光連闇散(こうれんあんさん)
――「ざわ…カ。」
霧深い山の中、一人の荒らしが消え入るような声を上げた。
それを前にし、佇む男はマティス=ハーウェイ。
右手には役目を終えた短刀が握られていた。装飾されたクオーツは、眠りにつく合図をする様に淡い輝きを放っていた。
山の中、霧は一層深くなり、荒らしも遂に霧となる。
マティスは短刀を地面に突き刺し、両手を開き天を仰ぐ仕草を始めた。
仲間である潟躍達だけが知る、マティスが浄化の際に行う行為である。
今、マティスは「オマ」という街に居た。
オマは、標高の高い場所にある天空の街。 そこは、人が集まるには不条理な条件の土地である。
だが一方で、大陸の中央にそびえる山々を越える旅人達にとって、絶好の休憩場となるため、そうした者達により人口は多く栄えていた。
荒らしの浄化を終えた後、マティスはこの街のチャットルームを訪れた。
依頼人から報酬を貰うためである。
「さすがマティスさん。お一人でも頼りになります。」
依頼人の男は、労いつつ少し多め報酬を差し出した。
マティスはそれを受け取り席を立つ。
「目的地はどこなんですか?」
聞かれ、マティスは振り向かずにこう言った。
「連れを迎えにメリアにな。」
チャットルームを出、列車が来るホームに着く。
近づく汽笛。それが目の前に止まった時、マティスは、人の少ない最後尾を目指し乗り込んだ。
最後尾は人が少なく、それゆえ列車の揺れる音だけが支配していた。
マティスは静かな場所を好む男である。
列車の揺れる音は、人々の労いの言葉より心地の良いものだった。
その中に身を置いて、一人目を閉じチャネリングを始めた――
―――――――――
――一方、ここは列車の中央部。
走り始めた列車の中、肩を上下させ席に座るザック達の姿があった。
「なんとか間に合いましたね。ラーソさん。」
ザック達は、東にある町「ワイス」を目指すため、オマの列車を活用していた。
疲労する二人の瞳に、車窓の風景が入り込む。
ザック達が座る列車中央部は、最後尾ほど静かなものではなかった。
あちこちから人の話し声が聞こえ、それは時折列車の音をかき消すほどに騒がしかった。
列車の揺れと、人々の談笑を聞きながら小一時間…
ザック達は、古くから伝わる「オセロ」というゲームに興じていた。
戦局は、ザックの黒石の方が多く、このままではラーソの白石が飲み込まれるかと思われた。
だが、先ほどまで白石を支配せんとしていた黒石が、ラーソの一手により次第に揺らぎ、戦況は一変。
いつしか黒石の立場は逆転していた。
「積みました。ラーソさん、強いんですね。」
お手上げだ、とザックが両手を上げ言った。
「オセロは序盤から多く石を取ると不利になるのよ。」
不意に、席の後ろから少女の声が聞こえた。
振り返ると、得意気な様子でザックを見つめる少女の姿があった。
紗流と名乗る十七歳位のこの少女は、オセロが得意らしく、楽しそうに興じる二人を見、ついつい覗き込んでしまったらしい。
ザックを小馬鹿にしつつ、ラーソにオセロの対局をしたいと騒ぎだす。
あまり騒げば周りに迷惑が掛かると注意をするが、紗流は気にせず話を進めた。
「大丈夫よ。みんなあたしを注意出来ないから。出来るのはあなた達だけ。」
紗流は笑ってそう言った。
事実、周りは誰一人として紗流を注意しない。
――仕方がない。
ラーソが対局を受けようと、石を並べる。
と、その時…
「あ、いけない!そろそろ父さんの所に行かないと…」
急にそう告げたかと思うと、紗流は慌てて席を離れ、姿を消した。
鳩が豆鉄砲を食った様に、残された二人は呆気に取られる。
「…あ、そういえば、今のオセロでこの写真を思い出しました。」
空気を変えようと、ザックが一枚の写真を取り出した。
