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エイボンのブックス!  作者: 真実の王っぽいワーグナーっぽいの
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ブラックメイドの章

(遅くなりました)

「へぇ……ホントにノーデンスが出ましたの?」

「そうなんですよ……なにやらぼくをクトゥルー? の娘だと勘違いされたらしくて……」

 放課後、全身ボロボロながらも、気力を振り絞って図書室のいつもの部屋にたどり着いた……そして倒れ込むように椅子に座り、ぼくの様子を心配するイホウンデーさんに今日の経緯を一部のぞき説明した……お弁当関連は流石に隠しておくべきだろうからね。

「まあ……あのノーデンスなら仕方ないですの……前にワタクシをツァトゥグァと勘違いして襲ったくらいのドジっ子ですのよ」

「あー……あのノーデンスさんならやりかねませんね……」

 あの、多分だけど児戯と前戯を間違えて使っているようなノーデンスさんならやりかねない、確かにそうとしか思えなかった。というか生徒会長のニャルラトホテプに対抗して風紀委員作るのは、正直どうかと思う。

「そういえば、イホウンデーさんは旧支配者側と旧神側、どっち側なんですか? ツァトゥグァさんは旧支配者側みたいなんですけど」

「………………そもそも出番がありませんでしたの」

「……何のですか?」

「旧支配者と旧神の戦い……そんな戦いが起こっている事に気付いたら終わっていましたの……」

 この空気はどうすればいいんだろうね……

「…………まあ……そんな事もありますよ……徳川秀忠という昔の将軍だって天下分け目の関ヶ原の戦いに遅刻したんですから……」

「そんな下手なフォローはいらないんですの! ……所詮あなたのような人間に忘れ去られる悲しみなんて分からないんですの……」

「…………まあ……確かにぼくには誰かに忘れ去られる悲しみなんて分かりませんよ……でも、誰かが一緒にいて欲しいのに誰もいないという悲しみは……その……少しだけですけど……分かりますよ……」

 親が単身赴任で叔母に預けられていた上、その叔母が居ないときが多々あったから、子供の頃は結構寂しがり屋だった。だから、せめて友達といる間は明るくいようと考えて、何だかんだでシャイニーな状態がデフォルトになった。そして、その時にはもうぼくは寂しがり屋じゃなくなっていた。だって、その頃には友達の数がエクストラを含む遊戯王のデッキの枚数を上回るくらいにいたから……

「アンタの昔話はさておき、アンタからいつもに増して水の邪神の匂いがするのはなんでなのかしら?」

「え……ああ! ……何ででしょうね?」

 多分クラスの男子の中に隠れ邪神が居たんだと思う。なんだかんだて邪神結構いるみたいだしね、ウチの学校……生徒会長も自称風紀委員長も、うちのクラスの委員長さん、ツァトゥグァさんも。

「まあいいですの……でも、ノーデンスに目を付けられたからには覚悟するといいんですの……あの子は思い込みが激しいくせして証拠第一ですの……ノーデンスにずっとストーキングされるくらいは覚悟したほうがいいですのよ」

 見られながらというのは少し興奮するけど、ずっと見られるのはちょっと……あ、でも、普通は見られないハズの状態も相手ノーデンスさんに見られるワケか…………むふ

「…………まあ、酷いようでしたらまた相談すればいいですのよ……相談に乗るかも知れないんですのよ……ツァトゥグァが」

 結局イホウンデーさんもぼくの事に関してはツァトゥグァさん頼りみたいだ。



 朝……どうりで視線を感じないと思ったら、どうやら最初から学校で仕掛けるつもりだったようだ……

「そこの少年止まりなさい……」

 校門にて、ノーデンスさんがお供の黒尽くめでサングラスを掛けたスラッとした(特に胸が)体型の少女と共にぼくを拘束しようと待ちかまえていた……丁寧にも左腕に腕章を着けて……

「あなた、男子なのに髪が長すぎます……校則では『男子は肩まで、女子は腰までとする』と書いてあるじゃないですか」

 そう言って生徒手帳のその部分を突きつけてきたのだが、ちょっとおかしい……ちょっとというか二重どころか根本的なところからしておかしい……

 確かにぼくの髪は長いけど、流石にギリギリ肩にはかかっていない(よう見えるようにしてある)し……まあ、これはともかくとして、ノーデンスさんの方は腰よりも少しだけ……百人いれば60人がアウト判定を下すくらいに長い。というか根本的に校則が緩すぎる。

