王都に着きました。
二日後、一行はソドウィザムの王都、ソドマージに辿り着いた。
「ふ~、帰ってきたぜ~!」
「久し振りの帰郷って感じよね~!」
「はは、実際離れてたのは数日なのにな」
「帰っては発っての繰り返しだからねぇ、私達。仕方ないわよ」
「今回は何日王都にいれるのかしらね」
街の外と中を区切る門をくぐり抜けるなり、流星旅団のメンバーは次々と嬉しそうに声を上げた。
その様子をどこか不思議そうに見て、フィーは背後にいるイシュマを振り返る。
フィーは今日もイシュマの馬に同乗させてもらっていた。
「あの、イシュマさん。流星旅団の一員にって話をされた時、王様から旅生活になるって聞いてはいるんですが…そんなにすぐ、また発つことになるんですか?」
「ああ、そうだな。強い魔獣が出たとか、厄介な盗賊団が現れたとか、どこかからそういった事で応援要請が既に入ってたら、食料や備品の補充だけ急いでして、帰ったその日のうちに発つって事もある」
「え、その日のうちにですか?…あの、や、休みとかは…?」
「次に発つまでが休みだ。その間も、必要な物の補充は各自でするから…王都に数日いれると、体を休める暇も取れて助かるんだけどな」
次に発つまでが休み。
つまり、その日のうちに発つ時は休みなし、って事なんだ…。
しかも必要な物の補充は各自でって事は、その為に外出するから、二日以上休みがないと体をゆっくり休める暇がないって事で…。
「あの、イシュマさん?王都に数日いれると助かる、って、数日いれない事も多々あるんですか?」
「いや。上もちゃんと考えて、次に発つまで、なるべく数日は空けてくれるさ。けど時々、緊急とされる要請がある。そうすると…」
「…その日の、うちに?」
「そういう事だ。だから、時々さ。そんなに心配するほど休みがない訳じゃない」
「そ、そうなんですか。良かった」
フィーがほっと胸を撫で下ろすと、横にいるミレットが口を開いた。
「ところが。その時々の要請が何回か重なって、ひと月全く休めず旅の空って事も、あるんだよねえ」
「え!?」
ひと月全く!?
「…ミレット、新人を脅かすなよ。重なるのなんて極稀だろうに」
イシュマは横にいるミレットを軽く睨んだ。
「極稀でも、実際あることでしょ?新人への説明は正確に行ったほうがいいと思うけど?」
「そりゃ、そうだろうけど。…まあいい。フィー、とにかくそういう事だ。休める時にしっかり休めよ」
「は、はい。わかりました」
フィーはしっかりと頷いた。
「あっ。あの、それでですね、イシュマさん。私魔法を」
習いたい、とフィーは言おうとしたが、突然前方から大きな歓声が上がり、その声は書き消された。
な、何!?
フィーが驚いて前を向くと、空からひらひらと紙吹雪が舞っているのが目に入った。
上を見ると、2階建て以上の建物の窓が開いていて、そこから人が紙吹雪を蒔いているのが見える。
大通りの脇はたくさんの人がひしめいていて、歓声をあげている。
あ…これ、いわゆる凱旋パレードだ。
凄い人の数…。
フィーが呆気にとられながらその様子を見ていると、イシュマはフィーの耳元に口を寄せた。
「フィー、姿勢を正して胸をはれ。俺達もすぐあの中を進むからな」
「へ!?あ、あの中を!?」
「やあね、堂々としていればいいのよ」
フィーは勢いよくイシュマを振り返り聞き返すと、ミレットが苦笑してそう言った。
ど、堂々と…。
「フィーちゃん。顔。固いわよ?笑顔を作って、あと姿勢。まっすぐにね?」
「は、はい…っ」
フィーは姿勢を正し笑顔を作った。
…はずだった。
かろうじて口角が上がっただけの表情で固まったフィーに、そばにいた流星旅団のメンバーは苦笑し、初めてだしまあ及第点、という評価をつけたのだった。