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寝れない少女、楪鈴華5

…ここは?

私、さっきまで…さっきまで…?

あれ?なんだっけ?

「鈴華‼︎おーい、こっちこっち‼︎」

「あれ?お父さん?なんでここに?」

「なんでって…家族で花見に来たからだろう。寝ぼけちゃったか?」

「うーん…そうかも。うん、今行く‼︎」

まあ、いいか。

何かに疑問を感じた気がするけど、なんだか分からないし、私の気のせいだろう。

私はお父さんが手を振る場所へと走った。



「それでね、それでね‼︎」

「うんうん、そうかそうか。鈴華はやっぱりすごいなぁ。」

「えへへ。あ、お母さん大丈夫?私がやるよ?」

「いいのよ。ほら、鈴華はもっとたくさん食べなさい。せっかくのお弁当なんだからね。」

「うん‼︎お母さんのご飯美味しい‼︎」

「あら、それは朝から頑張った甲斐があったわ。」

「でも、無理はしたらだめだよ。お腹の中の赤ちゃんにも負担がかかっちゃうから。」

「大丈夫よ。それよりも、もう少し鈴華の話を聞きたいわ。」

「あ、うん‼︎それでね、ーーー」



「おぎゃぁ、おぎゃあぁあ!おぎゃあぁあ!」

産声が響き渡る。

「産まれました‼︎元気な女の子ですよ。」

「あぁ…おめでとう…ありがとう。産まれてきてくれて。」

「おぎゃあぁぁあ、おぎゃぁぁぁ!」

お母さんは、新たに産まれてきた小さな命をそっと抱きしめて言った。

「お母さん‼︎産まれたの⁉︎私の妹‼︎」

「ええ。鈴華の妹よ。」

「佳琳…私の妹…」

「これからよろしくね、お姉ちゃん。」

「うん、私お姉ちゃんだもん‼︎頑張る‼︎」



「すーずーちゃん‼︎」

「わっ、フミちゃん…びっくりさせないでよ…」

「えへへ、ごめんね。それよりも、何してるの?」

「これ?佳琳が好きかなって思って折紙折ってるの。」

「あぁー、なるほどね。すずちゃんらしいよ。ねね、私も手伝っていい?」

「うん、もちろん。」

「やったー‼︎ふふ、何折ろっかな?」



色んな景色が流れていく。

あれ、なんかすごく懐かしいような、そうでもないような感覚…もしかしてこれって…


「夢…?」


ああそうか。分かってしまうと、何とも言えなくなる。だけど、どれも私の大切な思い出だった。だからもう少し、もう少しでいいから、この(おもいで)に浸らせて欲しい…



異変を感じたのは、最近の(おもいで)を見てからだ。

なんか、記憶と合致しない。

なんでだろう。

最初は、普通に気のせいだと思ってた。だけど、その異変はどんどん大きくなっていく。

まず、私の周りの人達がいなくなった。陰口なんかも叩かれるようになった。

『楪さんって、なんかうざいよね』『キモい』『なんでここにいるの?消えて欲しいんだけど。』などなど。

ここまでならば、まだ耐えられた。

ただ、それだけならどれだけ良かったことだろうか。


次に親しかった人から敵意を向けられるようになった。


『どうでもいいわよ、あんな子。ただ一緒にいてあげただけなのに、私のこと勝手に親友だとか思い込んで。ふふ、本当に笑える。』

フミちゃんから。


『お前のことなんてどうでもいい。お前なんて私は知らない。』

お父さんから。


『あなたなんて産まなければよかった。存在しなければいいのに。』

お母さんから。


そして、ーー

『あなたなんて、私の姉じゃない。私に姉なんていない。私の家族に、お前はいない。』

佳琳から。



何かが音を立てて壊れていく。

「やめて‼︎私の(おもいで)を壊さないで‼︎」

必死に泣き叫ぶが、止まらない。


「あぁ…あぁぁぁぁ……やめて…やめて……」

壊さないで、私の、大切な…(おもいで)…を……


ゆら、ゆら、と数体の何かが急に現れ、私に近づいて来ようとする。全身真っ黒で、輪郭もぼやけている、なんだかよく分からない存在。

それがどんどんと私に近づいて来る。


「いや…いや……だれ…か……たす、け…」


震える足で一歩、また一歩と下がっていくが、”それ”との距離はどんどんと近づいていく。


“それ”の、手に相当するであろう部位が私に触れようとした時、突如私の前にすざまじい勢いで、何かが振り下ろされる。

目をギュッと瞑り、そして再び開いた時には…


「…へ…?」

目の前の”それ”が全て消滅していた。

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