夜に巻き込まれた時に写したというその写真は、暗闇の中、それに負けんとカメラの光を反射させ、輝きを放つ雪景色が写されていた。
それを見て、ラーソの瞳も輝いた。
雪が好きだと話し、暗闇に映るその雪達を愛おしげに見つめる。
ザックは頬を中指で掻きながら、この写真は撮るのに失敗したものだと告げた。
この写真をプレゼントしたいが、失敗作をあげるのは忍びない… ザックがそう迷う中、ラーソは気にしない素振りで受け取ると、写真の雪のように健気な表情で微笑んだ。
――それから数時間。
車窓の風景が、森から草原へと変わっていた。
その変わり目を見ることなく、ザックは軽い眠りの中に身を置いていた。
だが、それは突然終わりを告げる。
突如、車内を激しい揺れが襲った。
乗客は動転し、辺りは惨事となり果てる。
ザックが飛び起きた時、列車は既に走りを止め、オセロの石が四方八方に飛び散っていた。
それを拾うラーソの動きが止まっているのを見、ザックは状況を把握した。
(――荒らしか。)
ラグにより運転に支障が出たのだろう。そう予想したザックは、一目散に最前列へと向かった。
魂の力を引き出し、身体を半霊化させ、人や壁をすり抜け駆ける。
列車の正面。そこには案の定、列車の走りを邪魔する若い男の荒らしが立っていた。
その顔は、憎悪ではなく、荒らしには珍しい笑顔を覗かせていた。
「アフィリエイターか。強めのラグを起こした割には速かったな。」
発した言葉は、荒らし特有の破綻したものではなかった。
この荒らしには自我がある。
そう判断したザックは、身構えながらも話し合いを始めた。
自我があるなら荒らしから戻れるはず… そう話したザックに対し、男は笑いながら掌をかざすと、ザックめがけ思念波を放った。
これが荒らしの返答らしい。
ならば、ひとまず落ち着かせるのが先…
思念波を防いだザックは、再び半霊化し戦う意志を示した。
線路が破壊される前に勝負を決めようと、ザックはバイオレット特有の動き「テレポーテーション」で一気に間合いへと詰め寄った。
荒らしですら感知出来ないその動きは、動揺を誘うのに十分な材料となった。
ザックは、動揺で動きが鈍った男に対し、力強い脚撃を決め、豪快に吹き飛ばした。
大打撃に、荒らしは顔を歪める。
だが、荒らしも伊達ではない。瞬時に最善な方法を選択し、行動を始めた。
地に叩きつけられる瞬間、両手で思念波を放ち、自身をその反動で宙に浮かせ、受け身を取る。そして、すさかず打撃を受けた部分に手をあてがい、そこに自身の生体磁場を集中させ、魂の傷を和らげた。
理性のある荒らしは、通常の者より頭が回るぶん、浄化もまた一苦労を有するのだ。
追撃に来たザックの拳を浮上し避けると、荒らしは再び思念波を放った。
ザックは眼力から思念波を発し、それを相殺した。
「次々いくぞ。」
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挑発しながら作りあげたタグは、ブロックタグと言う、フォトンエネルギーを一カ所に凝縮させ、特殊な鉱物に変換させるタグだった。
フォトンエネルギーが一カ所に濃縮され、そこから「ヒヒイロカネ(オリハルコン)」と呼ばれる物質が生成された。
正方形状に作られたヒヒイロカネは、荒らしの思念で形を変え、無数の細長い針状に変化した。
それは、矢のように勢い良く飛んでくる。
それを見、ザックは珍しく焦り出した。
このヒヒイロカネには生体磁場が残留していない。そのため、半物質半霊化した今のザックは、それを透過することが出来る。
だが、透過した場合、背後にある列車に物体がぶつかり惨事となる。避けるわけには行かなかった。
ザックは、迫りくる剛針を、体中から放出した思念波で押し止めた。
