特殊能力、判明しました。
陽が落ちてくると、宿営地の場所が決められ、天幕が張られた。
フィー達が食材を見ながら夕飯のメニューを考えていた時、レイドがやって来た。
「スターテス殿、大変申し訳ないのですが、灯石を分けて戴けませんか」
「灯石を?…構わないが…買い忘れたのかね?」
「いえ。ですが…積み込むのを忘れたようで。申し訳ありません」
「ふむ…いずれにしろ、野営の為の準備に手抜かりがあったとは、いけませんな」
「…はい。面目次第もございません」
「しかしそうなると、灯石は使用を抑える必要がありますな。補充しようにも、この辺りには確か街も村もない。一番近い場所でも、明日中にたどり着くのは困難…そうですな?」
「はい、仰る通りです」
「ならば、明日の分は残さねばならん。…皆、聞いての通りだ。灯石は、本当に必要な場所にのみ使用するように」
フェザークは団員達に視線を向けると、そう告げた。
「マジかよ…街や村の外はただでさえ暗いのに、満足に灯石使えないとか…ありえねぇ」
「全くだわ。迷惑な話ね。準備に不備があるとか、信じられない」
「…リューイ、ミレット」
不満を口にしたリューイとミレットに、フェザークは叱責するような視線を向ける。
「…申し訳ない。迷惑をかける」
レイドは、団員達に向かって頭を下げた。
その日の夜は、ささやかな灯りだけが灯された。
手元や両隣の人物の姿がなんとか見えるくらいの場所で、食事をとる。
全員で丸く円になってはいるが、姿を見るのが困難な為か、会話は弾まない。
く、暗い……それに、空気が重い。
フィーは食事を口に運びながら、ちらりと両隣の人物の顔を見た。
両隣にはイシュマとユスティがいたが、どこか不満そうな表情をしているのが見えた。
「…やっぱり、明るいほうがいいなぁ」
思わずぽつりと呟くと、正面から息を飲む音がした。
場所から考えると、レイドのものだろう。
「…フィー」
「ご、ごめんなさい…」
フェザークからたしなめるように名前を呼ばれ、フィーは謝った。
すると。
「…キュイ~~~!!」
突然レンが遠吠えでもするかのように鳴き声を上げた。
「えっ、何!?どうしたのレン!?」
こんな鳴き声上げるの、初めてだ。
「何だ、どうした?…って!?」
「えっ!!」
レンの体から眩しい程の光が発せられ、辺りを照らす。
レンを中心に、直径三メートル程の場所が、真昼のように明るくなった。
「え?え?何これ?レンが……光ってる?」
「…魔獣の特殊能力だな。…これがレンの力か」
「凄いな…こりゃ、灯石いらずだ。これからは食事の時だけでも、レンに能力を発動してもらいたいもんだな」
「…レンの、特殊能力…」
レンは目映い程の光を放って、フィーを見上げている。
「フィー、褒めてやれ。きっとフィーがああ言ったから、レンは力を使ったんだ」
「あ…!」
イシュマに言われ、それに気づいたフィーは、慌てて持っていた器とフォークを置くと、レンの頭を撫でた。
「レン、ありがとう。とっても明るいよ。凄く助かる」
「キュイ!」
フィーがお礼を言うと、レンは嬉しそうに鳴いた。
その後は重い空気も払拭され、会話が飛び交い、フィーは楽しく夕飯を食べる事ができたのだった。