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野球部

作者: 氷波真
掲載日:2022/03/16

オーソドックスな漫才です。野球知識がなくても問題ないはず。漫画の知識はちょっとあると良いのかも。


ボ→ボケ

ツ→ツッコミ

ツ「僕ね、高校時代野球部だったんですよ」


ボ「それは奇遇だね」


ツ「おっ、お前もそうなの?」


ボ「実は甲子園の決勝でノーヒットノーランやったことがあってね」


ツ「いきなりどえらい嘘つくんじゃねえよ!」 


ボ「嘘だなんて、心外だね」


ツ「いや、どう考えても嘘だろ」


ボ「僕は天地神明に誓って嘘なんてついていない。この真っ直ぐな目を見てくれ」


ツ「本当か?」


ボ「ああ」


ツ「嘘だったら、もう一緒にパンケーキ屋めぐり行ってあげないぞ」


ボ「ごめんなさい。許してください」


ツ「嘘なんじゃねえか!」


ボ「つい合コンのノリで嘘ついちゃいました」


ツ「合コンでそんなしょうもない嘘つくなよ。女の子絶対引いてるぞ」


ボ「ところで高校時代野球やってたということですけど、どのようなキッカケで始めたんですか?」


ツ「急に面接みたいになったな……まあ、少し恥ずかしいけど、野球漫画がキッカケでね」


ボ「ほう、まんが道」


ツ「違うよ! 確かにしょっちゅう草野球やっては、テラさんがホームラン打ってたけど」


ボ「まんが道以外に、一体どんな野球漫画が……?」


ツ「色々あるだろ。まあ、僕が好きだったのはあだち充作品かな」


ボ「あだち充? 知らないねえ」


ツ「知らないわけないだろ。ほら、タッチとかH2とか」


ボ「随分卑猥な漫画を描いてるんだね」


ツ「ちっとも卑猥じゃねーよ。……いや、ちょっとは卑猥なところもあるか?」


ボ「とにかくそんな奴聞いたことないね。私が知らないということは、存在する価値がないということだ」


ツ「どんだけ偉そうなんだよ! お前が無知なだけだろ!」


ボ「で、君の打順とポジションは?」


ツ「ちょいちょい面接みたいになるな……まああまり大きな声で言えないけど、ライパチだったよ」


ボ「ほう。ライスの上にカンパチ」


ツ「それただの寿司だから。ライトで8番」


ボ「どちらかと言えば、君はダイベンの方が相応しいんじゃないのか?」


ツ「ダイベン? 何だよそれ汚ねえな」


ボ「大体ベンチ」


ツ「そんな言いかたしねえよ。でもまあ実際の話、下級生にポジション争いで負けて、補欠になっちゃったんだけど」


ボ「惨めな人間だね。今すぐ蒸発した方がいいね」


ツ「言いすぎだろ!」


ボ「それでベンチで野次ってたわけだ」


ツ「まあ野次は言ってたな。ピッチャービビってるよ! とか」


ボ「ピッチャー、みんなから嫌われてるよ!」


ツ「そんなメンタルにくるようなことは言わないから」


ボ「ピッチャー、女子からバイ菌扱いされてるよ!」


ツ「ひどすぎるだろ!」


ボ「ピッチャー、前世で悪いことしたから今そんななんだよ!」


ツ「うるせえな! いい加減にしないと、今年のクリスマスは手編みのマフラーあげないぞ!」


ボ「申し訳ありませんでした。なにとぞご容赦ください」


ツ「素直に謝ればいいんだよ。それで、高3の最後の大会を迎えたわけだけど、まさかの場面で出番がまわってきてーー」


ボ「試合終了後のグラウンド整備を一人でやらされたわけだ」


ツ「そんな理不尽な仕打ち受けるか! 試合中の話だよ!」


ボ「そういうことなら聞いてやろうじゃないか」


ツ「なんで偉そうなんだよ……場面は同点で迎えた9回裏、ツーアウト1・2塁、そこで監督から代打を命じられたんだ」


ボ「いわゆる思い出代打だな」


ツ「そんな局面で思い出代打なんて出すか! 失礼なこと言うな!」


ボ「勝負に関わる重要な局面ってわけだ」


ツ「そう。あの時はしびれたねぇ。もうガッチガチに緊張してバッターボックスに入って、ピッチャーと向かい合って……とにかく3年間必死に練習してきたことを思い出して、心を落ち着けて」


ボ「ベンチから固唾を飲んで見守るチームメイト、スタンドには大声を張り上げる応援団、学校の仲間たち、祈るように見つめる幼馴染の姿……」


ツ「ん?」


ボ「バッターと一瞬目を合わせたピッチャーは、ライバルと最高の勝負ができることを密かに喜ぶような笑みを浮かべ、セットポジションに入る……」


ツ「なんだなんだ?」


ボ「ーーと、場面は変わってビル街で暑そうに歩く人々、公園で遊ぶ子供たち、海水浴場の水着のギャル……夏の情景が丁寧に切り取られる」


ツ「……」


ボ「そして浜辺に置いてあるラジカセから響くアナウンサーの声。ストライク、バッターアウト! ゲームセット!」


ツ「……お前! あだち充読んだことあるだろ!」


ボ「決定的な場面をあえて省略する演出、はっきり言って神だね」


ツ「めちゃくちゃファンじゃねえか! どうして知らないフリなんてしたんだよ」


ボ「ついつい婚活パーティーのノリで嘘ついちゃいました」


ツ「いい加減にしろ。やめさせてもらうわ」


連載作品などもお読みいただけると嬉しいです。

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