ここにしかない感情
「今回は歌はどうする?」
前回の歌はカゲちゃんこと陽炎catにお願いしたけど、今回はどうするのかな?
「今回はラップ調だから、SUI夏でいいかなって思ってる。」
「えー?大丈夫かなぁ?」
「SUI夏、自分で言うほど悪くないよ。リズム感あるから音のハメ方が上手だし。」
「リズム感なんか初めて誉められたよ。」
確かにそんな状況なかなかないしね。
「しかも今回は底辺って言葉を使っているくらいだからちょっとダーティな感じも出したいから男ボーカルのがいいかなって。それにやっぱりラップは歌詞を書いた本人が歌うのが一番伝わる気するし。」
「なるほど。確かにね。頑張ってみるよ。でも上手く馴染むように調整はお願いね。」
「そこは任せておけ。」
大体いつも作業はhajimeの部屋でやっている。hajimeの部屋には機材も多いし録ったらそのまま作業に入れるし。
ただレコーディングもここだから、ちょっと人前で歌うのは緊張する。いつも自分の家で結構練習してからやらせてもらっているけど。
「たくさんの人の前で歌う人ってすごいよね。」
「俺はもっと歌えないからそれは同感。」
hajimeの作ったトラックを聞いていてあることに気づいた。
「この最初の出だしのところもしかして雨の音使ってる?」
他の音に重ねてあるけどかすかに雨宿りのときの音がする。
「そう。ちょっとノイズっぽい音だけど、逆にそれがいいかなって。」
「うん、すごいいい。もしかしてこないだ録った音、他にも使っているの?」
「他にも入れ込んでる。探してみるのも楽しいかもな。」
「おぉースゴい。馴染んで違和感全然ないどころかスゴくいい。」
「あとは実はカゲの声をサンプリングしてビートに使ってあるところもあるんだ。」
「そんなことも出来るのか。しかもどこか気になる!」
「それは探してみろよ。まぁ、わからないかもしれないけど。」
「なんか今までの僕らのあれこれが詰まっているみたいだね。」
「自分達を模索するのが、この曲だろ。だから色々とやってみたんだ。」
「完成が楽しみだね。いや、僕らが作るんだけど。」
「そうだな。勝手に曲は出来てくれないからな。あと少しやってやろうぜ。」
「うん。」
お互いあーでもないこーでもないと相談して、曲を作っていった。でも、決まるときはパズルのピースが全部ピタッとハマるみたいに出来る。そうするとその先の作業も道が見えるみたいにスムーズに進む。
こんな感覚味わったことないな。なんか気持ちがいいね。勉強しているときだって問題が解ける時は少し気持ちがいいけど、これはそれ以上。これでしか味わえない気がする。
そうやって作っていって、ついに曲が完成した。




