初めてのコメント
カゲちゃんの歌った「上を向いたらひとりじゃない」は想像以上によかった。僕が感じていた空虚感も、「いいね」をもらったときの嬉しさも、カゲちゃんが歌えばより伝わってくるようだった。
ここはもう少しこうだといいなとか何度かやり取りをして、最終的にhajimeがまたアレンジを加えて、曲が出来上がった。
学校行事とかじゃなくて、初めて何かを力を合わせて作った。しかも何もないところから自分達で。生み出したって言ってみてもいいのかな。
出来上がった曲をhajimeの部屋で、カゲちゃんともオンラインで繋いで3人で聞く。
「最終的にどんな風になっているのか楽しみ。」
カゲちゃんが画面越しでワクワクしている。僕もワクワクしている。
「よし、流すぞ。」
hajimeがスタートボタンを押す。部屋に流れる曲。少し前に聞いたときよりよりボーカルが目立つアレンジがされている。とてもいい。みんな黙って集中して聞く。
曲が流れ終わると思わず拍手してしまう。それはカゲちゃんも同じだった。
「スゴいっ!わたしの声がこんな風に曲に載るなんて!しかもかっこいいのにちょっと切なさもあって。嬉しい。」
「ほんと、すごいね。僕だけじゃ絶対こんな曲作ることなんて出来なかったよ。ふたりともすごい。」
「それは俺だってこれはひとりじゃ作れなかったよ。SUI夏の歌詞とカゲの歌があってこそだよ。」
なんだかお互い誉め合うみたいになっちゃった。みんなちょっと照れながら、出来上がった嬉しさを噛み締める。
「わたし、梨子ちゃんにイラスト描いてもらってアップしてみたいんだけど、いいかな?」
「いいよ。アップするときに俺らの名前も入れてくれれば好きに使って。」
「僕もアップしたら、前のより再生数上がるかなぁ?」
「どーだろな。それは俺にもわからないよ。」
カゲちゃんが陽炎catのチャンネルで上げると、元々僕のチャンネルより視聴者数も多いからいろんな人が見てくれていた。
「再生数が僕のとは雲泥の差だ。梨子ちゃんのイラストもキレイだなぁ。」
いろんな人が聞いてもらえてカゲちゃん様々だな。それが僕のチャンネルでなかろうと誰かに作ったものを聞いてもらえる事実だけで満足だ。
陽炎catの動画には今回の歌に対してのコメントも書かれていた。僕はそれを見てちょっとにやつく。
「歌詞が共感できてスゴいいいです。」
僕の孤島に新たに誰かのコメントが届いたみたいだった。