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平凡娘と獣と騎士と。  作者: 葉月ナツメ
再び、トゥイタギアへ
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その時、騎士達は

久しぶりの更新です。

時を少し遡ること、数時間前。

街の騎士団支部の一室に、イシュマ達流星旅団の面々と、レイド達第二小隊の面々が集まっていた。

彼らはレイドからの、"緊急事態発生"の知らせを受け、支部へと舞い戻ったのだった。


「……まずは、流星旅団の皆様に謝罪をせねばなりません。申し訳、ございません……!!」


激しい後悔をその表情に滲ませたレイドはそう言うと、深々と頭を下げた。


「……それは何に対する謝罪だ? 何故かこの場にフィーがいないが、フィーはどうした? 件の誘拐犯に遭遇し、不覚でもとってフィーを拐われでもしたか?」

「……っ!?」


的確過ぎるイシュマの指摘に、レイドは驚愕の表情を浮かべイシュマを凝視した。

レイドの唇は声を出さずに言葉を紡ぐ。

"何故それを"、と。

するとイシュマは不快なものを見るように眉をひそめレイドを見据えた。


「……小隊とはいえ仮にも一部隊の隊長のくせに、女一人満足に守れないとはな」

「なっ、貴様! 隊長を侮辱する気か!?」

「! よせ! ……そう言われて当然だ。……本当に、申し訳ない」

「た、隊長……!!」


イシュマの言葉に声を荒げた隊員達を制止し、レイドは再び頭を下げた。


「ふん」


イシュマはそれを見て鼻を鳴らすと、フェザークに向き直った。


「団長。少し前、興味深い馬車を見ました。街の大通りを街門へ向けて走っていたのですが、その馬車、上に、面白い氷細工を乗せていたんです。以前、フィーに見せて貰った、フィーの好物だという異世界の果物を形どった、氷細工を」

「!? ……何……!?」


イシュマの言葉が耳に届くと、レイドは勢いよく下げていた頭を上げた。


「では……ではその馬車に、フィーさんが乗っていたのでは……!?」

「ああ、だろうな」

「……っ!! "だろうな"、ではないだろう!?」


レイドは、自分の問いに平然と言葉を返したイシュマの態度に声を荒げ、その胸ぐらに掴みかかった。


「わかっていたなら何故助けなかった!? フィーさんは助けを求めていたはずだ!! それなのに……っ!! 貴殿に私を非難する資格などない!! 甘んじて受けた私が馬鹿だった!!」

「………………言いたい事は、それだけか?」

「何だと!? ……ぐっ!?」


自分の叱責を受け、尚も平然とした態度を崩さないイシュマに、その胸ぐらを掴む手に更に力を込めたレイドだったが、次の瞬間ふいに襲いかかった衝撃波に吹き飛ばされ、壁にその体を打ち付けた。


「団長!!」

「何をする、貴様!?」


第二小隊の面々は慌ててレイドの側に駆け寄り、その体を支えた。

次いでイシュマを激しく睨みつけた。


「……馬鹿な事ばかり言っているからだ」

「何を!?」

「フィーが助けを求めていた? そんなわけがあるか。あの氷細工は魔法で作られたものだ。魔法が使える状態なのに、何故フィーが逃げ出す為に使わず氷細工を作るだけに留めたと思う? なって日は浅いが、フィーは騎士だぞ? おかしな氷細工を乗せた馬車を目立たせ、目撃させ、その行く先を俺達に追跡させやすくするためだと考えるのが自然だろうが」

「その通りね。先日私達はフィーの前で、"人拐いなんて輩は一網打尽にしなきゃ意味がない、その為には泳がせてアジトを探るのが一番"って話をしたし。だからフィーは氷細工という手段を取ったのだわ」

「……な……。……あの子が、そんな……?」

「……嘘だろ……」


イシュマとユスティの言葉を聞くと、レイドを始め第二小隊の面々は大きく目を見開いた。

その様子に、フェザークはゴホン、と、わざとらしく一回、咳払いを落とす。


「……話を進めても良いだろうか。イシュマ、その馬車、どこへ行ったかわかるのだろうな?」

「もちろんです。当然、追跡の魔法をかけてありますから」

「よし。……では、皆。フィーを迎えに行くとしよう。恐らく今も自分にできる事を考え頑張っていよう。事が済んだら、労ってやらねばな」

「はい、そうですね」

「まずは、腹一杯の飯だよな!」

「あら、お風呂が先よ、きっと」

「その前に、感じているだろう恐怖を拭い去ってやるべきじゃないか? イシュマが」

「そうね。イシュマ、よろしくね」

「やり方は任せるから、ちゃんと考えときなさいよ」

「ああ、わかってる」


そんな軽口を叩き合いながら、イシュマ達は部屋の扉へ向かう。

そして扉を開けると、イシュマはレイド達を振り返った。


「……何をしている、行かないのか?」

「っ! い、行くに決まっているだろう! 皆、行くぞ!!」

「はっ!」


呆然としていたレイドはイシュマの声に我に返り、即座に立ち上がると、足に力を込め、歩き出した。

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