全体訓練を受け終えました。
翌日。
早朝訓練を終えたフィーは、部屋に戻るなりベッドの上に倒れこんだ。
以降、そのままピクリとも動かない。
「大丈夫?フィー?」
「もうすぐ朝食の時間だけど、食べれそうかしら?食事は体を作る上で重要だから、食べないというのは駄目だし、絶対に完食しなければならないのだけれど…」
「動くの厳しいようなら、手を貸すよ?」
微動だにしないフィーを心配して、クリム、ユスティ、ミレットがそう声をかけると、フィーは閉じていた目を少しだけ開けた。
「…大丈夫、です…。でも、時間ギリギリまで…もう少し、このままでいます…」
そう答えると、フィーは再び目を閉じた。
「そう、わかったわ。…頑張ったものね、フィー。時間になったらまた声をかけるから、それまでゆっくり休むといいわ」
「そうだね、頑張ったもんね。ゆっくりするといいよ」
「完走、したもんねぇ。私、正直、一般人が完走は無理だと思ってたんだけど…本当に、頑張ったよねフィー」
…一般人に、完走は無理…。
…うん、私もそう思う。
何しろ、超長距離マラソンだったし。
この宿舎前からスタートし、厩舎横を回り、剣技の訓練場横を回り、王宮の後ろを回り、使用人宿舎横を回り、図書館横を回り、迎賓館横を回り、広場前を回り、魔法の訓練場横を回り、宿舎前へと帰るコース。
もちろん、建物と建物の間は、距離感は様々だが、離れている。
走る前、団長さんから『限界だと思ったらそこでやめていい』って言われたし、走ってる最中、何度、もうリタイアしようと思った事か…。
でも順位づけからは外されてる上に、完走さえできないなんて…仮にも騎士団の一員になったのに、あまりにも情けないと思ったから…凄い時間はかかったけど、根性で、やりきりましたとも…。
私が完走するまで長い時間じっと待っていてくれて、完走した瞬間、大きな歓声と拍手で迎えてくれた全騎士の皆様、ありがとう…。
でも、もう、動けない…。
けど、もうすぐ朝食かぁ…食べなきゃ…動かなきゃ…。
お願い、もう少ししたら動いて、私の体………。
「…フィーちゃん?…眠った、ね。やっぱり」
「うん。…当然の結果だよね。本当に、よく頑張ったよ。フィー」
「出来れば起きるまで寝かせてあげたいけれど…。せめて時間まで、静かにしていましょう」
「「賛成」」
その数分後、ユスティ達に起こされるまで、フィーは寝息をたてて、夢の淵をさまよっていた。
重い体を引きずりながら起きると、イシュマを始め男性騎士達と、団長、副団長など、流星旅団の全員がフィーの様子を見に部屋を訪れ、フィーは、重い体とは正反対の軽い心で、皆と共に食堂へと向かったのだった。