「…………その髪を解けば肩に届くじゃないですか」

「その言葉、そっくりそのままあなたに返しますよ……白すぎ零さん」

「ぐっ……」

「仕方がないじゃないですか、真げ……白崎様……校則は校則です」

 凄い正論ですよこの付き人さん……正論のハズなのにノーデンスさんが殴ってろうかと拳を握りしめてるんですけど……

「では、髪の長さを指摘しているのに髪が長すぎてお前が言うなとツッコみたくなるダメな風紀委員長に代わって、この風紀委員副委員長、黒鳥鳴が一般生徒永本ユウに命じます……」

「鳴、後で主のペットのシャンタク鳥を我の眷属と遊ばすぞ?」

「この風紀委員副委員、黒鳥鳴が命じます……今すぐ」

「聞け」

「今すぐに生徒指導室に来なさい」

嫌ですイエスマイロード

 あれ、今無意識に言いたいこととは全く真逆の事をいわされた気がしたけど……気のせいだよね、うん……だってぼく、プチSもプチMもイケる派だからね……


 ……あれ、ぼく今どこで何をやっているんだろうか……記憶が追いつかない…………そうか、全て思い出した……確かぼくが生徒指導室に連行されて、そこでアイスティーを飲まされて眠らされ……あれ、どういう事だろ? この後の記憶がオフコースな位に朧気にしか……

 足元……うつ伏せだから顔元? まあ、床を見れば……縞瑪瑙? まあ、だいたいそんな感じの素材で出来ていた。とりあえずここが絶対に生徒指導室じゃないことと、多分学校じゃないことだけは確認できた。それにしてもどこだろうか、ここは……?

「あら、やっと目が覚めたのね……」

「ここ、は……?」

「口の聞き方に気をつけなさい、下僕……あなたは偉大なる黒き奉仕者ブラックメイドの前にいるのよ……分かったら、その口で戯れ言を喚く前に偉大なるブラックメイド様とつけなさい!」

 声の方を見ると、メイド服と女王様ファッションを混ぜたようなカオス……面妖な衣装に身を包んだ鳴さんがいた……

 それはそうと、なんかの映画で聞いたことあるような台詞だね……まったく……ワケが分からないよ

「偉大なるブラックメイド様! ぼくはあなたみたいな人の言うことは絶対に聞きません! とりあえず3回まわってワンと言えばいいんですね!」

「……あなた、ちゃんと付けているのに今更何を言うのかしら?」

 ……違うんですよ?ぼくは別に踏まれたいなんて思って……

「悪い下僕にはお仕置きが必要ね……」

「偉大なるブラックメイド様! ぼくは足で踏まれたら心に一生治らない深い傷を負ってしまいそうなのでこれだけはやめてください! ぼく、何でもしますから!」

「ん? 今……なんでもするって……言ったわよねぇ?」

 ふぉぉっ! ぼくを見下す視線が堪らないよ! 別にマゾっ気はないのに興奮してきちゃったよ~……別にマゾっ気はないんだよ?


「今度は強すぎるのよ! このダメメイド!」

「すいませんブラックメイドさまぁ~」

 いまのぼくはおおきなおふろでブラックメイドさまにメイド服でごほうししております~ぐたいてきにはブラックメイドさまのおせなかをあらわせていただいておりますぅ~

 ブラックメイドさまはすこしでもちからかげんがつよかったりよわかったりするとすぐにおこってせっけんをなげられますぅ~

 でもぼくはぜったいにくじけたりなんかしませんよぉ~だってぼくにはブラックメイドさまにごほうしさせていただくというたいせつなしめいが……あれ?

「あの~ブラックメイドさまぁ~」

「喋るならせめて手を動かしなさい……で、何よ」

「ひとつおききしたいのですがぁ~のーでんすさんはいったいどこに行かれたのですかぁ~?」

 ふとここにきたときからのーでんすさんのすがたがみえないのをおもいだしました~くるまえのきおくはもうないにひとしいんですけど、たまたまおぼえていましたよぉ~

「…………さぁて、ノーデンスって誰の事かしらね?」

「とぼけたってむだむだむだむだですよぉ~?」

 そういいながら、ぼくはブラックメイドさまのへいたんなおむねにてをふれさせていただきましたぁ~もちろんきょかはとっていませんけどね~フヒヒ

「めめめ、メイドの分際で……っ! 私の胸を……!」

「どうしたんですかぁ~? ブラックメイド様ぁ~嫌ならふりほどいたり石鹸をなげたりすればいいはずじゃないですかぁ~なんでぼくにされるがままになっているんですぅ~?」

