調査されました。
「あのぅ…まだですか?」
朔は胸の前で手を握り、恥ずかしさに耐えていた。
現在、一糸もまとわず、生まれたままの状態でその場に立っていた為である。
馬車を降りるなり、朔は玄関先で待ち構えていた金髪の女性騎士二人に今いる部屋に連れて来られた。
そして部屋の中に入ると、問答無用とばかりに着ている物を全て剥ぎ取られたのである。
朔が何も物を隠せない状態になると、女性騎士達は朔の服を入念に調べ始めた。
その為朔は、女性騎士達の調べが終わるまでひたすら待っていたが、あまりにも時間をかけて丁寧に調べているので、さすがに待ちきれず、声をかけたのだった。
すると女性騎士達は服を机の上に置いた。
「そうね。もういいかしら。特におかしな物はないようだし」
「服、返すわね。縄も解いてあげる」
「あ、ありがとうございます!」
やっと容疑が晴れた!
手首の縄を解いて貰いながら、朔は安堵と嬉しさから満面の笑みを浮かべた。
縄が外されると、すぐに服に手を伸ばして身に纏う。
「小隊長を呼んでくるわ。少し待っていて」
朔が元通りに服を着終わるのを確認し、女性騎士の一人が部屋を出ていった。
部屋に残った女性騎士は、朔を見つめ、少し眉を下げて微笑んだ。
「色々、ごめんなさいね。異世界に来たばかりで戸惑いの最中でしょうに、こんな真似して。でもこちらも警戒しないわけにはいかないの。聞いたかしら?過去に、大怪我を負った騎士の話。あれは他国の騎士だったけれど、もし自国の仲間がそんな事になったら…とても見過ごせないもの」
「あ…はい。その話なら、聞きました。だから理解はしています。…ただ、ちょっと酷いとは、やっぱり思いましたけど」
朔は女性騎士を見つめ返して苦笑する。
「そう。…そうよね。無害な一般人からしたら酷い話だわ。何もしていないのに、縄で縛った挙げ句、衣服を全て剥いで調べられるんだもの。その上…本当に、ごめんなさい」
「その上?まだーー」
まだ何かあるんですか?
そう聞こうとした朔だったが、それを問う前に、突如、首筋に鋭い痛みを感じた。
急に目の前が暗くなり、朔はその場に崩れ落ちた。
「あら、嫌だ。こんなに簡単に攻撃を許すなんて…やっぱり紛れもなく一般人よこの子。疑う余地はないわ」
「そのようね。貴女が部屋を出て行くふりをしただけな事もまるで気づいていなかったし…これで調査は終了ね」
薄れ行く意識の中、朔はそんな会話を聞いた気がした。