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SUI夏は孤島で上を向く  作者: ムラサキ
4/18

初めての「いいね」

 1曲完成することが出来た。出来たからには誰かに聞いてもらいたい。


 どうする…?やっぱり…。


 考えた結果Metubeにアップしてみることにした。動画をあげてみようと一応アカウントだけは用意していた。ここに上げてみよう。


 でも歌とかアップするときって何か名前とかあったほうがいいよね?アーティスト名的な?ちょっと恥ずかしいけど。


 うーん、何がいいかなぁ?好きなものとか?好きなもの…昼間食べたスイカが浮かぶ……。


 あっ!スイカでいいじゃん。僕、夏生まれだし。ローマ字をちょっと入れて…。


 僕はノートにペンで書き出す。

SUI夏(スイカ)


 うん、いい。夏っぽくて僕っぽい。あんまり気張ってなくて。


 その名前と共に曲を動画でアップする。動画の映像は僕が撮ってきた写真を合わせる。影踏みをイメージして、日暮れ時の自分の影を撮影した写真。オレンジと黄色の中間くらいの日の中で伸びる影。これも素人丸出しの写真だけど、今自分ができるなりにこだわった写真。


 動画のアップボタンを押す。これで僕一人だけ聞いている世界から外の世界に行く。ワクワクする。





 世の中はそんなに上手くいかないもので、アップをしても登録者もいない僕のアカウントじゃ誰も見る訳なかった。再生数は僕が回した回数しか上がらない。


 でも誰かに見てほしい…こういう時は………身内だ。


 妹の蜜柑に声をかける。


「実はさ…歌作ってMetubeアップしてみたんだけど…。」


「え?お兄ちゃんが!?マジ!?動画なんてアップ出来ないまま飽きるって思ってたのに…。」


 蜜柑は驚愕の表情を浮かべる。そんなに驚くことかよ…。


「しかも、曲作ったの?楽器とか弾けないのに?」


「今はそーいう僕でも音楽を作る手段があるんだよ。でさ…アップしたけど素人のチャンネルなんて誰も見てくれないから…蜜柑見てみて!」


「頼みの綱は身内なのね…。いいよ。動画のURL送っておいて。見てみるから。」


「ありがとうっ。」

僕は急いで部屋に戻り、蜜柑に動画のURLをスマホのメッセージで送る。

すぐに蜜柑の既読がついた。


 しばらくすると

「いいじゃん。正直わたしには音楽とかよく分からないけど、やりきって作り上げられるってすごいことだと思う。」

とメッセージが返ってきた。


 身内の甘々な言葉だと思っていても嬉しい。多分音楽については誉めてない感じだけど…。あと妹なのにしっかりとした良いこと言うな…。


嬉しすぎて

「蜜柑にファン1号の称号をあげるよ!」

って打ったら

「り」

と一言返ってきた。


 了解ってことかな…お兄ちゃん、妹のリアルな塩対応に感無量だよ。


 そのあとまた蜜柑から

「そんなに見てほしければ、ツブヤイターとかにもアップしてみたら多少は見てもらえるんじゃない?」

ときた。


 あー、他のSNSも使ってみるってことかー。僕あんまり使ってなくて一人で呟いているなんの反応もないアカウントあるだけだなぁ。まぁ、アップしてみるかー。


 ツブヤイターにアップするときにハッシュタグを何使おうかと迷う。作っているうちに、こういうパソコンなどで家のなかで作る音楽のことをDTM、desktop musicっていうことを知った。僕みたいなのが作ったものも、そう言っていいかわからないけれど、#DTMってつけてアップしてみた。


 結局SNS変えたところでフォロワーもいないアカウントでつぶやいてもね…。


 そう思っていたらツブヤイターから通知がきた。


 いいねが1件押されていた。それはDTM関係のお仕事をしている人で、きっとDTMってついたハッシュタグをいいねをいっぱい押している人なんだろうけど。僕にとっては初めてのいいねだった。



 僕の孤島に初めていいねが漂着した。僕の世界も一人ではなく誰かと繋がっていたんだ。

 

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