「ぁっ……」

「ほらほらぁ~ブラックメイド様も気持ちよくなりましょうよぉ~……いたっ!」

 ブラックメイド様はぼくの脳天にこの上ないくらいに力を込めたチョップを振り下ろされた……痛みでほぼ正気を取り戻スぐらいに強烈な一撃を……

「主に逆らうダメなメイドにはお仕置きが必要ね……今度は何がいいかしら……食屍鬼に生きたまま骨ごと喰われたい? それとも、意識を残したまま永遠に踊り続けるキノコに姿を変えられたいかしら? それとも……リリムに何もかもを絞り取られ、この地で朽ち果てたいのかしら?」

「……ぼく……は……」

 ダメだ……またぼくの意思が希薄になってきタ……多分ブラックメイドさんがそういう風になる何かをやっているんだろうケど、ぼくにはどうしようもない……そう、ぼく1人でハどうしようも……

「やはりそういう事だったか……ブラックメイドよ……!」

 ずいぶんと離れた所にある扉から、ノーデンスさんが入ってきた……ザん念ながらバスタオルを体に巻いテ……

「ノーデンスさんが裸じゃないなんて失望しました、ブラックメイド様の下僕になります」

「あら……なんで早くも私の企みに気付いたのかしら?」

 ぼくの言う言葉を無視して、ブラックメイドさんがノーデンスさんを名状しがたキ恐ろしさを孕んだ瞳で睨みつけた……

「妙だと思ったのは地球の神々がおる城に着いた時……皆何者かに眠らされていたのを見た時……地球の神々は一様に鈍器のようなもので殴られたと証言しておったのだ……しかも、殴られた事に気付かなかった者を除けば全員、気絶直前に釘抜きの様なモノが視界の隅に入ったといっておった! この時点で貴様ぐらいにしか出来ない犯行だと悟ったのだ!」

「あらあら、ノーデンス殿にしては推理がお粗末過ぎね……まず第一に、この幻夢境ドリームランド最深部にはその気になれば誰でも、侵入する事が出来るわ……まあ、私は自身に関わる事はまどろっこしいのが大嫌いなの……だから面倒だからこのあとのダメ出しも反論もなし……ちなみに地球の神々を気絶させた理由を語ろうかしら……あなた以外には邪魔されたくなかったからよ……この子をイジメる事の邪魔をねぇ……」

 さっきまでは艶めかしいとしか思ってイなかった瞳が急に恐ろしく……! いぢメます?

「ならば貴様、何故に我をおびき寄せるような真似を」

「特に理由なんて無いわよ……強いて言えば、この子が壊れてただ私にすがりつくだけの姿をあなたに見せて、あなたの怒りを試してみたかっただけよ……なんの力を持たない人間を守るべきあなたの目の前で、守るべき人間の心をぶっ壊したら少し面白いかと思っただけよ……でも、私にとっては残念ながら、さっきまで私に壊れたようにすがりつくだけの動物に成り下がりかけていたのにもう治ったみたいよ……」

 「この子、何者なのかしらね」と呟ク。そんナブラックメイドさんを見テ、ノーデンスさんがナニやら激昂シタ……

「ふざけるなブラックメイド! 貴様、たったそれだけのために此奴を攫い……」

「だってそれが黒き奉仕者ブラックメイド……いえ、ニャルラトホテプよ? でも、あなたがここに来てしまったからには、最初の作戦を続けることは不可能ねぇ」

「……最初の作戦……貴様は一体何を……?」

「……下僕……やっておしまい」

「了解でスぅ~ブラックメイドさマぁ~」

 ブラックメイドさまのアイずでボくはゆだンしていたノーデンスさんをおしたおシましタぁ~

「ぁっ……ブラックメイド! 貴様、やはり此奴の心を」

「壊して操り人形にした? そんな面倒な事しなくても、その子を洗脳すれば簡単な事だったわよ……さあ、ダメメイド……そいつをめちゃくちゃにしてやりなさい!」

「はぁイっ! ブラックメイドさまぁ!」

 おシたおしたノーデんスさんにまずハごういンにキスをスることにしましタぁごうイんにしたヲいれてくちのナかをめちゃクちゃにかきまわしてヤりましたぁ~

「さあ、ダメメイド……次にあなたがやるべきことは……分かっているわよねぇ?」

「らぁさぁ! ぼくのぶらっくれいらんさーヲノーデンスさんのぶらっくほぉるニしゃとレばいいんですよネぇ!」

「…………その通りよ(適当)……ダメメイド……分かったらさっさとメチャクチャにしてやりなさい!」

「了解デスぅ!」

「や、やめろ……それ以上は……」

 みうごキのとレないノーデンスさんがなにかイっているけどぼくハブラックメイドさまのめいれイをじっこうシないとイけないからとりアっていられないンですヨねぇ

「や……やめ……」

「さア……ぼくトいっショにオチマしょうよ……ノーデンスさぁン……」

 まずテハジメにノーデンスさんノそうキュウにてヲノバしタしゅンカン、ヨクジョウのとびラがヒラかれて、ヒサシぶりのカオをみタ…………

「遅くなったけど大丈夫か? ユウ」



 一応大丈夫かと聞いてみたけど、バスタオル姿のノーデンスにメイド服で襲いかかっているところを見る限り、根本的に頭のほうが手遅れだったようだ……まあ、クトゥルーさんにテレパシーで教わった緊急洗脳解除法、リコントラクトマインドを使えば洗脳の方は大丈夫だろうから、とりあえずはユウを止めることに専念すべきだろう。

