたのは、一つの建物だ。聞けば会議場の様な所らしい。


「さて・・・そろそろか。おーう、できておるな」

「おーう」


 扉の先から、クー・フーリンの声が響いた。そうして、スカサハが扉を開く。そこに居たのは先程のクー・フーリンとフェルディアの好敵手コンビ、フィンとフェルグスの騎士団と戦士団を率いている幹部二人に、その補佐としてディルムッド・オディナが座っていた。その更に奥には、どこかスカサハに似た女性にこれまたスカサハに似た美男子だ。


「さて・・・では、商談を始める事としよう。お主らも座ると良い」


 その中の上座に腰掛けたスカサハが三柴達へと着席を促す。そうして、天道財閥と『影の国』との商談が開始される事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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