巨木の下で
――「ラーソさん、着きましたよ。」
ザックは話し、眼前に立つ家の前へ行くと、大きく背伸びをした。
ラーソも隣に立ち、家の扉を見つめた。
ここは、サムの家。
久しぶりの再会の上、落ち込んでいる時だけに、サムはさぞ声を上げ迎えるだろうと思い、ザックは扉を開けた。
……。
予想に反し、ザック達を迎えたのは静寂だった。
「…あ、ザックさん、お帰りなさい。そちらの方は?」
ルシータがようやく気付き、声を掛けた。
ザックは、ラーソを旅の仲間と紹介し、サムの体調を確認した。
サムは目を瞑り、外部の変化に気付かないほど何かに集中していた。
「実は、あの後サム君の周波数をワイス中に公開しまして…話し相手が少しでも増えればサム君の気も晴れると思って。」
ルシータは申し訳ない風な口調でそう言った。
テレパシー通信は、過度に利用すると魂にストレスを与えるため、個人周波数を不特定多数に教える行為は、占術師以外は常識的に避ける傾向にある。
だが、サムは占術師並みの高い生体磁場を持つため、ルシータは思い切って個人周波数を公開することにしたという。
結果は見事幸をそうし、サムはテレパシー仲間と好きな話で毎日盛り上がり、体調も回復していった。
だが、やはり魂の疲労は少なからずあるため、ルシータがテレパシーの制限を掛けているとの事だった。
話を聞き、ザックはサムに呼び掛けた。だが、呼ばれても尚テレパシーに夢中なサムにその声は届かない。
「サム君。はじめまして。わたくしは、ザックさんの知り合いのラーソ=ボローニという者です。」
ラーソの丁寧な挨拶を受け、これまで沈黙していたサムが目を開けた。
美人に対しすぐに反応する事だけは、変わっていないようである。
「あ、初めまして!…って、ザックも来てたんだね!」
そう言い、ようやくサムは体を揺らし再会の喜びを見せた。
だが、ちぃの話をした途端、俯き、体の葉がくたびれる。
「…あいつなんかもうどうだっていいよ。」
どうやら喧嘩別れして以来、一度も会っていないようである。
すっかり沈んでしまったサムを見、気が重くなったザックは、とっさに話題を切り替えた。
「あ、そう言えば、グリーズに行った時、お父さんに会ってきたよ。」
その知らせに、サムのくたびれていた葉が伸びだした。
ガーデニングと発掘の地として名高い都市グリーズで、サムの父はパワーストーンの発掘を行い生計を立てていた。
ザックは、グリーズを離れる際、サムの父に会いに行っていた。
グリーズは、世界中のパワーストーン発掘地に無償でジョウントリンク出来る都市である。
そのため、父親と会った場所は、グリーズから遠く離れた街の発掘場だった。
「お父さんは、会いに行けなくてごめん。だけどそろそろ戻れそうだって話してたよ。」
ザックは優しく話すと、サムの頭を撫でた。
ご機嫌なサムと、その姿を安堵の表情で見つめるルシータ。
その光景に、ザックは笑みを浮かべながらも、どこか不安げな顔をしていた。
「どうかなさいましたの?」
心配し、ラーソが声を掛ける。
ザックは一旦ラーソを外に誘うと、真顔で話を始めた。
「…気になることがあるんです。」
ザックの不安を煽るように、風に揺れた巨木が一本、鳴動を始めた。
その数時間後、とあるチャネリングが世界中に流された――
―――――――――
――『皆さん、ダークミラーというものを知っていますか?旧文明の頃に一部の人達が用いていたというパワーグッズです。実は今回、わたくしリリがそのダークミラーを作っちゃいました。』
匿名周波数と言われるチャネリング技法を使い、リリは自分の部屋にて世界中にチャネリング映像を流していた。