 いくらあいつでも親友にアイアンクローをされるのは嫌がるだろうし。

 というか、幻夢境の神々の城で黒いメイド服とは、かなり嫌な予感しかしないぞ、ユウを操ってる相手……

「えぇい、ダメメイド! あの侵入者を排除しなさい!」

「了解デスぅ~ぶらっクメイどさまぁ!」

 ブラックメイドとやらの命令を聞き、ユウは即刻立ち上がって僕の方に向かってきた……まるで出来のいいゾンビゲームのゾンビのような歩きで……率直に若干ふらつきながらも素早く……

「アハハハハハハハ!」

「奇声は…………やめろユウ!」

 近付いてきたユウが正直クトゥルー神話における食屍鬼とかそういう比較的小さな脅威に思えてきて、ついつい首筋に手刀を入れてしまった。

 まあ、これで気絶……か一時戦闘不能だろうから、希望の未来と精神を再構築をしてから浴場の外でスタンバイしている夜鬼集団に引き渡してノーデンスさんに処分を決めてもらおう。

 ところで、夜鬼は珍しく原典通りだったんだがこの差は一体なんだ? 確かダゴンハイドラにミ=ゴにウェンディゴが原典通りだったはずだが……

「あらあら……使えないダメメイドを倒しただけで、調子に乗らないでもらえるかしら?」

「おい、帰らせろよ……お前と戦うつもりなんて無かったんだが? ニャルラトホテプ」

「あら……随分と詳しいじゃないの……私達ニャルラトホテプに」

「……一体何人いるんだ? おまえたちニャルラトホテプは」

「さぁて……私が知っている分だけでは中国の腹立つ女と極東エリアの後輩とアメリカのショタ仮面ジジイと私……あと居場所が分かんないのが1人よ」

「5以上が確定かよ……」

 頭が痛くなりそうだ……かげぶんしんだとか増殖だとかそんなんじゃない、完全に別個体のようだ……というかそんなにいてよく世界が滅んでいないよな……? 間違いなくそんなにいたら絶対誰かが本格的に世界滅ぼそうと躍起になるだろうし

「……それで、幻夢境にどうやって来たのかしら? ここはリアリストが立ち入ることは許されない夢の国よ?」

「ヨグソトースに銀の鍵借りて侵入した……でもってリアリストじゃないけどな」

「そう……本当はあなたの心を壊してあげたいところだけど興が覚めたわ……今回は許してあげる……じゃあね~」

 そういってブラックメイドは静かに幻夢境を去って行った……あれ、大事な事を忘れているような気がする……

「ユウ!」

 ついさっきユウが倒れた場所にユウの姿は無かった……犯人がブラックメイドだとするともしかしたら……!

「ノーデンス! 僕を今すぐ元の世界に戻せ!」

「承知した……ところで、一体どうすればよいのだ?」

「無駄に馴れ馴れしいなおい! お前が鈍いからよかれと思ってを明かしてやるよ! 僕(の相棒)がクティーラだよ! ジャンジャジャーン! この情報渡したんだから、ユウを探しに行くからはよ戻せ!」

「そうかそうか……ユウ殿の件が終われば次は主だな……いや、今すぐか……主はそこに居ろ……ユウ殿は夜鬼共に任す」

 おいこいつ正気かよ……夜鬼に任すとか、例えるならラスボス級の敵にモブ兵士のみで立ち向かうようなものだぞ……?


