歌唱問題
「結構いい曲出来たと思うけど…。」
「そうだね…。」
『問題は歌唱…かな。』
2人で声を揃えて言う。
僕だけのヘボヘボなトラックで歌ってるときはそこまで感じなかったけど、やっぱりトラックがしっかりすると、歌唱のダメさがより目立つ。
一応、今回も僕が歌ってみてる。hajimeは?と聞いたら「俺は絶対無理」と返ってきたから。
「SUI夏の歌がめっちゃ悪いって訳じゃないけど、今回意外とメロディアスな曲に仕上がっちゃったからしっかり歌えたほうがいいかなぁ。」
気を遣って言ってくれているけど、多分めっちゃ悪いよ。
「誰かいないかなー。あっ、SUI夏の妹さんとかどう?この曲、女性ボーカルも映えそうだし。」
「あいつは良くも悪くも僕の妹でしかないよ。…つまり僕と変わらない歌唱力。」
「はー、残念。どーしようかなぁ。」
「ツブヤイターとかで募集出来ないの?まぁ、僕は大して使い方わかんないんだけど。」
「俺もDTM関係しかフォローしてないしなぁー。その辺よくわからないんだよな。てかSUI夏のツブヤイターのアカウント教えてよ。」
「え…僕のアカウント?」
それは結構ヤバイ。なんていったてとても空虚なアカウントだ。
「いいけど…。引かないでよ…。」
「なっんだ!?このアカウント!?フォロワーいないのはまぁ、百歩譲ってもわかるけど、誰もフォローしてないってどういうことだよ。」
「何、フォローしていいかわからなくてさ…。そこで自分の趣味や傾向を見られているかと思うと、ちょっと恥ずかしくて…。」
「いや、誰も見てねぇよ。それで全然使ってないなら意味わかるけど、中途半端に呟き投稿してんじゃん。なんだよこの『自販機で飲み物買ったらお釣出てこなかった。つり銭切れだった…。』って。誰に対して語ってるんだよ。いっそホラーだわ。」
「だから引かないでって言ったじゃん。僕も壁打ちしてるみたいなアカウントなのはわかってるんだよ。」
「とりあえず、好きな音楽とか音楽作成系の興味のあるアカウント片っ端からフォローしとけよ。なんか怖いから。」
「そんな言う?」
とりあえずhajimeがフォローしている中で興味ありそうなものをフォローしてみた。
「SUI夏がそれなら俺のほうで探すしかないかなぁ。」
「コミュ障でゴメンね…。」
僕は苦笑しながら答える。
「ねぇ、蜜柑の友達に歌うまい子とかいない?」
晩御飯のときになんとなく話の流れで蜜柑に聞いてみた。
「歌を歌う子はいないかなー。でもイラスト書く子がいて、その子が歌う友達に動画アップする用にイラスト書いてあげてるって言ってたかなー。」
「ほー。」
その子経由でお願いとかできないかな。
「歌ってる人の動画知ってる?見てみたいな。」
「知ってる。教えてもらったから。なんで?まさかっ。お兄ちゃん、年下狙ってんの?」
「ちっ…違うよ。hajimeと新しい歌を作ってみたんだけど歌ってくれる人を探してて…誰かいるかなって。」
「そうなんだ。まだやってたんだ、歌作り。いいよ。ごはん終わったらね。」
ごはんのあと蜜柑に動画を見せてもらった。動画が始まる。
顔は撮る角度とマイク前に置いてある網みたいなやつでほとんど見えない。音楽が流れ歌い出す。
「あ、良い声。」
「ね。わたしも素敵な声だなって思った。」
少し低音の響きのある柔らかい声。でも高音部分もキレイに出ている。僕は結構好きな声。
「イラスト書いてる子にこの子と連絡とれるか聞いてみる?」
「hajimeに相談してみてからにしようかな。」
hajimeに動画のURLと共に「蜜柑の友達の友達みたいなんだけど、どうかな?連絡とれるかはこれから聞いてみてもらうけど。」とメッセージを送る。
「おぉ。いいじゃん。連絡とってもらえたらいいな。」
hajimeからすぐに返信があった。
妹の友達の友達なんて遠いけど…うまくいくといいな。