凹面の漆黒のガラス細工の映像。それについてしばらく解説した後、チャネリングは終わりを迎えた。
チャネリング協力者の進化派メンバーに礼をすると、リリは椅子に腰を下ろした。
「でもこんなので本当にダークミラーは流行るかな?」
リリが呟きに、すかさずクレロワが言葉を返した。
「現に、以前広めた運気飴は世界中で流行しています。ご安心を。」
その言葉にリリは微笑む。クレロワはその笑顔を受け取ると、仕事を済ますべく部屋を後にした。
リリは、一度大きく息を吸うと、再び立ち上がり、音吏を呼んだ。
「面倒にならない内に、ディセンションを調べます。」
チャネリングを終えたばかりで疲労しているリリに、音吏はもちろん、立ち会ったシオン達も身を案じ諭す。だが、リリは首を振り、催促をした。
促され、音吏がポケットから一つの飴を取り出した。
リリはそれを口に入れると、目を閉じ瞑想を始めた。
口にした飴は「感応飴」という、運気飴と同じくタルパの原理で生み出したものである。
運気飴を口にした全ての者のオーラを、感応飴を口にしている間知りうることが出来る奇跡の道具。
リリは、ディセンションの影響を強く受けた者を探る際、この飴を利用していた。
目を閉じ、感応飴を舐めているリリは、地球を宇宙から眺めているような映像の中に居た。
人類の住む大陸に、いくつかの黒い霧のようなものがあるのに気付き、霧の一つに触れるように意識を集中される。
位置的にそこはグリーズだった。
その先をどんどん進み、見えてきたのはひとりの男。
その男に更に意識を集中された時、リリは呟いた。
「名前は、テテ…か。」
しばらくし、全ての霧を調べた後、リリは結果を仲間に伝えた。
シント、ティックス、オマ、ジランド、フリムダ… そしてグリーズ。そこが次のディセンション抑止の対象人物が居る地であった。
聞いて、シオンと音吏はやる気を見せるが、クルトは表情を変えずに椅子に座る。ヤーニは、感心した様子でリリを見ていた。
説明を終えたリリは、ベッドに身を放り、だらしなく両手を広げ寝そべった。
「疲れちゃって汗びっしょり。クルト、服脱がすの手伝って。」
突然の指名に、クルトは赤面し首を振った。
そんなクルトに、シオンが小馬鹿にしたような言葉を送る。
「貴様は日が浅いから知らんのだろうが、リリはディセンションの感応をした後は一歩たりとも動けなくなる。それを手助けするのも我々の役目だ。」
動こうとしないクルトに変わり、シオンが服を脱がそうと近づくが、リリは尚もクルトを指名した。
クルトは、意を決したようにリリに近付き、身体を覆う黒いローブに手を触れた。
黒の下に隠された、白い素肌を露わにすると、纏わりついた雫を優しく拭う。
その途端、ヤーニも赤面し始めた。
そんな二人を見、リリは少々立腹した。
「お二人共、こんな事で動揺するなんて進化派失格ですよ。肉体なんて魂の台座でしかないんですから。」
「脱皮」し終えたリリは、鼻歌を歌うほどの陽気さを見せていた。
「旧文明よりもずっと昔。その時は全員裸でいても、羞恥という概念は無かったといいます。アセンションを遂げたら、そんな世界になるといいな。そうしたら、下らない欲望もなくなるかな?」
決意と夢を語るリリを間近にし、クルトは浮き足立つ思いに捕らわれていた――
――リリのチャネリングが流れてから数日…
マティスはとある街を駆けていた。
表情を整えつつも、その歩調は次第に早まり、焦りにも似たリズムを生み出していく。
やがてその足は森の茂みへと入り、靴には緑が染み付いていく。
息を整え、立ち尽くした先には、一本の巨木。
深く根を張る巨大な樹木を、マティスは見上げ、歩み寄る。
「おっと、俺達はそっちじゃないぜ。」
