遠出のようです。
それから、朔は、この世界の物品や食べ物、植物等の名称や形状、特徴を実物を見ながら学ぶ為という事で、毎日、午後はレイド達と街に出かけた。
午前中はレイド達が剣や魔法の訓練を行う為、朔はレイドから子供向けの教本を貰い、この世界の文字を覚える為、一人で黙々と書き取りをする事が日課になった。
そんな生活が何日か続いたある日。
「ああ、お嬢さん。今日の予定だが、朝から出かける事になった」
いつものように支部の食堂でレイド達と朝食を食べ終えた後、朔が席を立とうとすると、そうレイドから告げられる。
「え、朝から街へ?今日は訓練はいいんですか?」
訓練って、毎日するものなんじゃないの?
不思議に思った朔はそう聞き返した。
するとレイドは首を横に振る。
「いいや、今日行くのは街じゃない。街の外だ。訓練も兼ねてる。…ソドウィザムの騎士が来たからね。周辺の魔獣退治に行くんだよ」
「ソドウィザムの騎士?魔獣退治…?」
ソドウィザム。
その名はこの間、地図を見ながらレイドさんに教わった気がする。
たしか……。
「…この国、トゥイタギアから北にある国で、結構小国。でも騎士団の強さは世界一を誇ってる、剣と魔法の国。えっと、特に輸出するような特産品のない国で、代わりにたまに各国に騎士団を派遣して、その国が手を焼いてる荒事に対処して礼金を得て国益に当ててる…だっけ?」
「正解だ」
レイドは満足げに頷いた。
「そのソドウィザムの騎士団が、今朝早くやって来た。だから共に魔獣退治に行く事になった。周辺をぐるっと回るから、2、3日はかかる。急いで準備をして来てくれ。30分後、玄関前に集合だ」
魔獣退治って何だろう?
ここはファンタジー世界だし、モンスターの事かな?
騎士の、モンスター退治…。
「…あの、それって、私も行くんです?どうしても?」
騎士でもない、戦えない私が行く必要性を感じないんですが。
というか、そんな危ないお出かけに参加したくないんですが。
朔が行きたくないオーラを隠さず聞き返すと、レイドは首を振った。
「お嬢さんの同行は決定だ。…同行して、魔獣の存在を、その姿を見ておいたほうがいい。この世界で、生きていく為に」
「…この世界で生きていく為に…?…わかりました、準備します」
正直まだ行きたくないけど、そう言われたら仕方ない。
朔は渋々頷いた。