表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡娘と獣と騎士と。  作者: 葉月ナツメ
異世界の来訪者
30/78

お別れしました。

朔が円形の部屋を出ると、扉の近くにレイドが立っていた。

「ああ、お嬢さん。待っていたよ。話は終わったのかい?」

レイドは朔に歩み寄った。

「はい、終わりました」

そう言うと、朔は軽く周囲を見回した。

「そうか。…それで…どの国に」

「レイドさん、イシュマさんはどこです?」

レイドの言葉を遮って、朔は姿の見えないイシュマの所在を尋ねた。

レイドは一瞬、ピクリと顔をひきつらせる。

「…彼は、ソドウィザムの方々が使用している建物に戻って行ったよ。お嬢さんの様子を見に来ただけだからと」

「ソドウィザムの方々が使用?…なら、私もそっちに移ったほうがいいのかな…?」

朔はわずかに首を傾げて呟いた。

「は?…移る、って…どうしてだい?お嬢さん?」

レイドは思わず尋ねたが、頭の片隅で、その理由に気がついていた。

「え?だって、私、ソドウィザムに行く事になりましたし」

「…………」

予想通りの返事が返ってきて、レイドはしばし沈黙した。

ギュッと手を握りしめる。

「レイドさん、ソドウィザムの人達が使ってる建物って、どこか知ってますか?」

朔はレイドの様子に気づかず、尋ねた。

「…移る、必要はないよ。お嬢さん」

レイドは努めて穏やかに言葉を返した。

「え?でも」

「ソドウィザムからは、明日の朝迎えが来るだろう。だから、お嬢さんとは明日の朝でお別れだ。…別れを惜しむ時間を、私にくれないか」

レイドは寂しげに微笑んだ。

「あ…。…そう、ですね。皆さんにもちゃんと挨拶しないと駄目ですよね。わかりました」

朔は頷いて言った。

「…皆さん、に?」

「はい」

「…そう、か。…そうだな。皆にも、頼む」

「はい。…特に、レイドさんに、ですけど」

「え?」

「最初は本当に散々でしたけど、今では結構感謝してます。これまで私を保護してくれてた事、この世界について色々教えてくれた事、本当にありがとうございました」

そう言って、朔は頭を下げた。

「…お嬢さん…」

レイドの胸に温かいものが満ちていく。

「あ。…そういえば、私の名前、知りたがってましたよね。…私、日向朔っていいます。…この世界だと、朔、日向かな?もう会えないかもですけど、良かったら覚えていて下さいね」

「…サク・ヒムカイ、か。…忘れないよ。絶対に。…教えてくれて、ありがとう」

朔とレイドはお互いに微笑み合い、朔の部屋へと向かって並んで歩いて行った。


翌日、朔はレイド達が見送る中、迎えに来たイシュマやソドウィザムの騎士達と共に、約束の地を後にした。

レイド達第二小隊、とりあえず退場です。

最後にほんのちょっとだけ報われたレイド。

良かったね(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