背後から茶化すように声がした。
驚き、振り返った先には、見慣れた、けれども妙に懐かしい二人の男女の姿があった。
潟躍、ネム。
マティスは二人を呼ぶと、「戻るのだけは誰よりも早いな」と悪態を付いた。
それに応え、潟躍はニヤリと微笑し、ネムはぽつりと呟いた。
「とりあえず、五体満足で戻ってこれた。デスペナはしたけど…」
デスペナ(デス・ペナルティー)は、肉体を失った魂が、肉体を作り上げ、再び活動を始める際の代償のことである。
魂が肉体を形付ける際、多大なフォトンエネルギーが必要になる。
多くの場合、そのエネルギーは、ストレージタグにて、フォトン化した物質のエネルギーを使用する。
そのため、肉体を得た時、体内にストレージしていた物を数多く損失する事になる。
「潟躍は棍、わたしはパワーストーンを何個か無くした。」
デスペナなんていつぶりか… 言いながら、ネムは思いを巡らせていた。
そんなネムに、無くした物の代わりだとマティスは二枚のパープルプレートを差し出した。
それはヤーニとの戦いの最中、潟躍とネムが落としていたものだった。
「いざという時に使えるかもしれん。大事にしろ。」
その時、三人の頭上に聳えた巨木が、風に揺られ葉を落とす。
弧を描き、地に吸い寄せられる無数の葉を見ながら、潟躍は真顔で話し始めた。
「マティス。ありがとな。あの時お前が俺をリスボーンさせなかったら今頃ヤーニに…」
真剣な潟躍を見、マティスは鼻でそれを笑った。そして、背を後ろに向け、歩き始めた。
さっさと行くぞと背中で語るマティスに、今度は潟躍が笑いを見せた。
「あの時と同じだな。…そういえば、俺達の始まりはこの場所だったな。」
懐古の風が、潟躍の心を古い光景へと運んだ。
「下らん思い出話はよすんだな。」
歩きながら昔話をし始めた潟躍に、マティスは冷たく言い放つ。
だが潟躍は尚も続ける。その口は雲雀の如し。
ネムはじっとその話を聞いていた――
――「さすがはツインバイオレッド。あんた達が居ればこの島は安泰だな。」
街一番のチャットルームは、賑わいをみせていた。
その騒ぎ中心に居る二人は、自信と誇りに満ち、周りと祝杯を上げていた。
――街に現れた数十もの猛獣撃破。
それを雑作もなく行ったのは、ツインバイオレッドと呼ばれた潟躍とネムだった。
二人が住む土地「メリア」は大陸ムゥの離島であり、ムゥから訪れに来る者は少なかった。
そのため、荒らしや猛獣といった内憂は、島に住むアフィリエイターが担当し、平穏を保っていた。
その中で、特に腕の立つ潟躍とネムは、お互いバイオレッドという共通点から「ツインバイオレッド」と呼ばれ羨まれていたのだった。
「あんな達ほど腕の立つ者なら、島から出てひと暴れしたいんじゃないかい?」
それは、島民達の口癖だった。
それに応える潟躍の一言も、いつしか自身の口癖になっていた。
「俺が、いや俺たちが居なきゃ誰がこの島を守るんだい?」
それを聞き、陽気に口笛を吹く村人の行動は、潟躍の仕事の達成感を盛り上げる。
憂いを断ち、島民とバカ騒ぎを送る日々。 そんな悠久の時に、一陣の風が吹き荒れる――
―――――――――
――いつもと変わらず賑わいを見せるメリア一のチャットルーム。
だが、この日はいつもの騒ぎとは少々異なるものだった。
「旅人さん。あんたもなかなかやるな。」
客達は、そう一人のアフィリエイターをもてはやし、名を聞いた。
――マティス=ハーウェイ。
旅人はそう名乗り、鬱陶しそうに紅茶を飲んだ。
――森に現れた数十もの猛獣撃破。
マティスが討伐したその数は、潟躍達と並ぶものだった。
その評判は、すぐに島に吹く風に乗り、潟躍達の耳に伝わった。
