表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡娘と獣と騎士と。  作者: 葉月ナツメ
再び、トゥイタギアへ
68/78

目撃情報付近、到達しました。

お待たせしました。

なんとか成功を納めた初任務のあった街を発って、幾つかの村を通り、私達はあの翠色の子が目撃されたという地域にやって来た。

もうすぐだ。

あと少しで、あの子に会える。

それからは、一緒に来てくれるようにお願いして、ずっと一緒にいるんだ。

一緒に旅して、一緒に遊んで、任務だって、一緒に。

ああ、楽しみだなぁ。

早く会いたい。

あの子の特殊能力は、何だろう?

レンみたいに光るとか、旅や任務に役立つものだといいけど。

そのほうが、あの子も隊の一員としての価値を示せるもんね。


「……また、倒れてるな」

「えっ?」


私があの子との再会に思いを馳せていると、後ろにいるイシュマさんの、ぼそりと呟く声が耳に入った。

振り向くと、イシュマさんはどこか警戒したように周囲に視線を走らせていた。

その視線を追って私も周囲を見回すと、畑に植えてある作物が幾つか倒れているのが目に入る。

……そういえば、この辺りに来てから植物が倒れてたり、地面に穴が空いてたりしてる光景を目にするようになったような……?

何でだろ?

                       

「……街道から外れ人里に近づくにつれ、増えてるな」

「そうね。しかも枯れていないところを見ると……荒らされたのは、つい最近ね」


辺りの様子に首を傾げていると、私とイシュマさんの乗る馬の左右に並んで並走しているリューイさんとユスティさんが、イシュマさんの呟きを拾い意見を返した。


「……最近か。食い詰めた輩が暴れたか、あるいは……」

「あるいは?」

「……。……いや、何でもない。フィー、近くに盗賊まがいの輩がいるかもしれない。気をつけろよ」

「あ、はい。わかりました」


周囲を気にしながらイシュマさんが告げた忠告に、私はあの子に会える事で浮かれつつあった気持ちを引き締めた。


★  ☆  ★  ☆  ★


陽が傾き始めた頃、私達は一夜の宿を取るために最寄りの村へとやって来た。

けれど、村の中へと馬を進めると、酷く痛々しい光景が次々に目に飛び込んできた。

家々の、壊れた扉や窓。

荒らされ尽くした畑。

半壊した小さな小屋。

小屋の周りには鶏の羽らしきものと、赤い染みがある。

たぶん、家畜小屋だったんだろう。


「……酷い……これ、さっき言ってた、盗賊の仕業でしょうか……?」

「……かも、しれないな」

「え? "かもしれない"って、何か他の」

「皆、手分けして村の被害状況を確認! 急ぎ村人を探し、保護せよ!」

「「「「「「 はっ! 」」」」」」

「フィー、行くぞ!」

「あっ、は、はい!」


村の惨状に、さっきのイシュマさんの言葉を思い出して尋ねると、イシュマさんはどこか曖昧な返答を返した。

その返答に疑問を覚え、再び尋ねようとした瞬間、隊長から凛とした声で指示が飛び、皆は弾かれたように馬を降りて周囲に散っていく。

見れば、レイドさん達も既にそれぞれ別の方向へと駆けて行っていた。

す、凄い、皆早いなぁ。

これが、経験の差っていうものなのかな……。

そんな事を思いながら、私は慌ててイシュマさんの後を追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