目撃情報付近、到達しました。
お待たせしました。
なんとか成功を納めた初任務のあった街を発って、幾つかの村を通り、私達はあの翠色の子が目撃されたという地域にやって来た。
もうすぐだ。
あと少しで、あの子に会える。
それからは、一緒に来てくれるようにお願いして、ずっと一緒にいるんだ。
一緒に旅して、一緒に遊んで、任務だって、一緒に。
ああ、楽しみだなぁ。
早く会いたい。
あの子の特殊能力は、何だろう?
レンみたいに光るとか、旅や任務に役立つものだといいけど。
そのほうが、あの子も隊の一員としての価値を示せるもんね。
「……また、倒れてるな」
「えっ?」
私があの子との再会に思いを馳せていると、後ろにいるイシュマさんの、ぼそりと呟く声が耳に入った。
振り向くと、イシュマさんはどこか警戒したように周囲に視線を走らせていた。
その視線を追って私も周囲を見回すと、畑に植えてある作物が幾つか倒れているのが目に入る。
……そういえば、この辺りに来てから植物が倒れてたり、地面に穴が空いてたりしてる光景を目にするようになったような……?
何でだろ?
「……街道から外れ人里に近づくにつれ、増えてるな」
「そうね。しかも枯れていないところを見ると……荒らされたのは、つい最近ね」
辺りの様子に首を傾げていると、私とイシュマさんの乗る馬の左右に並んで並走しているリューイさんとユスティさんが、イシュマさんの呟きを拾い意見を返した。
「……最近か。食い詰めた輩が暴れたか、あるいは……」
「あるいは?」
「……。……いや、何でもない。フィー、近くに盗賊まがいの輩がいるかもしれない。気をつけろよ」
「あ、はい。わかりました」
周囲を気にしながらイシュマさんが告げた忠告に、私はあの子に会える事で浮かれつつあった気持ちを引き締めた。
★ ☆ ★ ☆ ★
陽が傾き始めた頃、私達は一夜の宿を取るために最寄りの村へとやって来た。
けれど、村の中へと馬を進めると、酷く痛々しい光景が次々に目に飛び込んできた。
家々の、壊れた扉や窓。
荒らされ尽くした畑。
半壊した小さな小屋。
小屋の周りには鶏の羽らしきものと、赤い染みがある。
たぶん、家畜小屋だったんだろう。
「……酷い……これ、さっき言ってた、盗賊の仕業でしょうか……?」
「……かも、しれないな」
「え? "かもしれない"って、何か他の」
「皆、手分けして村の被害状況を確認! 急ぎ村人を探し、保護せよ!」
「「「「「「 はっ! 」」」」」」
「フィー、行くぞ!」
「あっ、は、はい!」
村の惨状に、さっきのイシュマさんの言葉を思い出して尋ねると、イシュマさんはどこか曖昧な返答を返した。
その返答に疑問を覚え、再び尋ねようとした瞬間、隊長から凛とした声で指示が飛び、皆は弾かれたように馬を降りて周囲に散っていく。
見れば、レイドさん達も既にそれぞれ別の方向へと駆けて行っていた。
す、凄い、皆早いなぁ。
これが、経験の差っていうものなのかな……。
そんな事を思いながら、私は慌ててイシュマさんの後を追いかけた。