「あんたがマティスか。なかなか腕が立つそうだな。」
一時間もしない内に、潟躍はマティスの元を訪れた。
二人の邂逅に、チャットルームは火がつき熱を持つ。燃えたぎる室内の中、扉の前には氷が一つ。それは、冷めた視線を観衆に送るネムである。
何か用か、と紅茶を喉に流しながらマティスは言った。
それに対し、潟躍は不敵に笑い言葉を返した。
「新しく入ったアフィリエイト(店内広告)によると、森にツチノコが大量発生しているそうだ。」
群れを成すツチノコという猛獣は、アフィリエイターといえども、一人で抑止するには困難と言われている。
そこで潟躍は、マティスに討伐の協力を頼みに来たのだった。だが、その内に宿る真の目的は、当にマティスに見透かされていた。
「俺と腕比べをしたいのなら、そう言えばいいだろう。」
マティスはさも厄介そうに周りを見つめ、ため息を付いた。
周りではやし立てる声…潟躍の「闘視」を前に、話を断れない状況であると察したからだ。
かくして、奇妙な争いの幕が下りた。
ツチノコの尻尾を多く持ち帰った者が勝者、という事で話は一致。また、尻尾はストレージタグで持ち帰るという事となった。
「あんたは確かタグ師でもあるそうだな。俺はタグは使えないから、相棒のタグ師を連れて行く。もちろん討伐は俺一人でやる。」
マティスは億劫そうに頷き、巻き込まれたネムも面倒くさそうに頷いた。
数時間後――
―――――――――
――森の中。
潟躍は茂みに入ると、手にした棍を振るった。
途端、甲高い声と共に高さ一メートルの蛇に似た寸胴の生物が、潟躍に向かい無数に飛びかかる。
ツチノコである。
潟躍は、臆する事なく棍をツチノコに叩きつけ、一つ、また一つと鳴き声を消していった。
「これだけ討伐すれば安全だろう。あいつにも勝ててるだろうしな。」
満足げな表情で潟躍は言った。
周りには死に絶えたツチノコ達。
ツチノコの尻尾の切り取り、一カ所にかき集める。そして、尻尾の付け根を念入りに潰していった。
アセンションを遂げたツチノコは、個々の生命力よりも繁殖力を進化させた生物。
尻尾の付け根部分には第二の脳があり、自らがそれを切り離すと、尻尾から新たな個体が生まれ、爆発的に数を増やす。
そのため、尻尾は念入りに駆除しなければならないのだ。
全ての処置を終えたツチノコの尻尾を、ネムはストレージタグで体へ取り込んでいった。
依頼達成の瞬間。
後は街へ戻るだけだが、なぜかネムは動こうとしなかった。
「まだ、数が足りない気がする。」
言うとネムは、潟躍に再度ツチノコ討伐を促した。
もう十分だと潟躍は言うが、ネムは俄然首を振る。
意外に潟躍よりも本気で勝負に取り組んでいるらしい。
潟躍は、数十分掛けネムを説得し、ようやく帰路へと着いた――
――チャットルーム。
先に到着していたマティスは、呑気にコーヒーを飲んでいた。
そこへ潟躍達が戻り、周りは先ほど同様騒ぎ出す。
両者向き合い、結果発表。
互いにペーストタグで尻尾を取り出した時、土と緑が混じった様な独特の匂いが辺りに立ち込めた。
固唾を呑み見守る観衆… と二人を凝縮するネム。
結果は…
僅差だが、マティスの方が上だった。
その事実に、潟躍は目を見開き立ち尽くす。同様に、観衆も動揺していた。
「…まぁ、ツチノコはクリスタルのほうが対処しやすいからな。別の奴ならどうなるか解らん。」
そう言い、潟躍は再度勝負を提示した。
それから一週間、奇妙な戦いが繰り広げられた。
猛獣討伐、荒らし浄化。果ては、木の実の採取といったものまで勝負となり、毎日が流れる。
だが、マティスはそれらを全て制し潟躍を動揺させた。
勝負に対し、島民の興味が薄れていった頃、潟躍はマティスを森の中に呼び出した。
