6+1の日常
少しばかり時間が経過します。
6人兄弟?の下から3番目として新堂家での生活を始めた希は、母との二人暮らしから男兄弟ばかりの中で生活することに戸惑っていた。
特に同居2日目、悠が出勤する時には端から見てもわかるほど取り残される怯えをにじませていた。不安そうに玄関で自分を見上げ、軽くハグをすると背伸びして頬に見送りのキスをする希の額に出がけのキスをし、軽く頭を撫でた。
希が新堂家に引き取られてから10日が過ぎた。
今では同居2日目の朝の光景は、毎朝の光景、日常となり、お互いに様子を窺い合い、距離をとっていた希と兄弟達は、その日、仕事に出ていた悠が帰って来ると、玄関で抱きついて泣き始めた希を慰める役を取り合い、悠に叱られるのに驚いた希が泣き止み笑うという事件をきっかけに、距離が縮まった。
それ以後、年少組はいかに希を笑わせ、独占できるかの争奪戦を繰り広げ、年長者は弟達がやりすぎないように注意しつつ、かわいい妹を弟達以上に大事に甘やかしていた。
悪夢にうなされ、一時は心身の疲れから青白くやつれた印象があった希は、悠が父親の様に傍らにいることによって安眠を取り戻し始めていた。少し悠に依存しすぎているきらいはあるが、大家族特有の必ず誰かがそばにいる生活は、突然ひとりぼっちになってしまった希の寂しさを紛らわせ、癒すには良い環境で、少しずつではあるが楽しそうに笑う事が増えていた。
新堂家の兄弟達は初めてできた女の兄弟の存在に多かれ少なかれ浮かれ、兄達は弟にする以上に甘やかし、これまでのそれぞれが中心に動いていた家族が希中心になった。
唯一の弟である慎は末っ子の割に甘えることが少なかったのが、希にだけは渉と争うように甘えた。自分よりも小さい兄弟ができたと喜んだ翼は、まるで生まれたときから一緒にいる双子であるかのように希に同調し、夜うなされるため希と一緒に悠を挟んでベッドに入ることさえあった。
希はこれまでいなかった母親以外の家族から愛され、甘やかされ甘やかすことをこそばゆいがうれしく感じ、徐々に順応していた。
「ねえ、私のお父さんってどんな人なのかな?」
一日惚けている事も多かった希が、渉が昼寝中なのを良い事に希を独占し、膝枕で一緒にテレビを見ていた慎にふとこぼした。
「お父さんって、お母さんから何も聞いてないの?」
翼を頭とする新堂家の年少組は、希の詳しい生い立ちを兄からきくよりも、家族として受け入れ、庇護することで母親を失った希の心を埋めようとしていた。
「奈緒さんはお父さんのこと話す事あるでしょ?
でも、私のお母さんはお父さんの事ちゃんと話してくれた事無いの。聞くといつも、とても優しい人だったって言うけど、それ以上は話してくれた事ない。」
「ウチは奈緒さんよりも父さんの方が奈緒さんのこと話すかな?
父さんは奈緒さんにくっついてくるモノだし・・・
希は自分のお父さんの事知りたい?」
自分の問いに頷いた希に、慎は起き上がるとにっこりと微笑んで言った。
「じゃあ、探そう。」
「でも・・・何も知らないよ。」
「大丈夫。僕らが一緒に探すから。
希のためならハル兄もカズ兄も手伝ってくれるよ?」
不安そうに見つめる希を励ますように見つめ返す。
写真ですら父親を知らない希が父親という存在に興味を持ったのは、今から一歩踏み出そうとしている表れのように慎は感じた。
しばらく考えるようにうつむいていた希が、こくんと首を振った。
「手伝ってくれる?」
年下の慎の目にもかわいらしく首を傾げた希を思わず引き寄せた。
「もちろん。希は僕らの大事な家族なんだから。」
希が慎の肩に甘えるように頬を寄せると、ちょうどリビングに入って来た翼がすねたように弟より自分に甘えるように言いながら希を背後から抱きしめる。
「翼、希が甘えてるんじゃなくて、僕がかわいい希を抱きしめてるの。」
慎のかわいい発言に翼は自分そっくりなのだから当たり前だと言いつつ、年長者をたてろと騒いだ。そのわがままな言い分に唖然として力の抜けた慎の腕から希を取りあげると、翼はさらに希のかわいさをいい募ろうと息を吸い込んだ。
「それよりも、希の本当のお父さんを一緒に探そうよ。」
翼にしてみれば唐突な話にいかぶしんでいると、慎が先ほどまでの二人の会話を説明し、翼も一緒にやろうと誘う。
不安げに肩越しに見上げて来る希に、もちろんと笑顔で返す。
「慎、早く皆を呼んでこいよ。
さっそく作戦会議だ!」
新たなる問題へ突入!