 同時刻、旧図書室にて、沙耶とツァトゥグァが話し合っていた……勿論、ユウの探索に関することだ。

「で、結局手がかりはほぼ無かったと……」

「ええ……ノーデンスが犯人という目撃証言、そしぬノーデンスに全身黒尽くめの女性が着いていたという先ほど伝えた情報を除けば何も……」

「黒尽くめでノーデンスに着いていた……夜鬼か……?」

「いえ、ノーデンスに軽口を叩いていたという証言からおそらく……ブラックメイドかと……」

「だとすれば……ユウは幻夢境か……銀の鍵があれば……」

「その心配は……いらない……」

 話を全て聞いていたかのような幼い声が外から聞こえた……

「その声は」

「ヨグソトースさんですか……うぇっ!?」

 ヨグソトースの声を確認するや否や、ツァトゥグァは扉を開き……ヨグソトースの背後にて、人にとっては難攻不落の壁を構築している夜鬼に驚愕した……

「沙耶……久しぶり」

「……なあ、後ろの奴らは……何だ?」

「後ろ……ストーカー?」

「…………とにかく、邪魔だから追い払ってくれ……ない……か…………あ?」

 ヨグソトースが後ろを向き、夜鬼に向けて手を翳すや否や、夜鬼達は一瞬にして居なくなっていた……

「話し合いの続き……」

「……一体奴らはどこに消えたのだ?」

「……心配ない、ちゃんと幻夢境に送り返した」

 端的にとんでもない事を口走るヨグソトースに、沙耶もツァトゥグァもこの件には何も返さずに、話題を切り替えることにした……

「……ところでヨグソトースさん、ユウさんの居場所を」

「ブラックメイドが屋上に連れて行った……」

「あ、はい、分かりました……沙耶さん」

「ああ……ツァトゥグァは先に行っていてくれ……私は仲間を呼び戻す」

「はい、分かりました」

「……私は?」

「ヨグソトースさんはわたしに着いてきて下さい!」

 急いでいるあまり、ツァトゥグァは半分怒鳴るような感じでヨグソトースに言った。



「やっぱりここにいましたか、ブラックメイドのニャルラトホテプさん」

「あら、ノーデンスの追っ手にしては意外と早いのね……」

「ノーデンス? ……夜鬼なら居たけど?」

 旧図書室のある校舎の屋上……もしくはノーデンスとユウ達が初めて対峙した場所にて、ツァトゥグァ、ヨグソトースとメイド服姿のユウを抱えたブラックメイドは互いににらみ合っていた……

「あいにくと、わたしはノーデンスさんとは別にユウさんを探していましたから……それで、あなたの目的はなんですか?」

「場合によっては……容赦しない……原初の宇宙に放り投げる……それか原初の地球の中心に送りつける……」

「あらあら……いいのかしら、そんな手荒な真似をしようとして……? こっちにはあなたたちの大切な親友、ユウがいるのだけどぉ~?」

「……あなたはユウを返す、そしてわたし達はあなたを追わない、この条件でどうですか?」

「嫌よ? だってあたしが欲しいのはこの子の魂……その1割にも満たない、ただの……あたしとっては貴重な欠片よ」

「欠片……何に使うつもりなの……?」

「あなたなら分かっているんじゃないの、ヨグソトース? かつてハイパーボレア大陸でツァトゥグァの神官をやっていた魔導士エイボンの親友、そしてエイボンの魂を遺言書通りなら100分割して全てをばらまくはずなのに、こっそり少しを自分の物にしていたヨグソトースならねぇ?」

「っ……」

 ブラックメイドはヨグソトースを自身の言葉によって、そしてツァトゥグァをもその言葉によって生まれた不信感から来る不協和音により精神的に追い詰めた……

「ヨグソトースさん……あまり信じたくは無いのですが……」

「ブラックメイドの言った事は本当……でも、私利私欲のためじゃ……」

「……じゃあなんのためですか! エイボン様の相棒のわたしに黙って……何で隠していたんですか!」

「それは……あなたの」

「何がわたしの為になるんですか! わたしだってエイボン様の遺言書に背いて持って行きたかったんですよ……! なのになんであなたは……」

 ブラックメイドの話術に巧みに騙され、ツァトゥグァはヨグソトースの言い分も聞かずに泣きそうな顔でヨグソトースを責めていた。次のヨグソトースの言葉を聞くまでは……

「ワタシにだって……エイボンが死に際に言っていた言葉の具体的な意図は最近まで分からなかった……」

「エイボン様が……言っていた……ということは、遺言書とは別に……?」

「そう……エイボンはワタシに魂の一欠片を託した……いずれツァトゥグァ、あなたの傍にエイボンがいられるように波長の合う人間と魂を融合させるため……」

「あら……もう仲直りしてしまったの? つまらないわねぇ……もう少しであたしの逃げる隙が出来ると思ったんだけど……ま、いっか……あなた達2人を強引にでも退かせば済む話よねぇ?」

