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寝れない少女、楪鈴華8

「佳琳⁉︎なんでここに⁉︎」

「たまたま歩いてただけだよ。こっち来て‼︎」

私は佳琳に引っ張られ、どこかに連れて行かれる。

「ちょ…どこに行くつもりなの⁉︎」

「あと少しで着くから‼︎」

それにしても、佳琳の手を引く力が結構強い…8歳児恐るべし。

私は転ばないようにしながら全力で引っ張られていく。

そして着いた先はーー

「小学校?」

4年ほど前まで私も在籍しており、佳琳も現在通っている小学校だった。

「うん。避難所。なんか黒いもやもやが現れた所為で、みんな避難しているみたい。」

「そう…ありがと。」


佳琳と手を繋ぎ、校舎に向かう。

中は避難してきた住民でいっぱいだった。通りで街中で誰とも会わなかったわけだ。

近所のおじさん、友人の家族、先生方…見たことのある顔が沢山見つけられる。


廊下を歩き、休めそうなスペースを探す。

「あ、お姉ちゃん‼︎あそこなら座れそうじゃない?」

佳琳が見つけたのは図書室の一角。

あそこなら2人だと少し狭いかもしれないものの、座れることができるだろう。


「……はぁぁ…」

思いっきり溜息が出る。

休憩したことにより、緊張の糸が切れてしまったようだ。


どうしてこんなことに…それより、死神さんって何者なんだろうか…後で追いつくとは言っていたものの、場所は分かるんだろうか…?というか、黒魔ってなんなんだ……なぜ私に取り憑いたんだろうか……いつ取り憑かれたんだろうか…?


色々な思考が頭を埋め尽くす。

当然、いつまで考えても、何一つ答えなんて出ない。

「はぁー……」

「お姉ちゃん、どうしたの…」

「んー、いや、どうしてこうなったんだろうって…」

「分かんない。あの黒いもやもやが急に現れて、襲ってきたんだって。」


黒いもやもやーー黒魔の眷属が何故現れたのか、目的はなんなのか、それさえ分かれば避難もしやすいだろうし、すこしでも安心できるだろう。いや、そもそも黒魔の正体…宿主の最も大切な人に擬態するって言っていたけど、私にとって最も大切な人って、誰なんだろうか……会ったら分かるだろうか?寧ろ、正体を探るために候補達に会うことは重要だと思うけどーーもし誰かが黒魔だった時、どうすればいいのだろうか…。いや、そんなことは考えていても仕方がない。とりあえずお父さんとお母さんも心配しているだろうし、合流をしよう。

「ねぇ佳琳。お父さんとお母さんはどこにいるか分かる?」

「んーっと…多分学校にいる。緊急避難先がここだから。」

「だよね…よし、少し休憩したら探しに行こうか。」

「うん‼︎」

ただ、とりあえず今は休憩。走り過ぎて疲れたから…はぁ……



「これで1階は探し終わったか。じゃあ次は2階だね。」

「お姉ちゃん、お父さんとお母さんいないね。」

「そうだね…多分いるはずだよ。大丈夫。」

「うん…」

1階部分を探したが、両親は見つからなかった。この小学校は3階建て、さらに二号館もあるため、すぐに見つからないのはしょうがない。離れ離れにならないようにしっかりと佳琳と手を繋ぎ、2階へと上がっていく。


「あ‼︎すずちゃん‼︎りんちゃん‼︎」

不意に後ろから声がかけられる。

「えっ…えっ⁉︎フミちゃん‼︎」

「あ、フーちゃんだ‼︎」

「わー、よかった。すずちゃんとりんちゃんだ‼︎無事だったんだね。」

「無事だったけど…フミちゃんも無事でよかったよ。」

フミちゃんは私の無事を確認するなり、抱きしめてくる。

私も抱きしめ返す。人前だし少し恥ずかしい気もするが、今は何よりも親友の無事が確認できて本当に安心した。

そうしたら佳琳が「私も入れてよ‼︎」って言ってくるから、はいはい、って言って抱っこする。もう小学2年生とはいえ、時には甘えたくもなるだろう。


「そういえば2人とも、おばさん達に会えた?」

「ううん、まだ。フミちゃんは?」

「まだ。やっぱり小学校とはいえ広いから、なかなか会えなくて。」

「そっか…」

やっぱりなかなか会えないよね…

「じゃあさじゃあさ、フーちゃんも私達と一緒にお母さん達探そうよ‼︎」

「あ、それはありがたい‼︎りんちゃん、よろしくね‼︎」

「うん‼︎」

「あはは、よろしくね、フミちゃん。」

一緒に動くのは、正直言ってかなり嬉しい。だけど、やはり頭の中をよぎるのは、死神さんの言葉。


『奴らが擬態するのは人間。寄生した人間が最も大切に思っている人間よ。』


あの言葉の所為で少し疑心暗鬼になりつつある。フミちゃんは私の大切な人の1人。だからもしかしたら、ーーーー

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