静寂
暴走が続くのか?
そのままどれくらいの時間が経ったのか、一馬に促されての夕食の準備に戻った翼がさせる音だけがキッチンから聞こえてくる。
おいしそうな匂いが漂い、炊飯器が出来上がりを知らせる。
いつのまにか希のしゃくり上げる声は止まり、規則正しい呼吸音だけが聞こえる。
落ち着くのとともに、希は悠に抱えられたまままた眠り出したようで、それぞれ知らず知らずに吐息をつく。
まだ手を休めること無く自分にしがみつく希の頭を撫でている悠に玲と一馬は心配げな視線を送る。
「大丈夫だ。はっきりと目覚めたわけじゃないから、次に起こした時にはさっきのことは覚えていないだろうから。」
悠の言葉に、今度は安堵の吐息をもらし、キッチンでひたすら鍋を見つめる翼を呼ぶ。
一歩離れた場所に立ち、まだ泣くのをこらえたような顔でいる翼を手招きで自分の隣に座らせると、頭を撫でる。
「翼、大丈夫だよ。
希は夢の途中で起きたから混乱していただけだよ。」
「でも・・・」
「大丈夫だ。ご飯ができたんだろう?」
まだまごついている翼を促すと、少し逡巡したあと手を伸ばした翼は、悠の胸に顔を埋める様にして眠る希の顔を覗き込む様にしてその頬に手を添える。
「希、ご飯ができるよ。」
「ん・・・」
むずかる様に顔を悠の胸に押し付ける。
「希、起きて。」
先ほどの衝撃ですぐに起きたのが嘘の様に、希は悠にしがみつき起きる気配がない。
固唾をのんで見守っていた一馬と玲は先ほどとは全く違う反応に、ため息をつく。
その場にいる悠以外が戸惑う中、希は悠の胸元に潜り込む様に体制を変える。
もう少し強く起こそうかと迷っている翼の後ろから、セナを伴った渉がやって来る。
「ぼくおなかすいちゃった。」