 そう言い、ブラックメイドはユウを傍らに下ろし、その直後、一気に2人へと距離を詰めた……

「……甘い」

「甘いのはどっちかしら! 動かずに突っ立ってい……っ!?」

 ヨグソトースに蹴りを入れた瞬間、ブラックメイドは驚愕に目を大きく見開いた……

 それはそうだろう。ヨグソトースを蹴り上げたつもりが、その威力がそっくりそのまま自身に返ってきたのだ……

「その攻撃……そっくりそのまま返させてもらう……ブラックメイド」

「くっ……」

「さあどうする? ちなみにツァトゥグァには武道の心得があるけど……? 剣道とか……弓道とか」

「せめてもっと威圧感の出る武道を挙げて下さいよヨグソトースさん……柔道の理論や空手の理論は全て把握しているので」

「くっ……ここは一旦退却」

「出来ると思ってるのか? ブラックメイド」

 逃げ出そうとしたブラックメイドに対し、逃げ出そうとした方向から、氷の飛礫と共にクールな声が投げかけられた……

「今度こそは逃がさないからな、ブラックメイド……!」

 まるでヒロインを助ける主人公のごとく……ユウの親友、アツトはブラックメイドの前に立ちはだかった……


「あらあら……次は無いって言ったわよねぇ?」

「今回は次じゃなくてまだ前回の続きじゃないか? ……あと、ユウを返してもらおうか」

「嫌だ、と言ったら?」

「力ずくで……3人がかりで返して貰う」

「はぁ~あ、これだから男は野蛮なのよ……」

 そんな事をつぶやき、ブラックメイドはメイド服の中から何か四角いものを二つ取りだし、こう言った……

「賽の目で勝負を決めましょう? あなたがあたしよりも……あたし以上の目を出したら勝ち……このルールでどうかしら? もちろん、賭けるのはこの子よ……」

「ああ……別に良いけど……別に僕が先にやっても構わないんだろう? ……それと、賽子は一個だよな?」

「ええ……ほら、受け取りなさい、クトゥルーの眷属」

 そういってブラックメイドは僕にトラペソヘドロンのような賽子を投げつけてきた……さすがにこれじゃあインチキダイズは作れないよな……邪神の力がなければ

「あの……なんで勝手に話が進んでいるんですか? いくらユウさんと親友とはいえ……」

「…………まあ、ブラックメイド以外のニャルラトホテプと結構因縁があるからな……」

「ブラックメイド……ひょっとして関係ない……?」

「いい加減に賽を投げなさい、少年……あたしは短気なのよ」

「…………1つ聞きたいんだが」

 そう言いながら僕は左手にトラペソヘドロンサイコロを持ちつつ、右手にさっきの氷の飛礫を作り出した技を使って氷のサイコロを作り出す……副作用で左手だけに熱病に犯されたかのような熱さを感じるが、それを我慢してニャルラトホテプに右手のサイコロを投げながら問いかける……

「あくまでも過程の話なんだけどさ……」

 視界の隅でさり気なく目で追っていたサイコロにヒビが入った……

「なに? 少年」

 転がる度にヒビは大きくなり、ついには真っ二つに割れた

「こんな風に真っ二つになったらどうするんだ?」

「勿論合計の目の数よ」

「……分かった…………じゃあ、本番をやらせてもらうからな?」

 これは単なる知恵比べですらない、ただの運試しだ……しかし、それはあくまでも普通の人同士でやるとしたらの話だ……邪神ならおそらくイカサマぐらいなら平然とやってのける……じゃあどうすればいいのか? 簡単だ、僕もイカサマをすればいいのだ。

「待ってください、アツトさん……わたしがやります……」

 いざサイコロを投げようという段階で、委員長……ツァトゥグァに待ったをかけられた……

「……交代いいか? ブラックメイド」

「別にいいわよ、勝てないから」

 「最初からあたしの勝ちは決まっているから」と言わんばかりに、ブラックメイドは選手交代を認め、同時に僕らを挑発した……挑発っていうのは分かっているけど、正直イラっときたから反論させてもらう。

