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勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第8章 イギリス編

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第155話 朝食での一幕

 会食を終えた彩斗達だったが、そうしてミーティング用に与えられた部屋に入って早々、三柴と彩斗が首を傾げた。


「・・・なぁ、天音」

「あ、やっぱそう思います?」

「やっぱりか・・・」

「どうしたんですか、専務?」


 三柴と彩斗が揃って怪訝な顔をするのを見て、桐ケ瀬が首を傾げる。実はご飯の最中から、二人は時々首を傾げていたのだ。


「あ、ああ・・・いや、実はどこかで食べた様な気がしてな・・・」

「そうなんやわ・・・なーんか、懐かしいってか・・・うーん・・・なんつーか、味付けの基本が俺好みってか・・・」


 三柴と彩斗は二人で首を傾げる。三柴は彩斗と家族ぐるみの付き合いがあり、何度か綾音の手料理を食べさせてもらった事があった。それ故、彩斗と同じ違和感を感じたらしい。


「それが何か可怪しいんですか?」

「ん? ああ、いや。別にそういう事やない。ただ単に味の好みが似てるってだけやろ」


 内海の問いかけに彩斗が笑いながら首を振る。別に何か不思議があるか、というとそうではないのだ。普通に味の好みが似ているだけ、というだけだと思っていた。


「まぁ、それで単にこいつの味覚と同じ様な感じなのか、と思っただけだ」

「あはは。いや、単にびっくりした、ってだけやな」

「そういうことだな」


 三柴と彩斗が笑う。何かを疑っているわけではなく、こんな偶然もあるのか、と思っていただけだ。と、いうわけなのだが、実は勿論当たり前である。

 この料理を教えたのはカイトで、レシピを残したのも料理人達に料理を教えたのもカイトだ。というわけで、実は頼めば彩斗の家の料理――つまりは綾音の手料理――に似た物が出てくる。

 会食にせずに料理人達に頼めばこれが出てくる可能性は十分にあった。あったわけなのだが、それを危惧したスカサハがコース料理にしていた、というわけであった。


「で、三柴さん。どうしましょ。とりあえず明日から交渉って事になりましたけど・・・」

「まぁ、とりあえずは明日街を見せてもらえる、という事だし、研究設備も案内してもらえる、という事だろう? それを見て考えてみよう」


 彩斗の問いかけを受けて、三柴はとりあえずの予定を考える。流石に到着が夕方でこれから案内をしてもらって、というのはいくらなんでも難しい話だろう。というわけで今日は顔見せだけ行って、明日から本格的な交渉を、という所だった。というわけで、その日は一同そのまま各々の部屋に戻って、眠る事になるのだった。



 翌朝。彩斗達は目を覚ますと、城の案内人とやらに案内されて食堂へと向かう事になった。


「食堂・・・んなのもあるんですか?」

「はい・・・まぁ、運が悪いと戦士団の方々が来られて大宴会をやってる事もあるのですが・・・なにせここには昼も夜もありませんからね」

「は、はぁ・・・」


 少し呆れながら告げられた言葉に、彩斗達はなんと言えば良いかわからなかった。まぁ、昔ながらというか戦場を駆け抜けて血で血を洗う戦いを行っていた豪傑達、と言われれば想像通りといえば想像通りなのであるが、逆に言えばそれが物語ではなく現実に現れればこうなるしかないだろう。


「4年前、ある方が弟子入りされた日はそれは酷いものでしたよ。フェルグス殿が彼を大いに気に入られたらしく、更に相手の方もこれがまぁ、酒好きな豪快な方でして・・・いえ、豪快かと思えば繊細、繊細かと思えば図太く、と不思議な方なのですが・・・」

「それは・・・もしかしてブルーですか?」

「ええ、外ではそう呼ばれているらしいですね」


 彩斗の問いかけに案内人はそう言って笑う。と、そんな話になったからか、今度は三柴が少し興味――と言っても交渉に活かす為だが――を見せた。彼の情報は殆ど無いのだ。手に入れられる所で手に入れたいと思うのは、不思議ではないだろう。


「ほぅ・・・それは物凄かったのでしょうね」

「ええ・・・あの時は少々外で大戦闘をやられたらしく、スカサハ様もそれを見ていらっしゃってもうごきげんでして・・・で、一転自分に挨拶もせずに酒を飲みまくるものだから大いに怒られて、食堂が完全に破壊されるほどでした。自分もまぁ、その時一緒に彼から振る舞われた酒を飲んでいたのでイマイチ何か言い難いのですけどね」


