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短編(単発・企画)

ファンタジー批判論〜勇者と魔王とRPG〜

作者: ディスマン

ピノキオピーさんの超主人公を聴いてて思いつきました。

これって小説じゃなくてエッセイ

いやエッセイじゃなくて論文

いや論文ってか持論だねほぼ(笑)

『魔王と勇者』


 異世界やRPGものなどで古くから争ってきた二大勢力のトップだ。片や人類の希望であり、片や魔族の王。これは聞くだけなら正反対。北と南ぐらい極端にあるものと思うことだろう。実際、勇者は基本ただの村人だったりすることが多い。それが急に神託だったり聖剣に選ばれたりして、国王などから勇者の役職を担われ冒険の旅に出る。なんとも王道な流れであるが、これだけでも疑問点や不審点は数知れない。


 まず初めに、魔王=悪とされることに不審を抱かざるを得ない。魔王とは魔族の王であって、悪魔の王ではない。故に、邪悪な種族による世界脅威と考えるには浅はかなのである。人間側が勝手に異種族を悪と決めつけている差別的戦争の可能性だって十分にある。そもそも、多種族を襲撃してばかりの集団が、国や団体として成立する方が不思議なのだ。魔族でも、対人間関係を除けばそれなりの秩序や経済が存在していなければならない。よって、それぞれには少なからず納得できるだけの国体や戦いの言い分がある。そこに善悪が成立することはあり得ない。

 次に、世界征服の理由が杜撰(ずさん)である。現実での人間間の戦争は、主義主張は勿論のこと領土や資源、宗教などが理由である。征服を是とする帝国主義や植民地主義もあるが、それはあくまで国ごとの思想であって種族としての思想ではない。よって、魔族だから征服や侵略を主義としているとは限らない。そもそも、人間の王より魔王が強いのは種族の違い的にも当然である。魔族が侵略的で邪悪な種族ならば、勇者が現れるよりもっと昔から人間界を侵略しているだろう。しかし、勇者が誕生した時の人間界は、中世レベルとはいえ文明が進んでいる。魔族が人間界の文明進化を放っておくメリットがないのだ。にも関わらず、魔族はその時に侵略していることが多い。つまり、これはあくまで当時の魔王や魔族が過激派なだけであって、種族そのものの責任や悪性は関係ない。

 村人が勇者に選ばれることもてんで納得できない。選ばれたからには何か特殊な力があって然るべきだが、始まれば分かるが勇者に特別な力など何もない。モンスターを倒してレベルアップする普通のキャラクターなのだ。それが何故神や運命に選ばれるのか。理解も納得もできない。作中でもその説明はされていないことだろう。読者諸君にその部分に関する心当たりがないのが証拠である。終盤に覚醒したとしてもそれは主人公がというより聖剣が覚醒したに過ぎない。本人は普通の人間でしかないのだ。ただ強い装備と努力で培ったパラメーターしか持たない普通の人間なのだ。となれば、勇者など誰でもいいのである。大前提、女神に魔王退治をさせられること自体が馬鹿げている。神なら魔王の一人くらい倒せるだろう。魔王が女神より強大だとして、そうなるまで放っておいた神に責任がある。逆に人間が魔界を侵略していたら、魔族から勇者は現れたか?いや、絶対ない。勇者とは一般論的にも人間族からしか生まれない。これは最早、人間族もしくは女神による悪意ある贔屓と解釈されても文句は言えない。第一、世界を救う以前に世界を救わざるを得なくなるようなシステムを構築した創造神こそ諸悪の根源でしかないだろう。そうなれば、ドラゴンクエストは人間的というより機械的な人物しか存在していないのではなかろうか。

 仮に女神から勇者に選ばれ旅に出たとしよう。ならば王国に行く意味など無いではないか。武器屋や防具屋、仲間目当てならまだ良い。しかし、城に出向いて玉座に座っているだけの老骨に「よくぞ来た勇者よ」と言われる筋合いなどない。精々旅の資金を少しくれるだけのパトロンでしか価値がないのだ。王から強い剣を渡されたのなら、王国の騎士団長がその剣を持って出陣すればよい。なのに、スピリチュアルに盲目的に従って勇者と呼ばれているだけの一般人を担ぎ上げるなど言語道断である。国王に命じられて魔王退治に行くパターンもあるが、その時主人公は権力者の言葉を鵜呑みにしてしまっているのも欠点の一つだ。人間側から戦争を仕掛けたのかもしれない。戦争需要を維持して金儲けするために勇者を死地に送るつもりなのかもしれない。そういった、冒険譚や英雄譚に隠された可能性を考えもせず命を賭けた旅に出るなど、何かしらの洗脳を受けているとしか考えられない。国も国だが、勇者も救いようのないバカであることは明白だ。本人の意思などなく、ただ無情に「世界を救う」という言葉に踊らされているのだから。