だが、この行動は荒らしの思う壺だった。
吹き飛んだ剛針が、突然一箇所に固まると、一本の槍を思わせる形に変化し、列車めがけ飛んでいった。
急ぎ、それを止めようとザックが背後を見せた途端、荒らしは掌から強力な思念波を放ち、ザックに深手を負わせた。
自我がある荒らしだからこそ出来る、狡猾な戦略だった。
このままでは列車が危ない。
ザックは自身の身をかえりみず、必死でそれを止めようと動いた。
向かっていく巨大な槍。それを避けるすべを知らない列車は、死を迎え入れる棺桶をイメージさせた。
それを見つめるザックの脳裏に浮かぶものは、焦りではなく、いつか見た過去の情景だった。
桜の下でソシノと二人話していた懐かしい思い出――
「わたし、列車が怖いの。あの日の事思い出すから…」
悲しげにそう話したソシノの表情が、目の前の列車と重なった。
その時、再び背後を思念波が襲い、ザックの両手は地に付いた。
もう駄目か…
荒らしは腕を組み、のんきに口笛を吹いていた。
だが、それもつかの間、荒らしも予期せぬ出来事が起こった。
「待っていた甲斐があったな。」
一人の男が、颯爽と列車の屋根から飛び降り、飛んでくる剛槍を、横から両手で掴み受け止めた。
その力は、クリスタルであることを物語っていた。
「自我がある荒らしか。」
男は、担いだ剛槍を荒らし目掛けて放り投げ、同時に自身も駆け出した。
瞬く間に距離を詰め寄るが、やはりその身体は半透明ではない。
自我はあるが、凶悪な荒らしにはもはや遠慮は出来ない… ザックもついに決意し、男と共に荒らしを攻め立てた。
「分が悪いか…」
荒らしは一言呟くと、光に包まれ消えていった。
「ありがとうございます。…マティスさんですよね。あなたが居なければ今頃どうなっていたか…」
ザックは、体の傷を忘れ、安堵した様子でマティスに礼を言った。
マティスもまた、そんなザックの戦いを賛じた。
「お前さんも大したものだ。」
数分後、列車は再び動き出した――
―――――――――
――「と、言うわけで、危ない所をマティスさんに助けられたわけです。」
列車の中、ザックはマティスの勇敢さを讃えていた。
少し興奮気味に話すその仕草に、ラーソはこみ上げる笑いを覚えていた。
小さく笑うラーソに、ザックは恥ずかしそうに頬を掻いた。
笑い合う二人の声が車内を伝う。
「楽しそうですな。」
笑い声につられてか、二人の前に、壮年の旅人らしい出で立ちをした男が現れた。
男は「ハーモンド」と名乗り、自分もしがない荒らし浄化のアフィリエイターだと告げた。
あの時、突然の出来事に腰を抜かしていた矢先、ザックがいち早く荒らしに向かったおかげでこの列車は救われた…
その事で礼を言いに来たのだという。
「礼ならマティスさんに言って下さい。彼もこの車内に居るはずですから。」
言われ、ハーモンドはもう礼は済んでいると返事を返した。
そして更に、ザックにどこまで行くのかを聞いてきた。
目的地はワイス。そう告げた途端、ハーモンドは安堵の表情を浮かべた。
話によると、先ほどの荒らしは、最近この辺りの路線に頻繁に現れ妨害しにくるのだという。次に来る場合は、モバンから北側に伸びる線路沿いだと予想されるため、今アフィリエイターが待機しているとのことだった。
「ワイス行きでしたら、荒らしの範囲外なので安心ですな。」
男は一方的に話し終えると、向こうの車両に消えていった。
「…あの人、なんか嘘を言ってる。そんな気がしますわ。」
怪訝な表情を覗かせて、ラーソが言った。
占術師の人を見る印象というものは、馬鹿に出来ないものがある。 常に人を見ている占術師だからこそ、普通では解らない所でその人の本質を見抜くことは良くあることなのである。
今のラーソの言葉は、ザックにハーモンドの警戒をさせることになった。
