52話 安里翔
俺達は魔物と遭遇する事無く、魔王が気になっていた屋がある筈の場所へと辿り着いた。
しかし、そこのは俺達が期待していた扉は存在しなかった。
魔王は手前側の扉を開き、中に入った。次に奥側の扉を開き、同じ様にして中に入った。
「この隣り合う二つの部屋の広さから考えて、間に一部屋分のスペースが空いているのは不自然過ぎる。試しに魔法で壁を破壊してみるか。」
「待ってくれロマリオン!壁を破壊するのに丁度良い威力の魔法があるのか?」
「いいや。そんな都合の良い弱い威力の魔法などは使えぬ。威力を最小限に留めたとしても、このフロア全体に被害は及ぶだろう。しかしそれは致し方ない事。」
「何さらっと恐ろしい事言ってんのよ!それじゃぁ私達、この城で生き埋めになっちゃうじゃない!あなたと違ってこっちはは不死身じゃ無いのよ!」
「しかし、ここにはきっと何かある筈なのだ。」
魔王は尚も諦め切れないと言った様子だった。
確かにこの不自然さは気になる。
かと言ってここで時間を費やすのは勿体ない気もする。
「それじゃ、こうしよう。
先ずは当初の目的地であった玉座を目指す。そして、城を隈なく探して最後に此処へまた戻って来よう。ロマリオンもそれならいいだろ?」
「ああ、分かった。」
俺達は再び玉座を目指して先へと進んだ。
その先で俺達の目の前に大きな扉が立ちはだかった。
魔王は扉の前で後ろを振り返り、俺達に向かって言った。
「この扉の先に玉座がある。先日の魔物達の不自然な動きと石板の知識から推測して、ここには必ず何かある筈だ。」
覚悟を決めて扉を開こうとしたその時。俺の体から危険信号が発せられた。
まるで、この扉を開く事を全身が拒んでいるかの様に、得体の知れない恐怖から、指一本動かす事が出来なくなってしまった。
それは、俺の体が生存本能から、この先が危険である事を必死に訴えているかの様に感じた。
今までにも死にそうな局面を迎えた事は何度もあったが、今回はそれとは少し違う。
"この先に待ち受けているのは、既に決まっている約束された死"
その言葉が頭を過った。
それは俺達4人全員かもしれないし、4人の内の誰かなのかもしれない。
俺は他の3人の顔色を窺った。
言葉を交わさずとも、その表情を見れば全員が同じ事を考えているのだと分かった。
この先に、これまでの魔物達とは比較にならない存在が待ち受けている。
ここから生きて帰る事は出来ないかもしれない。
この不安と恐怖に堪らず、イワンが震える声で言った。
「今日の所は下見って事にして、このまま引き返して、また次の機会に来るってのはどうだ?」
「次に来る時には大勢の魔物と戦闘になる可能性だってあるんだ。折角ここまで無傷で来られたんだ。このまま前に進むしか無い。」
魔王はイワンの不安を和らげる為に、自らが感じている不安は押し殺して、敢えて毅然とした態度で言った。
その様子は、弱腰で物事に挑めば、何事も上手く行かないと言う事を長年の経験から熟知し、俺達にもその一端を伝えようとしているかの様に見えた。
「陽菜・・・。俺に立ち向かう勇気を与えてくれ。」
自らを奮い立たせる為に言葉にしてみると、何だか不思議と力が湧いて来るのを感じた。
そうしてやっと俺には二つ覚悟が出来た。
この扉の先で待ち受けている者と戦闘になった時に、決して逃げ出さずに戦う覚悟。
そしてもう一つ、その戦闘で敗色が濃厚となった時には、この身を犠牲にしてでも仲間だけは必ず守り抜くと言う覚悟。
「よし!みんな、行くぞ!」
俺達は重く閉ざされた扉を、勇気を以って今まさに開いた。




