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平凡娘と獣と騎士と。  作者: 葉月ナツメ
ソドウィザムの騎士
35/78

改名しました。

フェザークが部屋を訪れると、セイヴィリムは朔が団員となる事を承諾した旨を伝えた。

「そうですか…承諾してくれましたか」

ほっとしたようにそう言うと、フェザークは朔に向き直った。

「お嬢さん、ありがとう。改めて自己紹介しよう。私は流星旅団団長、フェザーク・スターテスだ。これからよろしく頼む」

「あっ、はい!こちらこそよろしくお願いします!私は、日向朔……朔、日向です!」

朔は勢いよく頭を下げた。

「サク・ヒムカイさんか。…それが、貴女の世界の名なのだな。やはり少々、こちらとは違うようだ。変わっている、という印象が否めないな」

「あ…やっぱり、そうですよね。こっちの名前とは、ちょっと、違いますね」

朔がそう同意すると、セイヴィリムが口を開く。

「ふむ。なら、サクさん。この世界の名をもってみてはどうかな?」

「え?」

「過去に何人か、そうした人物がいたようだし。こちらの名をもてば、よりこの世界の一員となったという実感がするかもしれん」

「この世界の…名前」

「うん。貴女が今のままがいいと言うなら、それで構わないが、どうかな?」

「…それなら…」

朔は一瞬だけ考えると、再び口を開いた。

「フィー・ストロベルで、どうでしょうか?」

「…フィー・ストロベル?」

「…ずいぶんと、すんなり思いついたものだな?」

セイヴィリムとフェザークは驚き、目を丸くした。

「あ、はい。私、この名前を、RPG…えっと、架空の冒険物語があって、その物語を冒険して遊べるというものがあるんです。 そこで、私がよく使ってる名前なんです。だから」

「架空の、冒険物語?…よくはわからないが、貴女が親しんでいる名前なのだな?」

「ならば、それがいいかもしれませんね、陛下」

「ふむ、そうだな。フィー・ストロベル、か。では」

セイヴィリムは一度言葉を切り、真顔で告げた。

「フィー・ストロベル。流星旅団団員としての活躍を期待しているよ」

「…は、はい!頑張ります!」

朔は姿勢を正して答えた。

活躍。

…あれ?活躍って…何すればいいの? 

朔はオレンジ色の獣を見た。

…私は、この子みたいな獣と会った時、調査をする、その為に団員になった。

でも…調査って、何をどうするんだろう?

……………。

「あの…すみません。聞いても、いいですか?この子達の調査って、どういう事をするんでしょう?私でもできるでしょうか?」

朔は不安げに尋ねた。

「うん?…調査をかい?」

「いや、お嬢さん…フィーさんがする必要はない。調査は我々がする」

「え?」

朔は目を見開いた。

「フィーさんは魔獣と交流をはかってくれればいい。その魔獣のように、連れ帰り、その後も行動を共にできると助かる」

「え…」

それって、つまり…この子達の、世話係?

魔獣の世話係要員として、世話を頑張る事が、王様の言う、私の活躍?

…ま、まあ、いっか。

それなら、私にもできるしね…うん。

朔は複雑な思いを残しながらも、半ば無理やり自分を納得させた。

「さて、では他の団員達に改めて引き合わせよう。一緒に来なさい。陛下、失礼致します」

「あ、はい。失礼します、王様」

フェザークは騎士の礼を取り、退室しようと扉へ向かった。

朔もぺこりと頭を下げ、フェザークの後を追う。

「ああ、待てスターテス。サクさん…いや、フィーさん。何か望みはないかな?」

「はい?」

望み?

「いや、安穏な生活を送らせてあげられないからな。せめて何か、望みがあれば叶えようと思うのだが、何かないかな?」

「えっ、いえ、そんな!とんでもないで…」

あ、でも。

朔は、とんでもないです、と言おうとしたが、途中である事を思い立ち、口を閉じる。

そして

「…あの。何でも、いいんですか?」

そう、再び遠慮がちに口を開いた。

「うん、もちろんだ」

「なら…私、魔法を覚えたいです」

「魔法を?」

「はい」

「フィーさん。魔法を覚えたいなどと…貴女は戦う必要はないのだぞ?危険な事は我々騎士がする。貴女は」

「あっ、いえ!戦う為の魔法じゃないんです。傷を癒したりとか、こう、身を守る為に土の壁を作ったりとか…そういう魔法も、あります、よね?」

朔は身振り手振りを交え、説明する。

「…回復魔法と、支援魔法の事か?」

「あ、はい!それです!」

朔は大きく頷いた。

魔獣の世話係になる事は、別にいい。

けど、将来、魔獣の調査がもし終わってしまったら、流星旅団にとっての私の存在価値はなくなってしまう。

その時、私は流星旅団にそのまま残れるかわからない。

もしかしたら、また新しい場所で新しい生活を始めなきゃならないかもしれない。

…そんなのは、嫌だ。

なら他に、存在価値を作っておけばいい。

戦うのは怖いし、とてもできない。

けど、回復や支援要員になら、なんとかなれるはず!

「お願いします、教えて下さい!私、頑張って覚えますから!」

「ふむ。約束の地での調査の時、貴女の魔力を見たが…決して多くはないが、少なくもない。スターテス」

「…かしこまりました。フィーさん、少しずつ教えよう」

「あ、ありがとうございます!頑張ります!」

やった!

朔は小さくガッツポーズをとった。

「フィーさん、他には、望みは?」

「あ、はい!あとひとつだけ。トゥイタギアにもう一度行きたいんです。トゥイタギアにいる、あの翠色の子を迎えに。あの子は私の恩人です。退治される危険から、守りたいから」

「ふむ。報告にあった魔獣だね?いいだろう。スターテス、一度王都に戻り、準備を整え、出発するように」

「は」

「ありがとうございます!…望みは、それだけです」

「そうか。では、流星旅団の団員達に、改めて挨拶するといいだろう」

「はい!」

「では失礼致します」

そう言うと、朔とフェザークは部屋をあとにした。

朔の新しい名前、フィー・ストロベル。

フィーは、ファンタジー世界にありそうなものを。

ストロベルは……苺の美味しい季節になりました。←


今後、主人公の名前は、日向朔じゃなく、フィー・ストロベルで書いていきます。

ご了承下さいませ。

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