 たはは、と案内人が照れた様に笑う。彼は武人ではないらしいのだが、そういった武人達と付き合う事は好きらしい。酒を勧められて飲む事もあるらしいし、事故とは言え外から来たらしい武人に興味があった事もあって酒を飲み交わしたそうだ。


「にしても・・・挨拶もせずに、ですか。そいつ、何考えとったんでしょうね」

「あはは。後々聞いた所によると、弟子入りするつもりもなかった、との事で有名な英傑たるフェルグス殿に誘われたのでそちらを先に、というわけらしいですね。まぁ、あの当時はフェルグス殿の客という形でしたので、それでも良かったのでしょう。実際、殴り込んだのはスカサハ様の勘違いでしたからね。彼女の方から後に謝罪されてました」


 案内人は楽しげに笑いながら案内を行う。と、そんな話をしていると、城の一階に設置された大きめの食堂にたどり着いた。高さは普通だが、広さは学校の食堂程度だった。

 どうやら食事時らしく、人は結構多かった。一般開放もされているらしいので、街の人も居るのだろう。と、そうして入った所で、案内人が笑いながらある一角を指差した。


「ああ、ほら。あそこが破壊された跡です・・・と言ってもあちらはスカサハ様が破壊された跡なのですけどね」


 一同がそちらを見ると、壁のおよそ20メートル程が破壊されていた。その先は外だ。


「まぁ、そこで一悶着あり、皆さんがブルーと呼ぶ方が弟子入りする事になったのですよ」

「へー・・・そこらの経緯は聞いては?」

「まぁ、少しは、という所でしょうか。実際、時折ありますので私はそそくさと避難してしまいましたからね。あの後は適当に戦われ、と言うところでした。技量だとスカサハ様の方が上でしたからね。彼女の勝ちでしたよ。その時は、ですが」

「その時は・・・ということは、また別に?」

「ええ、一度だけ」


 三柴の更なる追求に案内人は殆ど何も考える事なく頷いた。ここら隠していないのは城に勤めている者ならば誰でも知っているからだ。隠す必要がないのである。


「あの後、彼が弟子入りして一年経過したくらいでしたか・・・その頃にスカサハ様と大喧嘩をされまして。いえ、大喧嘩ではなく本気の殺し合い、というべきなのでしょうが・・・あ、私は見てませんよ? 怖いので。私はフェルグス殿らではないですからね」

「は、はぁ・・・」


 あっさりとチキン発言をする案内人に、一同は毒気を抜かれる。揉め事を嗅ぎ取るなり逃げるあたり、確かに彼はチキンなのだろう。まぁ、自己防衛能力に優れているとも言える。一概に悪いとはいえないだろう。


「で、その時どうにもすったもんだで『誓約(ゲッシュ)』を果たされましたので、ブルー殿を夫とする事にされたらしいですね、スカサハ様は。きちんと彼の胸に証も浮かんでいましたよ」

「・・・え?」


 案内人の言葉に全員がぽかん、と口を開ける。聞いたことの無い情報だったのだ。ちなみに、これも勿論ここの全員が知っている話だ。まぁ、ローカルネタだし誰も外では言わないので外にまで伝わっていないのが、イギリス政府としても掴めていない理由だった。


「あれ・・・ご存じないのですか? 一応、この国はスカサハ様が治められておりますが、名目上はあの方が所有者となっています」

「は、初耳です・・・それは本当なのですか?」


 きょとん、と告げられた一言に三柴が思わず真偽の程を問いかける。それに、再度ぽかん、となりながら案内人が答えてくれた。


「ええ・・・『影の国』なら誰もが知っていますよ? 1000年誰も果たせなかったスカサハ様の心臓破りを果たした英傑だ、と・・・あ、順番来たのでご飯貰っちゃいましょう」

