不穏な話を聞きました。
二日後、街にたどりついた。
フィー達はオープンテラスのある喫茶店に入り、お茶とお菓子を注文して、しばしの休息を取っていた。
消耗した品の買い出しには、レイド達が行った。
迷惑をかけたお詫びに、と、レイド達は自らその役を申し出たのだ。
レイド達の顔を立てる事にもなる、と、フェザークがそれを承知した。
しかし任せっきりにするわけにもいかないとの事から、ユスティとヴィルが同行しているが。
「ん~、このケーキ美味しい!」
「あ、本当?こっちのも美味しいよフィー。ね、一口くれない?こっちのもあげるから」
「あっ、はい!いいですよ!」
「あ、私も混ぜて?私のもあげるから」
「…女はホント甘いもの好きだよな」
「そうだな」
「あら?リューイだって好きでしょう?甘いもの」
「この間、砂糖菓子を目一杯買ってたのはどこの誰かしら~?」
「げっ!?あ、あれ見てたのかよ!?」
「偶然ね」
「…砂糖菓子を目一杯…?よく胸焼けしないな…」
「う、うるさい!いいだろ、別に!」
「あははっ」
他愛のない話をして、笑い合う。
フィーは旅団のメンバーと過ごす、この時間が好きだった。
しかしその和やかな雰囲気は、道行く人から聞こえてきた話に欠き消された。
「なあ、聞いたか?また出たんだってよ、人拐い」
「ああ…。また若い娘だってな。騎士団の詰め所で両親らしき男女が泣いてるの見たよ。可哀想になぁ」
男性の二人組は、話をしながら、喫茶店の横を通り過ぎて行く。
「…人拐いとは、穏やかじゃないわね」
「"また出た"、か。つまり捕まえられずに野放しにしてるわけだ。…何やってんだ、この街の騎士」
「目ぼしいのを泳がせて一網打尽を狙っているのかもよ?人拐いなんて輩は、根絶しなきゃまた沸くし。…まあ、泳がせてるせいで被害増やしてたら、意味ないけど」
「そうだな。…まあ、今回俺達には何の要請もないんだ、気にしても仕方ないだろ。他国の事に下手に手は出せないしな」
「えっ…放っておくんですか?」
「…仕方ないのよフィー。要請もないのに、他国の地で勝手はできないもの。…大丈夫よ、きっとこの街の騎士がなんとかするわ」
「…はあ…そういうものなんですね…」
フィーは少しだけ落ちた気分をごまかすように、カップを手に取り、お茶を飲み干した。