囲まれていました。
目が覚めると、ふかふかのベッドにいて、周囲にはたくさんの人達がいた。
あの建物に囚われていた女性達に、女性達に似た容姿の人達、そして。
「皆……」
流星旅団の仲間達が、優しい笑みをたたえ、側にいた。
「おはよう、フィー。気分はどう?」
「お腹は空いてない? 食欲あるなら、何か作って貰ってくるよ?」
「好きなものを好きなだけリクエストしていいぜフィー。ここの厨房の連中も喜んで作るだろうから」
「そうね。なんて言っても、フィーは賊のアジトから囚われていた女性達をたった一人で救い出した勇敢な騎士だもの!」
「ああ。事件を解決に導いた人物を、きっと労ってくれるだろうさ」
「フィー、大手柄だぞ。よく頑張ったな。さすがソドウィザムの騎士、俺達流星旅団の仲間だ」
「……。……っはい、ありがとう、ございます……!!」
囚われていた女性達が、無事でいる。
皆が側にいて、私を気遣い、労いの言葉をかけてくれる。
その事に、安堵と嬉しさが同時にこみ上げ、私は目を潤ませ、堪えきれずに涙を流した。
私の初仕事は、ギリギリのところで成功した。
意識を失う直前に聞こえた皆の声は、幻聴じゃなかったんだ。
失敗と紙一重だった形の成功だけど、これは、ソドウィザムの騎士として、皆の仲間として、大きな一歩だと、思っても……いいよね?
「ほらほらフィー、泣かないの!」
「そうよ、貴女にかけられる言葉は、まだまだあるんだから!」
「フィー、ここにいる女性達が誰かはわかるわよね? 周囲にいるのは、女性達の家族よ」
「皆さん、お前にどうしても一言お礼が言いたいって、ずっと目が覚めるのを待ってたんだ」
「だからほら、泣き止んで。ちゃんと聞くんだぞ?」
「その言葉がまた、誇りになるからな」
そう言うと、皆は私から離れて後ろに下がる。
そして入れ替わるように、女性達とその家族達が近づいた。
「あの、助けて下さって、ありがとうございました……!!」
「貴女がいなければ、私達、まだ、あそこで絶望して泣いていたと思います……本当に、ありがとうございます!!」
「娘には、もう会えないかと思っておりました……貴女様には、感謝の言葉もございません……!!」
「彼女を僕の元に返して下さって、本当にありがとうございます!!」
「おねえちゃんを助けてくれてありがとう、騎士さま!」
次の瞬間、口々に代わる代わる告げられる、感謝の言葉。
こうもたくさんの人に言われると、なんだか照れてしまうし、少し、気後れもしてしまう。
私はただ犯人達の足止めをしただけで、今無事にこうしていられるのは、彼女達自身が頑張って森から街道まで駆けてくれたからなのに。
犯人達を捕まえたのも、皆であって私じゃないのに。
……ああ、強くなりたいな。
もっと上手に、誰かを助けられるようになりたい。
この人達が向けてくれる感謝の気持ちに、見合うような騎士に、なりたい。
「……皆さん、無事で良かったです。これからはまた、ご家族や恋人さんと、仲良く幸せに暮らして下さいね」
「はい! ……本当に、ありがとうございました……!!」
若干気後れする気持ちを隠して告げた私の言葉に、女性達とその家族の皆さんはもう一度お礼を言って、寄り添うように、帰って行った。
「……皆。私、まだまだ未熟です。正直、今回は、運が良かったんだと思う。だから……皆と過ごす中で、もっとちゃんと、騎士の仕事を学んでいきたい。ご指導、よろしくお願いします」
小さくなっていく後ろ姿を窓から見て、私は側にいる皆に向き直り、そう告げた。
皆は優しい表情のまま、ただ力強く、頷いてくれた。