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ヤスダヤスオは安っぽい?半分は正解、でも半分はディフェンダーです!  作者: ふみんのゆめ
【シェアハウス篇】

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49.結論は……もう出ています

 突然の訪問者も失敗を自覚したようだ。

 いきなり押しかけた挙句に家の主に嫌味を言う。

 悪い印象しか与えない態度ではヨリを戻したい相手がなびくはずもない。

 未亜(みあ)が怒りの表情を浮かべれば、しまったとする暁斗(あきと)の顔だ。

 後悔は、しかし二階から聞こえてきた声によって驚愕へ変わる。


「ヤスオく〜ん、まだー。早く続きしましょぉ〜」


 艶っぽい声が階段を踏む音と共に降りてくる。


「ああああ鮎川(あゆかわ)さん、ななななにを」


 ビビりまくるヤスオの目には、およそ会社ではお目にかかれない菜々(なな)がいた。

 トレードマークの丸メガネを外しているのはもちろんのこと、着崩れした格好でくる。まさしく誤解を生む乱れた姿で玄関へ降り立つ。しかも演じている方はノリノリとくる。


「やだわ、ヤスオくん。お客さまが来たからってブラなくてもいいじゃない。旅行で覚えた続きをしましょ」

「き、キミ達はそのような関係にないと聞いているぞ」


 泡を喰ったかのような暁斗に、菜々は髪をかきあげつつだ。


「いつまでも男と女が何もないなんて考えるの。先週の旅行でね、私ら負けたの。よくあるでしょ、普段が冴えない男ほど夜はスゴイって」


 菜々が何を狙ってか、美亜はすぐに理解した。ヤスオがバカにされたことに対するお返しは愉しんで、とする気持ちには共感も出来る。


 ただ残念なことにヤスオは所詮ヤスオだった。


「ちょちょちょちょちょっと待ってください。ごごごご誤解です、誤解ですよ。わかりますよね、これほどの女性たちが自分なんかに身を預けるはずがない、とわかりますよね」


 暁斗に了解を迫ってしまっていた。ヤスオを想っての行動を無にするも甚だしい。

 そ、そうなのかな、と暁斗は戸惑いも露わだ。


「やっちゃん、ひどーい。もしかして旅行での夜のことは、酔っ払っていたから忘れたとかー」


 美亜まで乗ってきたから、ヤスオにすればたまらない。


「ううう、ウソですよ。確かに酔っていましたよ。記憶だって所々抜けています。いますけど、自分が女性になにか出来るはずがないです。ですよね?」


 隙だらけとする内容だけでなく最後に確認を、三和土に立つお客人に求める始末だ。

 ど、どうかな、と暁斗がそれしかない感じで返事をしていた。


「やっちゃんを、こんなに好きなのに」


 涙目で美亜が訴えてくる。


「他に女が何人いようとも忘れられない思い出があるものよ」


 色っぽさ全開で菜々がくる。


 そそそそんなバカな、と答えるヤスオの首へ後ろから腕が巻かれた。


「おぅおぅ、ヤスオ。オレも愛しているぜー」


 さすがに凪海(なみ)はふざけすぎていて勘違いしようがない。けれどもスリーパーホールドを決められ声が発せない。ぐ、ぐるじぃ……、と首を締め上げられてヤスオはうめく。巻かれた腕へ、やめてくれと手のひらで叩いた。


「わかってくれねーと、ギブアップは認めねーぞ」


 しつこければ降参するしかない。

 わ、わかりました……、とヤスオが答え、ようやく振り解いてもらえたらだ。


「ひどーい、やっちゃん。まさか三人目!」

「凪海さんまでとは、ヤスオくん。恐るべしです」


 美亜と菜々へ、そんなことあるわけないですよ、と言い返したくなる。現実に口へ出しかけたが、それより前だった。


「わかった、わかったよ。美亜がキミ達と楽しくやっていて離れ難くなっている気持ちはわかった」


 呆れ返った暁斗が、にぎやかだった四人を静止させた。


「美亜、僕は出世する。少なくともそこの男よりは社会的地位を得てみせる。つまりそれは周囲が羨むカップルから夫婦になれる機会が失われることを意味する。今現在の仲良しこよしを優先すべきか、出立まで再考すべき時間はあるよ」


 今一度、美亜へ最後とばかりの通告だ。

 答えはゆっくり横へ振られた顔が正面へ向くと同時に発せられた。


「猶予の時間はいらないよ、暁斗。わたしはここ、安田家で新しい道を模索するって決めてるの」

「美亜らしくないぞ。不器用でおっちょこちょいだが、世間に恥じない行動を心がけられる素晴らしい女性だったじゃないか」

「うん、周りに合わせるように生きてきた。ずっと世間で褒められるような生き方を心がけてきた。でもね、尽くしてきた人に応えてもらえなければ泣くしかできない自分はイヤなの。わたし自身の力を身に付けたいの」


 しっかり美亜の顔は上がっていた。

 美亜さん……、と思わずヤスオは呟く。身軽なジャージの凪海や着崩しのルームウェア姿である菜々も息を詰めている。

 ふっと暁斗は鼻で息を吐く。


「そこにいる男なら、美亜の言う自分の力が身に付くのか」

「やっちゃんは、ちゃんと話しを聞いてくれる。聞いたうえで一生懸命に考えてくれる。それは暁斗から感じたことがないことだよ」


 そんなことぐらい……、と暁斗が言いかけたところを、未亜は制した。


「できないことだよ、自分の結論を言うために相手の話しを聞く暁斗には」


 今度こそ訪問者は返す言葉を失っていた。


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