カゲちゃん
「聞いてもらったら、歌ってみたいかもだって。」
蜜柑の友達の梨子ちゃんにいろいろと説明して友達に僕らが作った歌を歌ってもらえるか聞いてみてもらった。
「ほんとに?」
「でも、一回ふたりと話してみてから決めたいって。」
「話す?直接?」
知らない女の子と話すとか大丈夫かな?…でもhajimeがいるから大丈夫だよね。
「直接って言っても住んでるところが遠いからオンラインだけどね。」
オンラインで誰かと話すなんて初めてだな。僕の友達って学校の友達しかいなかったからオンラインなんて授業でしか使ったことない。なんかドキドキだ。
オンラインの当日はhajimeの家に行って繋げてもらった。
「おっ。繋がったみたい。」
何も映ってなかった画面に女の子が映された。ツインテールで顔も結構可愛い。顔出ししても動画再生数上がりそうだなって思った。
「こっ…こんにちは。」
うわずった声で僕は挨拶する。
「初めまして。わたし、梨子ちゃんの友達で、陽炎catっていう名前で活動しています。今回はお話ありがとうございます。」
「初めまして。えーと、俺がhajimeでこっちがSUI夏です。俺がトラックを作って、SUI夏が歌詞を書いている感じです。」
簡単にhajimeが自己紹介をしてくれる。
「今回、作った曲が誰か歌える人に歌ってもらいたいなと思って知り合い経由で探してたんだけど。陽炎catさん、どうかなと思って…。」
「名前、カゲって読んでください。みんなカゲとかカゲちゃんとか呼ぶんで。梨子ちゃんから曲送られてきたの聞いて、かっこいいって思いました。」
「ほんと?あっ…でも趣味で作っているもので、お金とかは全く払えないんだけど…。」
カゲちゃんが笑う。
「いや、わたしもただの素人だし、高校生なんでお金とかいらないですよ。わたしの動画チャンネルとかSNSとかで曲を上げさせてもらえたらいいなとは思っているんですけど。」
「そんなの全然いいよ。むしろ色々な人に聞いてみてもらいたい。」
「ほんとですか。じゃあ、ぜひ歌ってみたいです。」
「じゃあ、ぜひお願いしたいな。歌はSUI夏が仮で入れてる歌を参考にしてもらって。そっちはもう送ってあるよね。あと歌が入ってないデータも送るから。歌ってみてもらって、また話し合って調整していく感じのやり取りでいいかな?」
カゲちゃんが頷く。
「あ、でも僕が歌っているの下手くそだから、カゲちゃんが色々とアレンジしてくれて構わないから。」
「怖そうな人たちだったらどうしようかと思ってたけど、ふたりともいい人そうでよかった。わたし、カバーしかやってきてないから新しい曲に携われるなんて嬉しいです。こういう風に誰かと歌を作っていくのも初めて。」
「それは…僕らもかな。」
hajimeと目を合わせる。
「お互い不馴れで迷惑かけてしまうこともあるかもだけど、一緒に作り上げていけたらいいな。」
hajimeが言う。僕も同じ想いだ。
「新しいこと…なんかドキドキするね。」
カゲちゃんが言う。みんな同じ想いだ。