表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/69

寝れない少女、楪鈴華3

ダメだった。結局何も解決はしなかった。やっぱり時間の無駄だったか…


もうダメだ…と、思っていると、

「あ、あの…こんな状況で聞くのもどうかと思うんですけど…お名前、なんて言うんですか?」

店員さんが声を掛けてくる。

本当にこの状態で聞く⁉︎と内心本当にイライラしながら、「鈴華。楪鈴華です。」とだけ答えた。

「鈴華さんですね。あの、この後と明日、お時間はあるでしょうか?」

「暇なことには暇ですけど、もういいです。どうせ解決しないなら、もう帰ります…ありがとうございました…」


そう言って立ち上がり帰ろうとすると、店員さんが思いっきり引き止めてきた。

「う、ぅあぁぁぁ‼︎待って‼︎待ってください‼︎お願いですから私の話だけでもちょっと聞いてください‼︎お願いしますから‼︎」

「分かった、分かりましたから、大きな声を出さないでください‼︎眠さも限界で頭に響くんです‼︎」

「はっ⁉︎ごめんなさい…つい…」

「で、話って…?」

「あ、はい。昔からお姉ちゃん、説明を省いたりするせいでよく勘違いされるんですけど、お姉ちゃんは鈴華さんのことを見捨てた訳ではありません。現に、また明日、って、言ってましたよね?」

「え、まぁ、…確かに言ってた…」


確かに言っていた気がする。そして、今すぐは無理、とも…全くもって意味が分からないが…


「確かに今すぐ何かをするのは無理です。その為に今から準備をするんです。本番は明日‼︎」

「本…番…?」

「はい。その準備の為に今から時間が必要なんです。」

「準備って…何をするんですか?」

「何って…もちろん寝るための‼︎」


訳が分からない。何故そうなるのだろうか?確かに寝れないから相談に来た。原因はなんとなく特定できて、その原因をどうにかして欲しいとも思った。だけど、今から寝る準備って…どういうこと?


「うちは寝具の専門店ですからね。とりあえず枕とベッドを選んでもらいます。」

「え、…それって…オーダーメイドってことですか?」

「いえ、現在店にあるものの中から自分に1番合うものを選んでもらう、という感じですね。本当はここまでしなくても良かったりするんですけど…お姉ちゃんなりの優しさですかね?多分快適に寝て欲しいんだと思います。」

「えっと…ちなみに、お金は…」

結構震えながら聞いてみる。オーダーメイドではないにしろ、かなりかかるはずだ。しかも、快適に寝ようと思ったら、かなりの値段になってしまうはず……

店員さんは、うーん…としばらく悩み、

「見たところ、学生さんですよね?となると、学割込みで、多分10万もしないと思いますよ。」

と、笑顔で言った。

「ひ、ひぇっ…」

途端に視界が暗くなった気がする。

10万円…高い…

それに、高校デビューで一人暮らしを始めたばかりの私には、到底買える気がしない。

「あ、あの…そんなにお金が…」

「冗談です。全部お買い上げいただくとそれくらいの値段ですが、今回だけなら2千円くらいですね。」

2千円…よかった。それなら手を出せそうだ。

「それなら…大丈夫です。」

「よかったぁ…それじゃあ、選びましょうか。」

「はい。…あ、それと、本番って何をするんですか?」

そういえば聞きそびれていた。本番って何だろうか?

「それはですね、寝るんです。うちの地下で。」

ゾワっとした。

別に誰かと一緒に寝たり、なんてことに抵抗はない。小、中学生の頃によく友達とお泊まり会とかもやっていたし。

だけど、うちの地下で…って……

なんだろう、地下、という響きが、なんというか、怖い……

「あ、変な意味じゃないですよ。ただ、この家地下がありまして、そこが何部屋か余ってるんです。だから、そこを使って、鈴華さんみたいに寝れないと困ってる人たちを癒してあげよう、というだけですよ。それだけですからね?」

と、店員さんから弁明をされた。どうやら変なことを考えすぎていたらしい。

つまり、あれだ。仮眠スペースを貸してくれる、ということなんだろう。

不眠症とかの人限定の宿みたいな?ものすごくありがたいかもしれない。でも、寝られなかったら意味ないんだけどね…


「では、まずマットの固さから選んでいきましょうかーー」


その日は私に合うマットや枕を選ぶことで終わった。


そして次の日。またフラフラとしながら学校へ向かい、途中で気分が悪くなって何度か保健室にも行き、なんとか無事学校の時間を乗り切ることができた。

さあ、ようやく私は寝れる…

もちろんだいぶ辛かったけど、ここ数日の中で1番気持ちが前向きになれていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