ほう・れん・そう
朔がボディチェックを受けた部屋には、現在、六人の騎士が揃っていた。
赤、青、黄色にオレンジの毛の男性騎士達四人と、金髪の女性騎士達二人である。
気を失った朔は寝台のある別室に移されていた。
金髪の女性騎士達は椅子から立つと、その場に集まった全員を見渡して口を開いた。
「では、あの異世界人に対する調査の報告を始めます。…結論から言いますと、彼女は無害な一般人ですね」
「武器の類いは一切所持していませんでした。それに、直前まで気配を消し、見舞う瞬間に殺気と共に放った手刀に、全く対処できませんでした。…少なからず戦闘訓練を受けた者であるなら、そんな事は考えられません。多少は反応するはずです」
「…そうか。恐らくそうだろうとは思っていたが、やはり一般人か」
報告を受けて、赤毛の男性は安堵の溜め息をついた。
「はい、間違いなく。…けれど、これからの事はどうなさるんです小隊長?遠慮は無用との指示でしたから、手刀、全くの手加減なしでやりましたよ?」
「縄で縛り、衣服を剥ぎ、手加減なしの手刀。異世界人は要警戒対象ですが、それはあくまでこちらの事情。不可思議な現象によって迷い込んでしまっただけの彼女には関係のない事です。…どう謝罪するのですか?」
女性騎士二人の言葉に、その場の全員が無言になる。
「…その事だが、我が国で行われた過去の謝罪の例が、三つあってな。お前達にどれかを選んで貰う事になる」
赤毛の男性は膝の上で手を組み、目を閉じて言った。
「…三つ、ですか?それはどのような…?」
どこか重苦しい空気を漂わせ始めた赤毛の男性を見て、オレンジの毛の男性は恐る恐る尋ねた。
赤毛の男性は目を開けると、オレンジの毛の男性をちらりと見た。
そして視線を自分の組んだ手に移して告げた。
「…まずひとつ目。全員で、彼女が許してくれるまで謝り続ける。これが一番楽だが、住まう国が決定するまでに許して貰えた事はあまりないらしい。その場合、住まう国の騎士に代わりに謝罪し続けて貰う事になり、その国の騎士に借りを作る事になる」
「…他国の騎士に、借り、ですか?」
青い毛の男性が眉間に皺を寄せて呟いた。
「…次にふたつ目。住まう国が決定するまで、毎日全員で彼女を豪勢にもてなす。その際の費用は全員で負担する。日々の仕事は、夜に睡眠時間を削って片付ける事になるな」
「え、日々の、通常業務まで睡眠時間を削ってですか?」
「そんな…遠征や特別警護で、ただでさえ睡眠時間が少ないのに、通常業務までなんて…。騎士となる決意をした時覚悟はしましたが、寝不足で肌が荒れるのは、やはり女としては気になるところなのに…」
女性騎士二人は顔を見合せた。
「…最後に三つ目。彼女の言葉に絶対服従の人身御供を捧げる。散財をさせられたならその費用はやはり全員で均等に負担だ。人身御供になった者の仕事も然りだ」
「人身御供…」
「絶対服従…ですか」
オレンジと黄色の毛の男性は微妙な表情を浮かべる。
「以上三つが謝罪方法の選択肢となる。さて…どうする?」
赤毛の男性は全員を見回して、問うた。