03 顔認識
以前は会議があったら実際に集まってする事が当たり前であったが今ではインターネットでする事の方が多い
PCやスマホのカメラで参加者の様子を映してリアルタイムで表示しながら話すことが出来る
通信環境さえあればそんなに場所を選ばないのも便利である
人の映っている部分以外の背景をぼかしてくれる機能もあって見せたくない物がうっかり映り込んでも大丈夫なのは助かる
ウェブ会議をやり始めた時に、洗濯した下着が画面に見切れていて恥ずかしい思いをしたのを覚えている
今日も短い打ち合わせが1つある
そろそろ始まる時間だ
ソフトを立ち上げて相手がログインしてくるのを待つ
程無くしてピコンと音がして映像が表示された
「先輩お疲れ様です。お待たせしました」
「お疲れ様。今ログインしたところだよ」
「そうでしたか。早速、打ち合わせ始めましょう」
後輩と今度の仕事について30分ぐらいの打ち合わせをした
「すり合わせが必要なことはだいたい出来ましたね」
「そうだな。あとで必要な事があれば改めて連絡し合おう」
「そうですね。ところで先輩?」
仕事の話が終わると後輩はいつもこう言って雑談を始めてくる
「なんだ? どうした、ニヤニヤして」
PCに映っている後輩はいつもに増してニヤニヤしている
「先輩、ずっとお一人だったのに彼女さん出来たんですね?」
「は? 彼女?」
ずっと独りな自分に向かってとんだ勘違いをした質問が来たので面食らってしまった
「どうして彼女が出来たと思ったんだ?」
素直に思った事を聞いてみた
「今って先輩お家のリビングから通信してますよね?」
「ああ、そうだが」
「先輩の画面って背景ぼかしてるじゃないですか。それって人の顔を自動で判別してその周囲は普通に映る仕組みですよね。」
「たしかそうだったな」
「さっきから先輩の画面にちょくちょく女の人が通り過ぎてるのぼかし外れて見えてましたよ」
そう言うと後輩のスマホから着信音が鳴ってるのが聞こえた
「先輩すみません!彼女さんの事、今度ゆっくり聞かせてくださいね」
後輩はそう言ってウェブ通話を切ってしまった
リビングはいつも通り一人の静けさに戻った