 そしていざ戦闘になれば、相手の都合など知ったことではないとばかりに魔法や剣で殺しにくる。それが、一切の主観を取り除いた勇者パーティーである。彼らは相手がモンスターだから戦っているのではない。相手がモンスターの"見た目"をしていたから戦っているのだ。ファンタジーの歴史上では、人間がモンスターに変えられた場合もある。その時は何故か勇者たちはその事情を知っていて、呪いを解いたりしてハッピーエンドを演じている。しかし、これがもし「モンスターが醜かったり凶悪なモンスターにされた」場合ならどうだろう。きっと勇者達はそんなことなど考えることもせず経験値とゴールド稼ぎとしか見てくれないだろう。だが、私が今まで述べてきた全ては必ず存在し、決して消えることのない可能性であることは疑いようがない事実なのだ。ゲームでも異世界でも、人間の中にインプットされたファンタジーという固定概念が、偏った一方的な価値観を作り上げている。ゲームならまだいいが、異世界を舞台にした作品では主人公は現実としてその世界に降り立っているのにファンタジーとして世界を捉えてしまっている。その事例からしても、勇者とその関連が如何に偏見と権力と力に踊らされている無様なマリオネットであることが分かる。

 また、旅の道中で勇者たちは様々な人や街を見ることになる。中には魔族に滅ぼされた街や家族を失った人々もいる。それに同情したり心を痛めるのは、正直言って子供だけだろう。大人になれば良い意味で純粋さは失われ、発達した脳であらゆる可能性を考えられるようになるのだ。例えば、視点が勇者(人間側)であるが故に先述した点がフォーカスされているが、それは魔王サイドだって同じことである。人間の兵隊に壊された街や魔族だって同じくらい居る筈だ。なのに取り上げられるのは、人間側の被害だけ。これのどこに正義とやらがあるのか、女神に直接問い詰めてみるべきである。魔王とか神とかモンスターとか入り混じってややこしく複雑になっているだけで、その根幹にあるのは圧倒的現実要素なのだ。立場によって違う価値観や正義、戦争による裏での商売や利益、生存競争であるにも関わらず持ち込まれる関係ない善悪。ファンタジーなんてものは、現実が幻想という皮を被っただけのものであることが分かるだろう。それが真理なのだ。

 この論文を読んでいる人は99%以上が人間であるため、共感しづらい部分も多々あることだろう。だが、肝心なのは非情なまでに現実的に考えることにある。もし自分が勇者に選ばれるとして、神や国王に言われたら魔王を討伐しに行くだろうか。誰にも行く行かないの選択肢が存在する。本来なら行きたければ行けばいいし、理由など何でもいい。しかし、ほぼそういった未来が排除されているのがRPGというジャンルなのだ。プレイヤーは勇者にならなければならず、魔王を倒さなければならない。徴兵されて戦争に行くことと何が違うのだろう。

 断ったら断ったで、勇者を止められる者は人間側にも神にもいない。勇者を制御できる力があるのなら、最初から勇者など必要ない。勇者を止められるのなら、勇者に使命を託したりすることなどせず自己解決できているからだ。この条件下で物語を進行していくためには、人間的な勇者はむしろ存在してはいけない。ひたすらに、人間と神の都合の良い正義や善に従う奴隷でなければならないのだ。とどのつまり、ご都合主義というものである。


 以上の反論や指摘から、魔王や勇者をRPGや王道ファンタジーのような価値観や目線で見ることは危険である。せめて、俗物のような良くも悪くも人間的な勇者でなければ意味がない。だが、そんなことは許されることはないだろう。なぜなら、ファンタジーという世界そのものが、勇者や魔王の行動に対してはいorいいえ、及びコマンドチックな選択を強制してくるのだから。むしろ、神ではなく人間がファンタジーや異世界を創造した方が健全である。

 結論、ファンタジーはクソ(過言)。

終始、魔族側の弁護士みたいだったね。

ウケる。

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