列車がそろそろモバンに到着するという時、ザックはある提案をした。
「一度、モバンで降りてみようと思うのですが…」
ハーモンドの言葉に疑念を抱いていたラーソは、二つ返事でそれを受けた。
列車はやがて、モバンへとたどり着いた。
二人は列車を降り、ホームに降り立つ。
ここから、ハーモンドの言う通り、北の線路沿いにアフィリエイターが集まるのかを確かめに行くのが目的だった。
早速、線路沿いへ歩を進めようとした時、ザックは突然慌てた様子でテレパシーを始めた。
送信先は、サムの介護人であるルシータである。
サムは時間にうるさいため、遅れる場合は報告をすることになっていたのだ。
『実は、少し予定より遅れそうです。サムはどうしていますか?』
『サムは、ちぃちゃんと遊んでます。泣きながらちぃの馬鹿って言ってますよ。』
それは、遊んでいるのとは違うような… そう思いはしたが、ともあれ、機嫌を損ねてはいない様だった。
「やはりお前さんもここに居たか。」
テレパシーを終えたザックの背後から、男の呼び声が掛かった。
振り返ると、マティスが右手を差し出し立っていた。
再会に喜び、ザックは握手を交わす。だが、マティスの言った「お前さんも」という意味が解らない。
「お前さん達もハーモンドに胡散臭い話を聞かされたのだろう。俺も奴の話が本当か気になってな。」
マティスも勘がいいのか、ハーモンドの言葉に疑念を抱いた様だった。
「今から奴の言っていた事が本当か確かめに行くんだろう?」
ザックが質問に頷くと、マティスは不敵な笑みを浮かべた。
どうやら、一緒に行かないかと誘いに来たらしい。
マティスも加わり、一層の心強さを手に入れたザック達は、勇み線路沿いへと向かった――
―――――――――
――歩きながら、ザックはカメラを手にし周りの風景を撮影していた。
そのレンズに映るものは、眩しいくらいの緑を見せる草原。
冷たい風が、青空の下を歩くザック達を、弄ぶ様に吹き抜けた。
道中、ラーソは先ほどザックが気にしていたサムのことを聞いていた。
アバター中の事故で身体が変化した子供。辛い境遇の中、たくましく元気に生きている子だとザックは言った。
「あと、サムは占術師に憧れてます。ラーソさんが話を聞かせれば、きっと喜ぶと思います。」
聞いて、ラーソは嬉しそうに頷いた。
やがて、足早に歩いていた三人の足がぴたりと止まった。
「この辺でいいですわね。」
ラーソの言葉に二人が頷く。
本当に荒らしが来るのか、また、アフィリエイターが来るのかをこの場所で未来予知を使い調べるのが狙いだった。
数分後…
「荒らしは来ますわ。けど、アフィリエイターが見当たらない…」
一時間後に、荒らしが現れる光景がラーソには見えた。
目を開き、未来予知を終えると疲れたのかその場に座り込む。
「数分で終えるとは、なかなかいい占術師だな。」
マティスに言われ、ラーソは笑みを見せた。
ともかく、これでハーモンドの話は信憑性が低いことがはっきりとした。
荒らしが現れるというのに、ハーモンドが言っていたアフィリエイターの姿が一人も見えない。これは、嘘をついているということで間違いはなさそうだった。
草原に吹く風が、時間が経つにつれ強くなっていく。
それは、嵐の前触れのように、三人の身体を冷たくした。
そして、いよいよ時間が訪れる。
「ラーソさんは、向こうに隠れていて下さい。」
促され、ラーソは遥か後方へと身を置いた。
そして、マティスは人差し指を宙へと突き出し、タグを書き始めた。
マティスの体から光が溢れ、その手には短刀が握られた。
マティスがタグ師だとは知らなかったザックは、その光景に目を丸くした。
「本当は専用のタグ師が居るからな。めったにタグは使わない。見ていて不慣れだと思ったろう?」