小高い木が一本、辺りを見守る様に佇む地。
潟躍はその前でマティスを睨み話し掛けた。
「あんたの腕は認める。だがあんたのせいで、俺の名誉は傷ついた。だからその借りは直接払わせて貰う。」
なんとも理不尽な話である。が、マティスは黙って話を聞くと予想外の言葉を返した。
「俺もお前さんの腕は認めている。俺とここまで付き合えたのはお前さんが初めてだからな。」
それを嫌味に聞いたのか、潟躍は憤慨し棍を手にした。
止めさせようとネムが声を発するが、潟躍は既に臨戦態勢。マティスに短刀を手にするよう促し走り出す。
それを受け、マティスも短刀を取り出し潟躍に向かった。
バイオレット特有の浮遊で瞬く間に詰め寄る潟躍。
対してマティスは、クリスタル特有の卓越した身体能力、反射運動を持って振り翳される数々の棍をすり抜ける。
そして、片手で棍のうねりを受け止め一言。
「お前さん、聞くところによると、随分長い間この島でアフィリエイトをしているそうだな。なぜ、島を出ようとせず、ここに依存するか…俺が当ててやろうか?」
潟躍は、何も言わず左手から思念波を放ち、マティスを吹き飛ばした。
宙に舞った棍を念動力で引き寄せると、右手で掴みマティスを睨む。
マティスも睨み返し、仁王立ちを決め込んだ。
「お前さんが島から出ないのは、島を守りたいからじゃない。ここで英雄気取りをしているのが好きだからだ。安いプライドだな。」
その言葉に、堪忍袋の尾が切れた潟躍は、なりふり構わず殴りに掛かる。
だが、クリスタル相手に生身の力でかなうはずもない。マティスの体当たりをまともに受け、潟躍は後ろの木に激突した。
悶える潟躍のもとへ、短刀を構えたマティスが迫る。その目は、荒らしを浄化する時の殺気立った光を宿していた。
だが、マティスの歩みは、突如現れたネムにより塞がれた。
「あなたの言うとおり、潟躍はここを出ないんじゃない。…出る勇気がないだけ。」
両手を広げ、更に言葉を紡ぐ。
「でも、それはわたしも同じ。本当は広い世界に出てみたい。でも、ここでの生活を捨てられなかった。だから、潟躍への侮辱はわたしが受ける。」
ネムはタグを書く動作を始め、戦う意志を示した。
だが、マティスは後ろを向き去っていく。
「解っているならいい。お前さん達はここに縛られたままでは惜しい逸材だと思ってな。」
去りゆくマティスの後ろ姿を、ネムはじっと見つめ、潟躍は茫然と眺めていた――
―――――――――
――「まぁ、まさかあの後、俺と一緒に行きたいと泣きついてくるとは思わなかったがな。」
いつの間にか、昔話を始めた潟躍よりも、マティスの方が懐古に浸っていた。
言い出しっぺの潟躍は、恥ずかしい過去を指摘され、もう止めろと頭を抱える。
とその時…
「…居る。」
ネムが指差した先、そこの茂みが怪しく動く。
甲高い鳴き声、複数の地を這う不気味な音。
昔話に釣られてか、やって来たのはツチノコだった。
あの時ぶりに勝負でもしようか、とマティスが挑発し、潟躍は二つ返事でそれを受ける。
「今度は、わたしも挑戦する。」
突然のネムの宣告に、マティス達は固まった。
その間ネムは、ラインタグでツチノコ達を問答無用になぎ払う。
リスボーン直後とは思えぬその動きを見、潟躍は負けじと身を乗り出した。
「やれやれ、本当に変わらない奴らだ。」
「そういうお前は、十年前より少し丸くなったな。」
マティスの呟きに、すかさず潟躍は言葉を返す。
佇む木々は、三人を鼓舞するように激しく揺れていた――
第十九話「巨木の下で」 完
十九話登場人物集
※イラスト協力者「そぼぼん」
※登場人物一部割愛
サム
リリ=アンタレス
潟躍
ネム