「は、はぁ・・・そ、その心臓破りというのは・・・まさかそのままの意味ですか?」


 三柴は案内人に続いてご飯を貰い――バイキング形式――つつ、更に突っ込んだ所を聞いてみる。ここまで来ると仕事よりも興味が先だったらしい。


「ええ。我が心の臓を貫けし者にこの国と我が身をくれてやろう、1000年程前にそうおっしゃったらしいですね。彼は知らなかったんですけどね」


 案内人は少し笑いながらそう言う。実は彼も知りながらカイトには教えてなかったその一人だった。まぁ、彼の場合は敢えて教えていなかった、らしい。

 カイトと飲んでる最中に笑って暴露したら泣きながら怒られたそうだ。とは言え、そんな彼もまさか誰も教えていなかったとは、というのは大誤算だったらしいのだが。


「それ・・・夫さん良かったんですか? 不倫というか浮気ですよね?」

「? 夫・・・?」


 甘粕の問いかけに案内人が首を傾げる。何を言っているのだ、こいつは。そんな感じがしていた。


「? 確か娘さんいらっしゃいました・・・よね? クー・フーリンさんの奥さんでウタアハという人が・・・」

「・・・ああ、そう言えばウタアハ様がいらっしゃるんだから当然夫、居たんですね」


 ぽむ、と案内人の男性は器用に食器を魔術で浮かせながら手を叩いた。と、そんな彼の頭の上に真紅の棒状の物が伸びてきて、すぱこん、と勢い良く彼の頭を叩いた。


「あいたっ・・・あ、これはスカサハ様・・・」

「やれやれ・・・お主は儂を何だと思うとる」


 そこに居たのは案内人が言うとおりスカサハだ。彼女が完全に呆れ顔で立っていた。なお、聞けば昨夜の会食の場は会食で使う為であり、彼女も基本的にはこちらでご飯を食べているらしい。見れば普通に全員が気にしていないらしく、老夫婦――と言っても彼女より年下だが――に挨拶されていたりした。


「あ、スカサハさん・・・おはようございます」

「うむ、おはよう・・・ふむ、何を聞いたかは知らんが、儂とて普通に夫は居た」

「そうですよね・・・で、良かったんですか? そんな宣言を勝手にしちゃって・・・」


 甘粕に代わって渚が問いかける。代わったのは何か意味があったわけではない。


「ふむ・・・と言ってもすでに死んどるからな。お主らの言う時代で言えば紀元前の段階で」

「えっと・・・操を立てるとかは?」

「ふむ・・・これが残念ながらどんな男なのかもさっぱりでな。ウタアハを産んだのだから愛しておったとは思うし、ウタアハの器量を見ればそこそこ良い男ではあったのだろうが・・・一時期儂の方で色々とあった所為でぜんっぜん覚えとらん。男としての器量はバカ弟子一号より下とは思うから、忘れて当然の器量ではあったのだろう」


 スカサハは少し困った様子で悪びれる事もなくかつて夫であった者について言及する。困った様子があるのは彼女としても少しは申し訳なく思っているから、なのだろう。


「ま、大方の目安はある・・・あるが間違えた日には流石に酷いので追求はせん事にしたよ」


 スカサハは少し困り顔でそう告げる。ちなみに、大方の目安というのはどうやら初めて取った弟子なのでは、という所らしい。色々と事情があった弟子らしく何度か情を交わした記憶はあるらしく、その時に出来た子供がウタアハじゃないか、だそうだ。時期としては一致するらしい。

 結婚してたかは不明だそうだが、結婚してはいなかったのではないか、というのが彼女の推測だ。理由は男女として付き合いがある今を見ると、それまでの自分には女としての自分が一切見当たらなかったから、という事である。そこから夫とした側もおそらく夫として振る舞ってはいなかったのだろう、とは彼女の言葉である。そんな彼女に渚が再び苦笑気味に告げた。


「つ、追求してあげてください・・・」

「ふん・・・追求しても良いが、それはそれで今夫に悪かろう。所詮死んだ過去の奴よ。縛り付けられる方があれに悪い」

「うーん・・・前の夫さん、泣いてる様な・・・」

「ま、あれにも呆れられたわ。が、あれはああ見えて嫉妬深い。機嫌は損ねる」


 彩斗の言葉に対してスカサハが肩を竦める。そこらの関係で彼女は追求しない事にしているようだ。確かにどう考えても前の夫を追求して今の夫が良い顔をするとは思えない。これで良いといえば、良いのだろう。と、そんな話をしていて、ふと彩斗が気付いた。


「・・・って、そうや・・・スカサハさん。確かブルーって奴と夫婦仲って事ですよね?」

「うむ。そうなる。と言っても現地妻に近いがのう・・・ま、儂が勝手に出向くので問題はないが」

「ってことは、魔女さん知ってらっしゃいません?」

「む? 魔女? ああ、ティナの事か。知ってるが?」

「何処に居るか、もしくはアポイントなんかは・・・」

「何だ。なぜ魔女にこだわる」


 彩斗の問いかけにスカサハは首を傾げる。ここらの話は本来もっと後にするつもりだったのだが、幸いスカサハも機嫌が良さそうだし、この流れなら知っている可能性は非常に高い。機を見るに敏、というわけだ。


「いえ、実は魔女の方にもお力をお借りしたくて・・・」

「ふむ? まぁ、飯の片手間話ぐらいには話を聞いてやろう」


 とりあえずご飯をよそい終えたスカサハは一同と共に歩いて、机へと向かう。というわけで、変な形ではあったが現在の彩斗達の目的などを詳しく語る事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。次回は来週土曜日21時からの投稿になります。

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