そう言い、少し間を置くと、マティスは仲間のネムの話を始めた。
――誰よりも優れたタグ師にして占術師。
その口から出た言葉は、マティスには似つかわしくない様なほめ言葉だった。
直後、線路の向こう側に不気味な光が出現した。
そこから現れたものは、先ほどと同じ荒らしだった。
「またお前らか…どこまでも仕事の邪魔をする。」
ザック達を見るなり、荒らしは気だるそうに宙へと浮いた。
「仕事」という言葉が解せないマティスは、短刀を手に取ると目的は何かと問いただした。
「お前らも知っているだろう。俺達は破壊衝動を抑えられない人種だ。だが、そんな俺たちを頼りにする奴もこの世に居るんだよ。」
悪びれも無く荒らしは言った。
それを聞き、マティスは理解したのか、小さく舌打ちし呟いた。
「なるほど、煽り屋か。」
――煽り屋とは、荒らしの強力な力を利用し、自分の利益にしようとする者である。
この荒らしもそんな煽り屋に利用されている。マティスはそう直感した。
列車が来た時ラグを起こし、乗客が怯んでいる間、あらかじめラグに備えていた煽り屋が乗客から資金を奪う… それは、アセンションを遂げた人類とは思えないほどの蛮行であった。
「俺は破壊衝動を満たし、相棒は懐を満たす。需要と供給ってやつだな。」
言いながら、荒らしは両手で思念波を発した。
間一髪、二人はそれを横に避ける。
「俺が思念波を受け止める。お前さんは奴を…」
バイオレットは、半霊化出来るその特性上、物理的な外部干渉に対してはクリスタルより対応出来る。が、逆に思念波等の霊的外部干渉にはクリスタルの方が対処しやすい。マティスはその特性を生かす戦いを選んだ。
ザックは小さく頷くと、その場を離れ荒らしに向かった。
迫るザックに、荒らしは再び両手から思念波を放つ。
それを見、マティスが地を思い切り蹴り出し、バイオレットを思わせる素早い動きでザックの前に現れ、思念波を防いだ。
その行動に、荒らしは一瞬たじろいだ。
その隙をザックは見逃さない。
右掌で手刀を作り、それを剣の如く鋭く振るい、荒らしの首筋をものの見事に切り裂いた。
苦しみもがく荒らし。だが、それでも戦う姿勢を崩さない。ザックに対し、拳を突き攻め立てた。
ザックはそれを両手で弾き、雑作もなく受け流した。
「あの動きは…」
一連の動作は、マティスさえも感嘆させるものだった。
拳を流し、荒らしが態勢を崩した時、ザックは不意に姿勢を低くした。
後方に伸ばした左足で地を蹴り、右肘から体当たりし、殴打。
荒らしの胸元は、ザックの右肘に込められた魂力により圧迫された。
「くそ…」
一言呟いた時、荒らしは遂に浄化し消え去った。
一見落着。
冷たく吹いていた風も、今は心地よくすら感じられ、戦いの疲れを吹き飛ばす。
心配し駆けつけたラーソも、二人の無事を安堵し喜んだ。
ザックは、事件の背後には煽り屋が居ることをラーソに伝えた。
その間マティスは、二人と離れ、線路を挟んだ向こう側で、なにやら思いを巡らせていた。
やがて、向こうから列車の走る音が聞こえはじめた。
その音が迫ってきた時、マティスは声を張り上げ向こうの二人に言った。
「お前さん達、俺が目的地に着くまで一緒に付き合ってくれないか?」
ザックが返事をするより早く、列車が会話を遮るようにマティスとの間を通り過ぎた。
その列車の中、ザック達を見つめ、小さく舌打ちをするハーモンドがいた。
(――まぁいい。次がある。…全ては紗流のためなんだ。)
混沌としたその心を乗せ、列車は一陣の風となり、草原の中を吹き抜けた――
第十四話「光連闇散」 完
十四話登場人物集
※イラスト協力者「そぼぼん」
※登場人物一部割愛
マティス=ハーウェイ
紗流
ルシータ
ハーモンド