「おい……信じないのか? 奇跡の起きる可能性を」

「信じないわ」

「っ……! ……先に言っておくが……僕はお前を許すつもりはないからな?」

「冷静なクトゥルーと違ってすぐに熱くなる……これだから男はダメなのよ……ノーデンスと同じぐらいねぇ」

 誘拐した相手がその男だと分かってさらったのか、もしくは知らずにさらったのか……

「いきますよ、ブラックメイドさん……」

 ツァトゥグァは黒い賽子を空高く投げ……数歩後ろに下がり、すこし前まで自分がいたあたりを見つめていた……

「なあ、委員長さんよ……それじゃあ僕の小細工が意味ねぇじゃねぇか」

 さっき、氷のサイコロを作った際、副作用で左手……そしてサイコロに熱を加えたのだ……イカサマで6の目を出すために……まあ、嫌な予感がするけど……

「賢者の石がその程度の熱で重心が変化すると思っているのかしら?」

「賢者の石!? 賢者の石を遊びに使うな! 任意ツッコミだったからタイミング逃してたけどあえて今ツッコミをいれる! モロに某遊戯ゲームの王様のアレじゃねぇか!」

「一応念の為に言っておくわ……屋上から落ちたらその時点で失格よ」

 ……本格的に委員長が投げた賽子が無事に屋上に落ちることを祈るほかあるまい……僕には祈ることしか出来ないから。

「そろそろ……落ちてくる」

 そう、ヨグソトースが言った直後……屋上がわずかながら揺れた気がした……というかおそらくごくわずかに揺れたのだろう。高く上げたサイコロの、着地の衝撃で……

「サイコロの目は……1よ」

「ツァトゥグァさん……これであいつを取り戻せなかったら……ケジメ案件だからな?」

「まだです……まだ奇跡の起こる可能性は残っています……それこそ、0ターンキルできるくらいに」

「お前が封印されろ」

 40枚のうち、無造作に選んだカードが特定の五枚というのはまるで現実的じゃない。

「あらあら、いいのかしらぁ? 仲間割れなんかしちゃって……じゃあ振ろうかしら……賽子をねぇ!」

 そう言いながらブラックメイドはサイコロを振り……いや、屋上のフェンスに向かって投げつけた……

「お前の狙いは最初から……!」

「ルールに則るならあたしの勝ちは確定よ! だって、割れたら3以上が確定するもの!」

「くっ……」

 そうしている間にも賽子がフェンスへの距離を縮め……一定距離まで近づいたところで、再び距離をとっていった……

「馬鹿な……あたしの計算は完璧だった……はっ! もしやヨグソトース」

「その通り……賽子の空間的位相を(略)」

「短く言ってくれ、ヨグソトース……」

「数学的に簡略化していえば、ベクトルをそのままにニャルラトホテプが計算通りに投げた原点の位置を(0,0,0)とすると(3,3,-4)くらいにさりげなくズラした……ブイ」

「あり得ない……あたしの計算が……」

 愕然としながら、ブラックメイドは地面に膝をついた……

「これで僕達の勝ち」

「んっ……ふゎぁ~……おはようあっちゃん、ブラックメイドさんまぁ……、ツァトゥグァさん」

 なんつぅタイミングで起きるんだよこいつは……

「……で、どういう状態? 今からあっちゃんによるエロ同人みたいな事がはじみゃうっ!?」

 言葉の途中ながら、僕のツッコミ(氷)により、あわれ変態は爆発四散……じゃない、再び気絶した。そういえば洗脳解いてないけど、まあいっか

「で、いったい何が目的でこいつを攫ったんだ? ノーデンスを裏切って」

「……あたし専用の賢者の石……あたし専用のトラペソヘドロンを作るためよ……これから来る脅威、その対策のためね……」

「これから来る脅威? いったいなんですか? わたし気になります」

「……これから来る脅威、それは邪神が作ったどんな武器でも傷一つ付かず、邪神のどんな守りも崩す、まるでチートのような奴よ……」

「それで、具体的には?」

「つまりあたしがあの子をさらったのは世界を守る為によ」

「まてブラックメイド! どういう……ことだ……! まるで意味が分からんぞ!」

「まあ、平たくいえばナイアル七皇最凶の、闇に住む暗黒神の封印が解かれて復活した時の対策よ……」

 ……ニャルラトホテプは全員で7が確定したようだ……というか異名で分かれていたのか……こいつはブラックメイドか強壮なる使者でルルイエに来たアイツが無貌の神やら顔のないスフィンクスやら盲目にして無貌のものなんだろう。

「でも、なんでユウが必要だったんだ? 誰かに邪魔されて最後まで聞けなかったけど」

「厳密にはその子の魂が必要だったのよ……その子の魂のほんの欠片、エイボンの魂がね……」

「エイボンの……魂……?」

「魔力は魂に宿るものなの……故に、強大な魔力を持った魔術師の霊には生前にはわずかに劣るけど、かなりの魔力が秘められているのよ……例えばエイボンなら、魂の欠片一分でも使い切れば月を砕くレベルの魔法を使える魔力を持っているのよ……そして、その子はエイボンの魂の芯とも言うべき、最も魔力が強い欠片が魂に混じっているのよ……」

「つまり……ユウを攫ったのは」

「そう、世界を救うためにその子の魂を少し拝借したかったからよ……別に実は良い人ってわけじゃないわよ? あたしだって、最初はその子の魂を全部貰って抜け殻もあたしが貰っちゃおうかと思っていたのよ」

