宿舎に入りました。
大通りの凱旋パレードを馬で闊歩し、一行は王城の敷地内にある、騎士団宿舎に帰ってきた。
「全員集合!」
フェザークがそう号令をかけると、流星旅団のメンバーは即座にフェザークの前に集まり一列に並んで立った。
「えっ!?わ…あわわっ!」
その様子を見たフィーは、大慌てで一番端に並ぼうと駆け出す。
フィーが並ぶのを待って、フェザークは口を開いた。
「皆、今回の遠征と陛下の護衛、ご苦労だった。次に発つまでしっかり体を休めてくれ。次の出立は、四日後となる」
「四日後、ですか?」
「団長、出発日が決定しているという事は、次の目的地も決定しているんですね?」
「次は、どこへ行くのでしょうか?」
女性騎士達が次々に口を開き、フェザークに尋ねた。
「トゥイタギアだ。もう一度行く事になった」
「トゥイタギアに?」
「団長、何故もう一度?」
「新たな魔獣でも現れたのですか?」
今度は男性騎士達が尋ねた。
「そうではない。フィーの希望でな」
「…フィーの?」
イシュマががそう呟くと、全員の視線がフィーに集まった。
「あっ、えと、はい!…私、あの翠色の子を迎えに行きたくて。王様と団長さんにお願いしたんです。すみません皆さん、お願いします」
フィーはそう言って、ぺこりと頭を下げた。
「ああ、なるほど」
「そういう事ね。わかったわ」
「では皆、しかと準備をしておくように。解散。…クリム、ユスティ、ミレット。フィーの案内を頼む」
「はい、団長。承知しました」
「お任せ下さい」
「行きましょ、フィー!まずは宿舎を案内するわ」
「あっ、はい!よろしくお願いします」
クリム達がフィーを連れて宿舎の中へ向かうと、男性騎士達もすぐ後ろをついて来る。
「…あれ…皆さんも来るって事は、この宿舎、男女で分かれてたりは…」
「しないわね」
「騎士団宿舎だからな。さすがに部屋は別だが、隣の部屋は異性の部屋、なんて事は普通にあるぞ」
「と、隣が…そうなんですね」
念のため夜は鍵をしっかりかけなきゃ!
わずかな不安が沸き上がり、フィーは固く決意した。
そんなフィーを見て、女性騎士達が自信たっぷりに口を開いた。
「大丈夫よ、フィー。私達同じ部屋だから。一部屋が四人用なの」
「もし不埒な輩が来たら、私達が撃退するから、安心して」
「極たまに悪酔いした愚か者が乱入するからね~。そんな時は遠慮なく全員でボコって上役に引き渡しの刑よ」
「えっ、そ、そうなんですか…た、頼りにしてます…」
「「「任せて!」」」
「はは、うちの女性陣は男顔負けだからな~。セキュリティはバッチリだぞ、フィー」
「酔ってるとはいえ、うちの女性陣の部屋に乱入する奴は度胸あるよな」
「…確かにな。…悪い、俺先に行く」
そう言うと、イシュマは早足で通路を歩き、階段へと消えた。
「へ、おい、イシュマ?」
「どうしたんだ、あいつ?」
「何か急用じゃない?久し振りの帰郷だし」
「かもね。今回の遠征、準備期間一日だったし、用を後日に回したとか」
「ああ、なるほど。…って、それ俺もだ!やば、俺も行くな!」
そう言うとリューイが慌てて駆け出して行った。
「やれやれ、じゃあ俺も行く。またな四人とも」
リューイの後をヴィルがゆっくり追いかけて行った。
「慌ただしいわね。それじゃあフィー。部屋はこっちよ」
「あ、はい。あの、同室という事ですし、本当に、色々、よろしくお願いします」
フィーは改めてぺこりと頭を下げた。