Brave 5
マサイアスからの情報を頼りに数日を掛けて遺跡周辺を捜索するロザリアだったが
デストの足取りは掴めないままX Braveに来て早2週間がたった
1人で探すのには限界があると判断しペルセフォネの諜報部にも
資料を提供して捜索を依頼する
「まったく…1週間そこらで終わると思っていたがまさかこれ程掛かるとは…」
支部長室つまりジュリアの部屋でロザリアは用意されたお茶菓子を摘みながら
諜報部の結果を待っていた
捜索自体はロザリアも出来るが諜報部はそれに特化したプロ
自分より遥かに効率の良い方法で捜索を出来る所に頼んだ方が早いと踏んだのだ
「まあ私はロザと一緒に長い時間居られるから良いんだけどね♪」
「まったくジュリアは気楽で良いのう」
そんな他愛も無い雑談をしているとペルセフォネが大慌てで支部長室に転がり込んでくる
「ロザリアさん!ロザリアさん!!ロザリアさん!!!」
見るからに何ならかの情報を入手したのは分かるがロザリアには鬱陶しいだけだった
「落ち着け…一体どうしたのじゃ?」
「つい3時間前にデストに合ったと言う人物から情報が」
その事にロザリアとジュリアは思わずペルセフォネに急接近
「どこでじゃ!!!」
「ペル凄いよ!流石僕が見込んだだけの事はあるね♪」
「2人とも落ち着いてください
どうやらその人が聞いた話では今日の正午に遺跡付近にデストが現れるそうです」
「分かった!ペル感謝するぞ!」
そう言い残しロザリアは部屋を飛び出そうとするとジュリアがそれを止める
「待ったロザ!」
転びそうになる姿勢を無理に建て直しジュリアの方を向く
「何じゃ!?もう時間が無いのじゃぞ!?」
「今の君がデストに勝てるの?」
「!?」
ジュリアは真剣な表情でロザリアに尋ねる
「この前の戦いで相手に武神降臨はおろか技すら出さす事が出来なかったんだよね?
そんなロザが1人でデストに立ち向かうのは危険すぎるよ」
言い返したいがジュリアの言う事は事実
最初から全力で飛ばして行ったロザリアだったがデストにはまるで歯が立たなかった
顔をゆがめるロザリアの表情を見てジュリアが提案をする
「僕がついていく事は出来ないけどペルを連れて行って
ペルの神無月には色々と便利な能力もあるし
2対1で良い気分はしないだろうけど四の五の言っている場合ではないよね?」
「し…しかし…」
言い返そうとするとジュリアの雰囲気が変わり部屋中に重い空気が漂う
「従って貰うよ?
ここでは僕の方が君より上の立場にあるんだから
もし従えないなら悪いけどここで君を全力で潰してでも止めるよ?」
殺気に満ちた表情、言葉、そしてオーラ
気負い負けしたのか諦めてジュリアの提案を受け入れる
暫くしてペルセフォネはロザリアに同行するべく神無月の用意をしてくる
「それでは早速向かいましょうか?」
「うむ…」
支部の入り口で落ち合った2人はまずは遺跡へと向かう
遺跡についてからはペルセフォネの術式で組まれた結界内で気配を消し
正午まで張り込みをする
「ロザリアさん」
「何じゃ?」
大剣の手入れをして落ち着かないロザリアに注意を再確認する
「デストは仮にもSSS級ランクの犯罪者です
無理だけは絶対にしないで下さい
私達2人掛りでも勝てる確率はかなり低いです」
「そんな事は百も承知
しかしそれでも命を掛けてでもあやつは倒す
もうこれは仕事とかそう言う次元の話ではない…」
ロザリアは貴族であるリージュドット家の中で歴史上最強と謳われる存在
幼い頃から戦闘能力は高く数々の戦いを制してきた猛者
幾度か負けた事もあるが今回の様に一方的に負けたのは初めて
どうしてもデストに1人で勝ちたいようだ
その執念が体中から湧き出ているのがペルセフォネには見える
その時
ガサガサ、ガサガサ、ガサガサ
遺跡の方で何かが動くのを2人は察知した
急いで結界内から出て遺跡の入り口付近に向かうと小さな影が見える
影がロザリアたちの接近を感知して構えを取る
ロザリアとペルセフォネも武装を整えて影に対して構えを取る
「御主…デストではないな…」
「………」
身長は150cmくらいで体中をローブのような物で隠している
ローブの人物は何も答えずただ一切の隙もなく殺意をむき出し構えを続ける
「ロザリアさん
私が先攻してあの人の動きを捉えます
その隙に武神降臨をして一気に畳み掛けて下さい」
「承知した」
小言でペルセフォネがロザリアに指示を出すと
ペルセフォネは一気にローブの人物との距離を縮める
「呪式展開!神無月!!!
…我呪式は彼の者を捉える呪いの鎖…
『呪陰縛鎖』」
素早く術式を展開させ真っ黒な鎖がローブの人物の動きを完全に封じる
「今です!!!」
「武神降臨!雷帝鬼装!
雷神一閃…『サンダーブレイダス』!」
雷を纏った大剣を振り下ろす
目にも止まらない速さで放出された雷の斬撃がローブの人物に直撃する
雷の速さと威力を兼ね備えた斬撃を避ける事は到底不可能
やがて攻撃で生まれた煙が晴れる
「馬鹿な!!!」
眼を疑った
ローブの人物は傷一つ無かった
ローブだけは完全に消失し素顔が曝け出される
「ふむふむまさかこれ程の威力だとは思わなかったよ
流石は『雷神』の異名を持つロザリア・リージュドット
殺し甲斐があるものだよ」
殺意を込めた怪しげな笑みで立っている少年
あまりの不気味さに2人は思わず後退してしまう
その素顔を見てペルセフォネが少年の正体に気づく
「貴方はまさかヴァシリー・ブレガでは!?」
少年は2人の後ろを取りニコリと笑い答える
「そうだよ?僕がヴァシリー・ブレガさ」