「あなたがいい人か悪い人かなんて、被害者ぼくの判断で決まるんじゃないですか?」

 さっきちゃんと気絶させたはずのユウが、起き上がって覚束ない足取りながらもブラックメイドのそばに歩み寄った……


「あなた……いつから聞いて……?」

「最初から全部、ブラックメイドさんが屋上に来たときからぜぇんぶ、あっちゃんのイケメン力が53億を突破した時も含めて、全部知ってるよ!」

 ぼくがそう言うと、ブラックメイドさんは……あ、あっちゃんも困ったような顔をして、さっきまで敵対していたハズなのに、視線でお互いに意図を示し合い、ほぼ同時にぼくの襟首と両腕を分担して掴み、ぼくが身動きをとれないようにした。

 ……いったいなにが始まるの?(ワクワク)

「ついうっかりだろうと今回のことを旧神とか他の邪神連中に口外したら魂全部ブラックメイドに引っこ抜いて貰うから覚悟しとけよユウ……それと間違ってもこれ以上こっち側に深入りするな、死ぬか人間をやめる覚悟がない限りこっち側にくるな……」

 襟首を掴んで持ち上げようとしているあっちゃんの目は至って真剣な目をしていた……今の言葉もぼくを思っての言葉なんだろう。あっちゃんが死ぬか人間をやめるかという覚悟を決めて邪神と共に行く道を先に進んだ故の……

「……別にぼくはヨグソトースちゃんやブラックメイドさん、あっちゃん、そしてツァトゥグァさんの為になら犠牲になっちゃってもいいよ……みんななら、もしぼくが犠牲にならなきゃいけなくなっても、その犠牲を十割生かせると思うから……」

「ユウ……お前は耐えられるのか? 近くの奴らがお前のせいで後悔するのを……邪神の近くにいるのならそれぐらいの覚悟は」

「大丈夫だよあっちゃん……ぼく、パンチングマシンで100キロは出ないけど、結構強いんだよ? 心も体も夜の方も」

「だからそういう事じゃ」

「ねぇあっちゃん、あっちゃんはぼくに対する認識が間違っているみたいだね……」

 そう、間違っている。半端な気持ちで邪神おんなのこを攻略しようとするなんて、いくら変態なぼくでもやるわけないじゃんか……

「だからユウ、僕が言いたいのは」

「ヤンデレサブヒロインか自称落ちこぼれな主人公並みの説教はいいからね、あっちゃん……分かってるんだよ、ぼくがとんでもない領域に片足踏み込んじゃってるのは……でもね、ぼくはここで引き返したくないんだよ。邪神には可愛い子が多いしリアルで変態な事が出来るかもしれないから、もっと突き進みたいんだよ」

「結局それか……」

 そういって結局あっちゃんはぼくを下ろした。そしてブラックメイドさんもぼくの拘束を解き……あっちゃんが予想外のタイミングで肘鉄を放った。ギリギリガードしたけど。

 というか許してくれる流れか、熱い抱擁につなぐじゃなかったの?

「もう説得は諦めて忠告だけにしておくけどな……こっち側に来るなら、周りの邪神やつらに守ってもらえよ、ユウ……マジでお前……変な方向に自分から首突っ込んで、死にかねないし」

「……とどのつまり、あっちゃんがぼくを守ってくれるの?」

「断る」

「無理じゃなくて断るなんだ……つまりあっちゃんは邪神ルートに進むために人間をやめたんだね?」

「氷の棍棒でなぐるぞ? 割とガチで」

「つまり水属性か氷属性の邪神……?」

「なんでそこまで的確に親友を追い詰めていけるんだよお前は」

「ああ! それはそれとして、ヨグソトースちゃんをもらっていい?」

「……死ねと言いたくなったが、親友のお前だから自粛してやろう……代わりと言っちゃあなんだが……ブラックメイド、こいつの調教は任せた」

 盛大に拒絶されてしまった。って、調教? なにそれご褒美。デュフフフ……

「赤ちゃんプレイから石化(略)まで、古今東西ありとあらゆる変態ちょ」

「やめろブラックメイド」

「失望しました。代わりにツァトゥグァさんを嫁にしてもいいですか?」

「ゑ?」

「な……!?」

「……懐かしいカオス……ランクが違うけど」

「僕に聞くな」

「ツァトゥグァさん、結婚しましょう」

「ちょ……っ!? そもそもユウさんはまだ17歳ですよね!?」

「じゃあ将来的に」

「やめろユウ、ツァトゥグァさん困ってるだろうが」

 ツァトゥグァさんが困っているのなら、そこから妥協するしかないじゃないですか……!

「じゃああっちゃん、けっこ……んかいっ!?」

 最後だけはジョークだったのにツァトゥグァさんにもあっちゃんにもボッコグーされてしまった……

 失望しました、あっちゃんにもツァトゥグァさんにも……イホウンデーさんをもらいます。

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