キャンプ場に辿り着きました。
ガサガサガサ。
朔は草を掻き分けながら獣を追ってただ歩を進めていた。
最初足の甲あたりまでしかなかった草は、移動するうちにその高さを何度か変え、今は太ももの位置にあり、歩くたびにガサガサという音がする。
その草が獣の姿をほぼ覆い隠してしまい、朔は前方から聞こえる、獣が歩く際にたてる音と、わずかに見える獣の頭部を頼りに進んでいた。
「ふぅ…少し、休憩…」
朔は足の付け根に手を置いて上半身を曲げ、下を向いて荒くなった息を整えた。
こんなに歩いたのは、きっと小学校の遠足で登山した時以来だなぁ…。
朔は顔を上げ、横を向くと、遥か向こうに沈みかけている太陽が目に入る。
もうすぐ夜になる。
急がなくては。
「でも、あとどれくらい歩くんだろう…そもそも、どこへ向かっているのかな?」
朔は前方に見える獣の頭部を見た。
「ねぇ、あとどれくらいで目的地に着くの~?夜になる前に着ける~?」
聞いても返事など返って来ない事はわかっていたが、朔はこうして時折獣に話しかけていた。
長時間ずっと、目的地も所要時間もわからぬままただ無言で獣を追いかけ歩くという行為は、正直言って気が滅入ったからだ。
ーこの獣に着いていく事には不安も迷いもなかった。
襲ってきた別の獣から助けて貰った事実があるからかもしれないが、朔はこの獣からは何故か全く恐怖を感じなかった。
最初、朔はこの獣を見失う事を恐れ、必死でその後を追った。
しかし進むにつれ、朔が疲労を感じてくると少しずつその距離は開いていった。
このままでは見失うーーそう思った時、突然獣は立ち止まった。
朔はその隙に距離を詰め安堵したが、その後も一定の距離が空くと、獣は立ち止まった。
待っていてくれている。
そう確信してからは、朔は時折足を止め、遠慮なく小休止した。
「さて、休憩終わり。どこまで行くのかわからないけど、頑張って歩かなくちゃ」
朔が再び歩き出すと、前方の獣の頭部もまた、動き出した。
そうして歩き続け、陽が完全に落ちた頃。
暗くなり、悪くなった視界に、前方から、まあるい、小さな光が飛び込んできた。
「あ、明かりだ…!人がいるかも!」
ようやく辿り着いたんだ!
その事実にこれまでの疲れを忘れた朔は、一目散に光を目指して駆け出した。
そして光の元まで辿り着くと、そこにあったのは。
「…これって…テント…?」
上から、下に向かって一度三角に広がり、途中から真下に真っ直ぐ垂れ下がった白い布。
その中心には、ちょうど人が出入りできるくらいの広さに切れ目があり、その部分だけ頭上で布が紐でくくられている。
そんなテントらしきものが数個建っていた。
「…キャンプ場…なのかな?」
朔は少し腑に落ちない形状のテントを見ながら、人の姿を捜した。