01 繰り返すヒッチハイク
私はしがないサラリーマンだ
仕事で日本各地を良く移動している
社用車を使っての移動が主な方法である
大概は隣の県の片道1時間位のお客様のところに行く事が多いが、遠いところだと県を跨いで3時間ほどかけて訪問する
もちろんその際は高速道路を使っての移動となる
高速道路で200〜300kmの移動となる場合もあり、途中のサービスエリアで休憩する事もよくある
今日もお気に入りのサービスエリアで休憩中だ
昼食を摂り食後の余韻に浸っているとトントンとガラスを叩く音がした
音の方をみると大学生くらいの男がこちらを覗き込む様に立っていた
窓を少し開け声をかける
「何か用かい?」
問い掛けに窓をノックした男が答える
「あの、僕ヒッチハイクの旅をしてまして、もし良ければこの先乗せていただけませんか?」
「目的地は何処なの?行き道だったら良いよ」
「え?ありがとうございます!この先の高速道路で行けるところまでお願いします」
「なら1時間くらい走ったら高速降りちゃうからその手前のサービスエリアまでなら良いよ」
「ありがとうございます!助かります!」
助手席に置いてある荷物をどけて座れる様にしてあげ、男を乗せてやった
この男、本名を言うのも何なので大学生A君
歳は19歳、身長は180cmくらい、細身な見た目ではあるが姿勢が良いからかがっしりとしているように見える
俗に言う陽キャってやつだろう
助手席に座ってからずっとこちらに話かけてきている
二十歳になる前に日本縦断の旅がしたくてヒッチハイクをして各地を巡っているそうだ
ここに来る直前は何処にいたとか、あそこで食べた料理は最高だったとか、こちらが話題を振らなくてもずっと喋っている
あまりこういう雰囲気に乗り切れない自分としてはちょっと鬱陶しいとも思いつつも眠気覚ましにちょうど良く合間に相槌を打っている
それもあと少しだろう
そろそろ彼を降ろすと言った場所に近づいている
「そろそろさっき言ってた所に着くから悪いけど降りる用意をしてくれないか?」
「もうそんなに来たんですね。あっという間でした。ありがとうございます!」
そこそこ往来の多いサービスエリアに到着し彼をそこに降ろす
「ありがとうございました!この先もお気をつけて」
「ありがとう。君も良い旅を」
「はい!もしまた会えたら話聞いてくださいね」
窓越しに手を振り車を発進させる
「また会えたらか。あいつ覚えて無いのか?」
彼をサイドミラーで確認しながらサービスエリアを出て帰宅した
そして、数ヶ月後
客先回りを終えていつものサービスエリアに立ち寄る
ルーチンになっている定食を食べコーヒーを飲み休んでいると窓をノックする音が響いた
「あの、僕ヒッチハイクの旅をしてまして、もし良ければこの先乗せていただけませんか?」
空いている助手席を指差し乗せてあげた
ここから1時間眠くならずにすみそうだ