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5話 来訪者が2人

「ダンナの商店がまた来たよ!!今日は果物が豊富さ!!あッ、おっちゃん!!この間、買いそびれたやつだから、奥さんに買ってくさね!?」



今日も費緯の元気のいい声が益州南の町から聞こえてくる。

趙子龍と出会って、すでに1ヶ月。

彼女も最初は悪戦苦闘していたが、客引きも慣れてきていた。

ダンナはいつも通りというか、馬車で横になっていた。



「ダンナ殿~!貴方に会いたい、と言う女性が来てますぞ~?」


「お前が対応する方が喜ばれるぞ!?」


「ま~た、そ~ゆ~事言うよ?ダンナから買いたいって娘もいるんだからちゃんと来るさ!?」


「今度、装飾品持ってくるからそのときな~!」



そう言って、馬車から動く気配のないダンナ。

その彼に近づく、2人の女性がいた。



「相変わらずサボっておるのぅ、ダンナ?」


「こいつ、本当に商人なのか?女2人を働かせて、自分は暢気に居眠りか!?」


「ん?誰だよ?」



馬車で寝ころんでいるダンナもさすがに起きあがり、自分に話しかけてきた存在を見つめる。



「あ~、厳なんちゃらに脳筋か。どうした?今日は武具は持ってきてないぞ?」


「厳なんちゃらではない!!厳顔様だッ!!あと誰が脳筋だッ!!」


「焔耶、言っても無駄だ・・・本当に人の名前を覚えんな、お主は。」


「笛女だろ?分かってるって。」



誰が来たかを確認すると、興味を失ったかそのまま寝転がって適当に相手をしようと態度を変えた。

脳筋と言われた女性は、人よりも遥かに大きい金棒の様な物を持ってダンナに食ってかかろうとするが、厳顔と言われた女性に止められやり場のない怒りをドゴンと言う音を鳴らし地面に叩きつける。

