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平凡娘と獣と騎士と。  作者: 葉月ナツメ
再び、トゥイタギアへ
58/78

特殊能力、判明しました。

陽が落ちてくると、宿営地の場所が決められ、天幕が張られた。

フィー達が食材を見ながら夕飯のメニューを考えていた時、レイドがやって来た。

「スターテス殿、大変申し訳ないのですが、灯石を分けて戴けませんか」

「灯石を?…構わないが…買い忘れたのかね?」

「いえ。ですが…積み込むのを忘れたようで。申し訳ありません」

「ふむ…いずれにしろ、野営の為の準備に手抜かりがあったとは、いけませんな」

「…はい。面目次第もございません」

「しかしそうなると、灯石は使用を抑える必要がありますな。補充しようにも、この辺りには確か街も村もない。一番近い場所でも、明日中にたどり着くのは困難…そうですな?」

「はい、仰る通りです」

「ならば、明日の分は残さねばならん。…皆、聞いての通りだ。灯石は、本当に必要な場所にのみ使用するように」

フェザークは団員達に視線を向けると、そう告げた。

「マジかよ…街や村の外はただでさえ暗いのに、満足に灯石使えないとか…ありえねぇ」

「全くだわ。迷惑な話ね。準備に不備があるとか、信じられない」

「…リューイ、ミレット」

不満を口にしたリューイとミレットに、フェザークは叱責するような視線を向ける。

「…申し訳ない。迷惑をかける」

レイドは、団員達に向かって頭を下げた。

その日の夜は、ささやかな灯りだけが灯された。

手元や両隣の人物の姿がなんとか見えるくらいの場所で、食事をとる。

全員で丸く円になってはいるが、姿を見るのが困難な為か、会話は弾まない。

く、暗い……それに、空気が重い。

フィーは食事を口に運びながら、ちらりと両隣の人物の顔を見た。

両隣にはイシュマとユスティがいたが、どこか不満そうな表情をしているのが見えた。

「…やっぱり、明るいほうがいいなぁ」

思わずぽつりと呟くと、正面から息を飲む音がした。

場所から考えると、レイドのものだろう。

「…フィー」

「ご、ごめんなさい…」

フェザークからたしなめるように名前を呼ばれ、フィーは謝った。

すると。

「…キュイ~~~!!」

突然レンが遠吠えでもするかのように鳴き声を上げた。

「えっ、何!?どうしたのレン!?」

こんな鳴き声上げるの、初めてだ。

「何だ、どうした?…って!?」

「えっ!!」

レンの体から眩しい程の光が発せられ、辺りを照らす。

レンを中心に、直径三メートル程の場所が、真昼のように明るくなった。

「え?え?何これ?レンが……光ってる?」

「…魔獣の特殊能力だな。…これがレンの力か」

「凄いな…こりゃ、灯石いらずだ。これからは食事の時だけでも、レンに能力を発動してもらいたいもんだな」

「…レンの、特殊能力…」

レンは目映い程の光を放って、フィーを見上げている。

「フィー、褒めてやれ。きっとフィーがああ言ったから、レンは力を使ったんだ」

「あ…!」

イシュマに言われ、それに気づいたフィーは、慌てて持っていた器とフォークを置くと、レンの頭を撫でた。

「レン、ありがとう。とっても明るいよ。凄く助かる」

「キュイ!」

フィーがお礼を言うと、レンは嬉しそうに鳴いた。

その後は重い空気も払拭され、会話が飛び交い、フィーは楽しく夕飯を食べる事ができたのだった。

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