04 同居人
先日のウェブ通話の去り際に後輩が、オレ以外誰もいないはずの画像に向かって「彼女さんが映っている」なんて言っていた
それ以降、家の中に何とも言えない違和感がある
何処かから見られている様な感覚があったり、人感センサー付きのライトが自分のいないところで光っていたりする
家の廊下や階段を歩く音が聞こえる事もある
全てあの一言があってから意識してしまっている
もし見えない誰かがいるとすればそれは何処にいるのか?
自分の目の前なのか、横なのか、はたまた背後なのか
何の目的でこの家にいるのか?
…考えても答えのない問いに意味は無く、勝手に住んでいるかもしれないその相手にちょっとムカつきすら覚えてきた
モヤモヤしているのは性に合わないので、こちらの要求を口に出してみよう
「どちら様か存じませんが、先日からいらっしゃる方に質問があります。聞こえていたら反応くださいませ」
間を置いて続ける
「お話出来るならお声を聞かせていただきたいです。出来ないようでしたらYESならノック1回、NOなら2回いただけると助かります」
コン、コンコンとテーブルをノックして例を示す
「では質問です。どなたか近くにいらっしゃいますか?」
目の前に誰もいない一人の部屋で馬鹿げているとは思ったが、自分以外誰もいない室内に質問を投げ掛けてみた
やっぱり返ってくるはず無いか…当然だよなと思ったがもう一度だけ聞いてみた
「どなたか近くにいらっしゃいますか?」
… … コン
マジか?ノックが1回返って来た
「ありがとうございます。では質問を続けますね。あなたはずっとここに住んでいる方ですか?」
… … コンコン
「失礼な質問で申し訳ありませんが、あなたは私に危害を加えるつもりでいますか?」
コンコン! … コンコン!
素早いノックが返って来る
「強めに否定ってことでしょうか?」
コン!
この答えに少し安堵した
「あなたの存在がこのところ気になっていました。この先もいらっしゃると言うのであればこちらの生活に配慮いただきたいです。可能でしょうか?」
コン!
また素早いノックが返って来る
「ありがとうございます。私に危害を加えないのであればあなたに居ていただいても問題ありません。一人で退屈してたのでたまに話聞いてくれると嬉しいです。」
コン
「文字の読み書きは出来ますか?可能であればYES/NO以外の回答になる場合はそちらでお願いします」
『わ か り ま し た』
目の前に置いてあったチラシの余白部分に文字が浮かんだ
「改めまして、よろしくお願いしますね」
不思議な同居人が出来たようだ