悪夢に好かれた少女、小桜栞9
……え?現時点で9話…?
日常パートで話数使い過ぎた……
多分3章今までより少し長くなります…
「で、昨日のあれ、何?」
現在、私は夢見さん私室に連れ込まれていた。
家具は基本藍色などの青や黒に寄った色合いで、物はそこまで多く無い。
天井には小さな星型シールが貼ってある。電気が付いているはずなのに少し暗くてなんだか落ち着く感じ。まるで夜空のような部屋だった。
少し大きめのベッドに机と黒のゲーミングチェア。机の上には高性能そうなパソコンとモニターが3枚。ここに座って作業してるのか…いや、やっぱりイメージ浮かばない…
壁には大きな本棚と、いくつかのファイル、様々な参考書。他にもそこまで多くはないが、私も小さい頃に読んだ絵本や子供向け文庫のカバーも見えた。
「えっと、昨日って……夢の件ですか?」
「ええ。まさか他者の夢の中にまで入ってくるなんて…夢の中での出来事をある程度覚えていたり、自分の思う通りに動く事ができる人間は時々いるけど、他者の夢にまで入り込める人間なんてほぼいない…」
呆れた、とでも言いたげな表情で腰を掛けたベッドの上で足をぶらつかせる夢見さん。
「ちょうど聞きたかったんです。つまりあの夢はどなたかの夢の中、という事ですか?」
「……そうなる。」
「誰の夢なんですか?あのモノクロの世界は……あのモノクロの少女…誰なんですか?」
「………あなたには関係無い。」
「…………そう…ですか…」
どうやら話す気は無いみたい。
多分これ以上聞いても無駄だろう。今日のところは引き下がろう。
「で、あなたは何をして夢に入り込めたの?」
「…自分でも分かりません。ただ普通に栞さんと歩美さんと雑談を楽しんでから寝て、そしたら気がついたら夢の中であの状況で……寧ろ私が聞きたいくらいです。」
「………本当にただ寝ただけ?意図的に夢に入り込もうと何かしたとかでも無く?」
「はい…そもそも人の夢に意図して入るって普通できな———夢見さんはどうやってるんですか?」
新たな疑問が生まれた。
そりゃそうだ。普通に考えて他者の夢も中に入り込むなんて出来るはずが無い。
でも夢見さんは出来ている。私の夢に入り込んで黒魔?を退治してくれたし、恐らく歩美さんも同じく夢見さんが歩美さんの夢の中に入って黒魔?を退治したのだろう。
他者の夢に入り込めて、且つ戦う事ができる存在。
自分も他者の夢に入り込む事自体は出来るようなので、そちらの方もかなり気になるのだが、取り敢えずは夢見さんの方だろう。
どうやって入り込んでいるのか。そもそも——
彼女は何者なのだろうか——。
はぁ、と溜息が聞こえた。
「本当に知らないのならいい。戻って開店の準備手伝って来なさい。呼びつけて悪かったわね。」
ベッドから降り、ゲーミングチェアへと向かう夢見さん。
まだまだ聞きたいことは多い。だが、多分これ以上ここにいても答えてはくれない。
「分かりました。失礼しました。」
ひとまず退却。
私は夢見さんの部屋を後にした。