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1話 ダンナと呼ばれた男

「おーい、ダンナ!!着いたさ!!」


「・・・んっ?着いたか?」


「ええ、長い道のりだったさ・・・今日のは売れるさね?」


「ん~・・・まっ、売れんじゃない?あいつ等が頑張って採ったものだ。『売れる』ではなくて『売る』んだよ。」


「ダンナは流石さ。まあ、心配しちゃないよ。今日のもすぐに完売さね・・・けど、そういうこと言うならダンナがこれらは売るんよ?」


「・・・気が向いたらな。」



まさに商売人といった格好と綺麗な容姿をした者と、顔を体をフードとコートで隠した商売人とはほど遠い格好をした者が町へと着いた。

ここは、益州の南に位置するとある町。

最近、益州牧に就任した『劉焉』が統治する地・・・なのだが赴任したばかりなので、この町まで内政の手が回っていない。

だが比較的治安もよく、商業が発展しているため人の出入りも多く、活気に満ちている。

そんな場所で、ダンナと呼ばれた商売人はさっと馬車から降り、慣れた手つきで荷物を下ろし、その場で商売が出来るように準備を始めた。



「いらっしゃ~い!今日も面白いもの持ってきたさ~!」



用意が終わり、綺麗な容姿の商売人が元気よく客引きを始める。

フードを被った方は、商売の用意が終わると荷物のあったところに寝転がっていった。



「あっ、こら!!ダンナ~!用意したからって寝ちゃいかんさね!さっきまで寝てたでしょ!?有言は実行するさ!!ダンナが来るの待ってた人もいるんよ?」


「こんな見ても面白くない奴を、か?酔狂なやつがいるものだな。」


「ダンナは一回、自分の容姿をしっかり確認する時間を設けて貰いたいさ。」


「・・・どうでもいい。」


「大体さn「お姉さん!!これ頂戴!!」はい、毎度あり!!ついでにこの果物もどよ?いつも持ってくるのより甘いさ!」



ダンナと呼んでいる男を批判しようとしたが、お客が来たのですぐ商売に戻る。

いつも同じ場所でやっているためか、二人のやり取りが聞こえたのか常連の客はすぐにやってくる。

彼らの売る物は人気があるらしく、あっという間に人集りができて、独特な口調の商売人が1人でそれを捌いていく。


一方、ダンナと呼ばれた方は特に商売の方を手伝うこともなく馬車で横になっていた。



『深く寝過ぎた、か。もう寝れんな・・・』



先程まで寝ていたためか、目を閉じても意識が落ちることはなかった。

相方やお客の声を聞きながらこのまま時間だけが過ぎるのを待とうとしていたのだが、突然、女性が悲鳴をあげた。



「なッ、なんさね!?」


「見てくる。ここは任せる。」


「って、ダンナ!?・・・ちゃ~、早すぎさ。もう行っちゃったよ・・・」



どこから聞こえたかわからない悲鳴なのに、場所を特定したのか、男は疾風の如くあっという間にいなくなった。

部屋に戻った私は、机に向かい持って帰った本を読み始める。

・・・表紙に題名が書いてあるわけではないのに、なぜ、その本が『日記』だと思ったのだろう?

読み始める前に疑問に思ったが、すぐにその疑問はどこかにいった。


『・・・にぃにが本をくれました。この本です。手作りだそうです。この本をつかって今日からにっきを書こうと思います。』


・・・なぜ、こんなにスラスラ読めるのだろう?

よくよく考えれば、三国志の伝記の横に置いてあったのだ。これも同じく、三国時代の文字で書かれているはずだ。

漢文は得意ではないはずなのだが・・・

読み始める前から疑問を持ったが、まあ、いい。

誰かの悪戯かもしれないし、読んでいけば答えは出るだろう。


『・・・にぃにが・・・のところにきて一年がたちました。この本はそれのきねんだそうです。・・・にぃにありがとう。』


『この本でにっきをかくことを・・・にぃにに言いました。・・・にぃにがにっきをかいていることはしっていたので、そのまねをしました。・・・にぃにがおしえてくれる文字のれんしゅうもできるよ?って言ったら・・・にぃにははずかしそうだったけど、がんばれ、って言ってくれました。がんばろう。』


この時代、一般の家庭で文字を書くなどなかっただろう。

それを考えると、この二人はそれなりに裕福な家庭の子供なのだろう。

あの武将の子供だとすれば、文字に触れる機会は何度もあるのだろう。


それにしても・・・なんで名前の所は読めないのだ?

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