誰かがダンナに近づいているのを知っていたが気にしていなかった費緯と趙子龍は、その音で何事かと振り返っていた。



「あ~、厳顔様と魏延様だ。どうしたんだろ?」


「知っているのか?」


「益州牧、劉焉様のとこの将軍様さね。ダンナが厳顔様の武器を整備しているからたまに来るんだよ?でも、今日武器持ってないさ。」



商売を一時中断してダンナの元へ駆け寄った。



「将軍さん、いらっしゃい!!今日は何用さ?」


「おお、費緯か。商売は繁盛しているか?こやつがこうだから大変だな。」


「兵隊さんも買いに来てくれるから繁盛してるよ?ダンナはいつも通りだから仕方ないさ。代わりにすっごい有能な人雇ったからとっても助かってるさ。」


「趙子龍と申すもの。少しの間、彼らの商売を手伝っている。」


「お前のグーだらを見かねて費緯を助けるやつが現れたんだな。情けない奴だな、ダンナ!!」


「煽るな、焔耶。こやつに言っても聞かんのはいつものことだろうが。」


「人が集まると五月蝿いな・・・何の用だ?武器の調整でも必要になったか?」



寝ようと思ったところを邪魔されて少し気分を害したダンナだったが一応、用件を聞いた。



「武器の調整はまた別の機会に頼む・・・今日は劉え『断る』ん・・・一応最後まで話を聞かんか?」


「これで7回目だぞ!!いい加減にしろよ、お前!!」


「相変わらずさね、ダンナ・・・」


「ん?話が見えんがどう言うことだ?」


「えっとね、劉焉様から成都に来て私と会うよう言われてるさね。これで7回目よ・・・普通だったら引っ立てられるさ、ダンナ?」


「知るか。『劉焉』に呼ばれているなら絶対に行かない!!」


「様をつけろ!!益州牧だぞ!!この地域の領主様だぞ!?」


「強情じゃのう・・・」



普通なら、これだけ拒めば何かしら問題が発生してもおかしくないのだが・・・今のところダンナの我が侭だけで済んでいる。



「儂らの顔を立てると思って来てくれんか?いい加減、この問答を報告するのも苦しいのだが・・・」


「いやだ。」


「桔梗様、もう強制的に連れて行きましょう?縄で縛って連れて行くだけ、簡単ではないですか!?」


「はぁ、仕方ないのう。」



厳顔はため息をつきながらダンナに近寄っていく。

ダンナは微動だにしない。

が、縛られそうになったら逃げれるように準備はしていた。

厳顔は彼の耳元に顔を近づけ小さな声で呟く。



「・宗・・と言う名、だそうだな、ダンナ。」



ガバッと起き上がり彼女を睨みつける。



「厳顔、お前!!!!」


「安心せぃ。儂しか劉焉様から聞いておらん・・だが、お前がこれ以上、拒めば考えがある、と言っておられたぞ?」


「あの女!!!!6回も拒んだ理由がわかんねーのか!!!!」


「真意はわからん。が、お前に会いたいと言う想いはとても強く感じたものだぞ?」



ダンナは苦虫を噛みしめたような顔をして4人の方に背中を向けて一切喋らなくなった。



「だ、ダンナ殿。領主と知り合いだったか・・・せっかく領主が会いたいと言っているのだ、会い『あ゛ッ!!』に・・・いや何でもござらん。」


「子龍お姉さん、頑張ったさ・・・」



緊張した空気がしばらくの間そこを縛っていたが、ダンナの顔が下を向き、背中が丸くなったため、その空気は霧散した。



「・・・わかったよ。行きゃいいんだろ、成都だろうが何だろうが行ってやるよ。」


「すまんのぅ・・・こればっかりは使いたくなかったんだが。」


「使った時点でその言葉は無意味だ。」


「お前がさっさと行くと言えば使うことはなかっただろうが!!」


「脳筋はギャンギャン五月蝿いな・・・いつ行けばいい?」



またも脳筋と言われ怒った魏延は金棒を持って食ってかかろうとするが厳顔に止められる。



「むしろお主が行けるなら今からでもいいのだが?」


「行くと決めたし今から行くか・・・1ヶ月も拘束されるわけでもねえし、問題ないだろう。」



そう言って馬車から降りて商店の方へ移動する。

商人達がいない間、知り合いであろう男が代わりに商品を売っていた。

その男のおかげで、ほぼ品物は売り捌かれていた。



「済まんな、いつも助かる・・・これはオマケだ、娘さんによろしくな。」



彼にいくらかの金銭を渡し、残っていた果物を籠に移し渡した。

その様子を4人は見ていたが、費緯はハッとして荷物の整理を始めた。



「厳顔と脳筋はさっさと劉焉に報告に行けよ。子龍はこっちの片付けがあるんだ、呆けてんじゃねえよ!」


「う、うむ。そうじゃな。」「脳筋、脳筋言うな!!」「済まぬ、ダンナ殿!」



ダンナに促され、皆、やるべき事をやり始めた。

そんな中、手を動かしながらダンナは呟いた。



「・・・いい加減、逃げるのはダメ、だろうな・・・でも会いたくねえんだよな、あいつらに・・・」



『明日で兄さんと同じ年になる。私は兄さんと同じくらい強くなれただろうか?父は・・より強くなっていると言ってくれるが、そうは思えない。兄さんはこの年で賊徒80人を相手に女の子を護りながら戦ったのだから。今の私には出来ない。大人10人くらいなら相手に出来る・・・けれど、誰かを護りながら戦うなど、そんな余裕はない。兄さんは凄かった。そんな兄さんの当時の年に、明日、なる。兄さん・・・私は、・は兄さんの強さに近づいていますか?』



結論から言うと、バカ馴染みはこの日記を読むことは出来なかったみたいだ。

義妹が読めた内容を、さも自分が読めたように話しただけだそうだ。


バカが!!


読めなくてヘコむ事は分かるが下らん嘘をつくな!!

たまたま、バカ馴染みの義妹が本を借りに私の部屋に来たから分かったことだが・・・



『きょうは、・・・にぃにとおべんきょうです!!父上がせんせーだった!!父上のはなすことはぜんぜんわかりません!!・・・にぃには「こんどはがんばろうね」と言ってやさしくあたまをなでてくれました!!父上は少し泣いていました。』



義妹も日記の存在は知っていたそうだ。

不気味だったため隠していたそうだが、私が読めることを知って安心したようだ。

・・・お前の兄だけでは不安だったか。



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