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第一話 隣国の開戦通告

「どうすればいいんだ・・・」

「もうこの国は終わりだ・・・」


スペル王国、玉座の間

城というにはやや小さく、歴史を感じさせる城内の一角にて、多くの文官達が頭を抱え、貴族達は腕組みをしていた。


彼らがこのようなことになっている原因は、先日突如として出された隣国リベーテ王国からの開戦通告によるものだった。


「あの厚顔無恥な愚か者共が!」

「長き歴史に渡って連盟を結んできた我々を侵攻するなど、バハルス王はついに気が狂ったのか!」

「王!やつらを打って出ましょう。返り討ちにして、我らが威を見せつけてやりましょう!」

隣国の裏切りに対し、貴族や文官は口々に怒りや反攻の意思を国王に具申する。


「そうはいうが、彼の国と我が国の兵力の差は歴然。彼がこのような判断したことには何か理由があるのだろう。まずは一度、彼の要望が何か聞いてみようではないか」

玉座の痩身の男性、スペル国王12世 エドガー=スペル =ウィンターは苦い顔でそう返した。


今回開戦通告を出してきたリベーテ国王 ライアン=リベーテ=オータムと スペル王国 エドガー王は旧知の中であり、両国の国交もスペル王国創立以来、およそ100年にわたっての長きにわたる連盟によるものだった。

そのため、エドガー王の姿勢としては、【ライアン王が何故侵攻を始めたのか確認しよう】というものであった。


「王がそんな低姿勢では困ります!そのような態度が今回のようなことを招いたのではないですか!」

「そうはいっても、彼の国と戦えば敗北は必定。であれば、まずは対話をする、というのは悪くないのではないでしょうか・・・」

「黙れ売国奴が!お前はリベーテ王国の間諜であろう!この場で叩き切ってくれるわ!」

議論はまとまらず、戦いを避けようという文官と、反攻の意思の強い貴族間で刃傷沙汰になりかけようとしていた。


「よろしいでしょうか?」

喧噪の中、一人の青年が凛とした声で発言許可を求めた。

その瞬間、喧噪が水を打ったように静かになった。

「なんだ、エルウィン言ってみよ」

エドガー王は発言の主、スペル国第1王子 エルウィン=スペル=ウィンター へ許可を出す。

「はい、その使者の役目、私にやらせてください。そして私が無事今回のリベーテ王国との一件を収めた際には、私のことを認めていただきたく思います。」

口調は穏やかだが凛とした、強い意志を感じさせる声でエルウィンは、エドガー王へ自分が活躍したらスペル国王13世として王位を譲るように伝えた。

その意思を汲んだエドガー王は、息子の勇気に対し笑いながら答えた。

「よかろう。我が息子エルウィン。お前がこの度の不幸な行き違いを解決した暁には、お前に王位を譲ろう。お前たちも、それで良いな?」

優秀なエルウィンであれば失敗はないと信じ、エドガー王は周囲の貴族を見渡し、言質を取るように確認を取った。

「もちろんです!エルウィン様であれば問題ないと信じております!」

「エルウィン様の護衛として、わが軍の精鋭をお連れさせてください」

「これでスペル国も安泰ですな。ハッハッハ」

誰もがエルウィンが問題を解決し、次期国王となることを革新して楽観的なムードとなった。

「本来であれば私が解決しなければならないのだが、お前に任せてしまってすまない。開戦まで時間がないため、明後日にはお前に出立してもらいたい。アルルカにもお前から言ってやってくれ」

エドガー王はエルウィンに一言謝罪をし、各々明後日に備え準備に取り掛かった。


□□□


「少し休憩したいから、1時間ほど一人にしてくれ。文官達には20時からと伝えておいてほしい」

玉座の間を後にしたエルウィンは、そのように使用人に伝え自室に戻ることにした。


スペル王国第1王子、エルウィン=スペル=ウィンター

特に武勇に優れ、王族でありながらスペル王国軍の中でも五指に入る豪傑である。


そのような豪傑であっても、やはり開戦通告をされた隣国の使者としての役目は重いようで、

自室ではその金糸のような髪掻き分け、額の汗を拭っていた。


椅子で少し休んでいると、扉を叩く音が聞こえてきた。

「お兄さま。今大丈夫ですか?」

そう幼い声が聞こえてくると、エルウィンは柔らかい声で答えた。

「大丈夫だよ。入っておいで、アルル」

答えるや否や、扉が開き一人の少年が飛び込んできた。

少女と見間違うばかりのその少年は、肩まで伸びている黒髪を揺らしながらエルウィンに近づいてきた。

「扉を開けながら走ったら危ないよ、アルル」

「ごめんなさい。でも聞きました!お兄さまの方が危ないことをするって」

自分が使者になることが、早くも幼い弟の耳に入ったことを知ったエルウィンは困ったように笑い

「そうなんだ。急遽なんだけれど、俺はバハルス王国へ使者に行ってくる。戦争なんて起こさせないよ」

重ねて言うが、彼は武勇に優れ、王族でありながらスペル王国軍の中でも五指に入る豪傑である。

そんな彼であっても幼い弟には勝てないようで、玉座の間では精悍だったエルウィンの態度は打って変わり、この幼い弟の責めに対し言い訳のような発言をしてしまう。


スペル王国第2王子、アルルカ=スペル=ウィンター

エルウィンの幼い弟で、母親譲りの黒髪の少年である。

武勇に優れる兄とは異なり、体は同年齢と比べても華奢で痩身だが、頭脳明晰で常に王室図書館に入り浸っている少年である。


「明日には出発するって聞きました。お兄さまなら大丈夫だと思いますが、早く帰ってきてくださいね」

可愛い弟のわがままを聞き、エルウィンは笑いながら答える。

「もちろんだよ。バハルスおじさんがなんで戦を起こすのかわからないけれど、話せばわかってくれるさ。」

「バハルスおじさんとお父様、何故喧嘩をしてしまったのでしょう?でも、お兄さまが間に入ってくれれば大丈夫ですね!」

会話をしている内に時間が立ち、時計の針は20時を指していた。


「アルル、そろそろ20時で寝る時間だよ。俺も仕事があるから今日はおやすみ」

エルウィンはそう言うと、アルルカはおとなしく従い、部屋を後にした。


□□□

ご覧いただきありがとうございます!


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