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SUI夏は孤島で上を向く  作者: ムラサキ
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ずっとループ

「よしっ。じゃあ、結果を確認してみるぞ。」


 ふたりで息を呑んで、コンテストのサイトの結果発表のお知らせをクリックする。


 クリックして現れたのは、大賞の発表。次に銀賞、銅賞、最後に特別賞の発表。


………僕らの作品の名前はそこにはなった。


「あー、ダメだったかぁ。」


 hajimeが残念そうな声を出す。僕の心にもうっすらと灯っていた期待と言う名の光が一瞬で消されてしまった。


 …これが挫折ってやつか。今まで何かに挑戦してきてなかった僕がちゃんと向きあって感じた挫折だ。


「んー。確かにhajimeが言っていたようにちょっとショックみたいなの感じるね。」


 光が消えて心に穴が空いたような気分がする。


「そうだろ?」


「うん…。でも僕、この感情も初めてで逆になんかちょっと嬉しいかも。」


「どういうことだよ。そんなことあるか?」


 hajimeがちょっと笑いながら聞く。


「今まで味わったことないんだ。こんな感情。今まで普通に学校行って、帰ってからも何もせずにずっと過ごしていたからかな。何かに一生懸命になって、ものを作り上げて、その結果が出ないってことは、こんな感情なんだね。少し悔しいけれど、僕の中にこんな新しい感情が発見できたことが嬉しい。」


「確かにね。一生懸命取り組んだからこそ、悔しいとか残念とか感じられるもんな。この感情も悪くないのかもしれないな。」


「何もしないより全然いいよ。何もしなかったら、安全な所から見て、やれば自分は出来るんだとかずっと勘違いしていられるかもしれないけど。それって苦しくもないけれど、嬉しくもないし、楽しくもない。成長もできない。」


「うん、俺も今回の結果見て、まだまだ成長したいって思った。」


「僕も、すぐまた作りたいなって思った。」


「そうだな。悔しいけど挑戦したいし作りたいって、ずっとこれもループしていくのかもしれないな。」


「そうだね。」


「ちなみに賞取ったやつの聞いてみるか?」


 hajimeが大賞作品の動画ファイルを指差す。


「もちろん聞くよ。」



 大賞の作品は凄かった。独自性があるのにきちんと作品として成り立っていて、納得の作品だった。


「不思議だね。自分達を作品が一番だって提出したのに、スゴい人の作ったのを聞くとまだまだだなってはっきりわかっちゃう。」


「俺らはまだ作品を良い悪いを評価する物差し自体も発達してないんだろうな。」


「でも、まだまだ成長できるってことだよね。」


「当たり前だよ。」


 ふたりで顔を見合わせて笑う。悔しいけど、僕らはまだまだ成長できる。


 あぁ、はやくまた作りたいな。次は何を作ろう。hajimeに習ってるから新しいトラックを僕も一から作ったりもしてみたいし、新しい歌詞もメロディも浮かびそうだ。


 僕の中にもこんな感情があったんだな。


 甘くて切なくて苦くて嬉しい。

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