寝れない少女、楪鈴華1
眠い。瞼が重い。さっきからそれしか考えられない。
お陰で何やら小難しい話をしている教師の言葉なんて一切頭に入ってこない。
いっそもうこのまま寝てしまおうか。そう思っても、眠りにつくことが出来ない。すぐに目が覚めてしまう。
ここ数日ずっとこうだった。
もう何徹目になるのだろうか?
そう。私、楪鈴華はここ数日、不眠症だった。
♦︎
昼休み。ようやくゆっくり一息つける。と、思ったのもつかの間。教室が騒がしくなり始めた。
それはそうだろう。年頃の高校生、お昼ご飯なんてみんなで騒ぎたいのだろう。
「はぁ……」
深く、深ーく溜息をつく。
どこか静かな場所…
数秒考えた後、私は図書館に行くことに決めた。あそこなら人もほとんど来ないし、静かだろう。
弁当とスマホを手に席を立つ。
幸い私の席は廊下側だったので、すぐに外に出ることが出来た。
廊下を歩けば、どこの教室からも笑い声が聞こえてくる。
その笑い声が、睡眠不足の頭に妙に響いて、どうしてもイライラとしてしまう。
フラフラ、フラフラ、と歩き、やっとの事で図書館に辿り着いた。
やはりここは静かでいいな…
椅子に座り、弁当を広げ…ようとしたところで止める。持ってきたはいいけど、食欲が無い。無理矢理口に押し込んだところで、飲み込めそうに無いし、消化もできないだろう。
うつ伏せになってみるが、やはり眠れない。
はぁ…どうやったら眠れるようになるんだろうか…
スマホで色々と調べてみる。
しかし、調べても調べても、どの記事ももう見てしまっている。
そして試してみて、どれもあまり効果を感じなかった。
「ぁぁ〜…」
つい気の抜けた声が出てしまうが、仕方ないだろう。
次のページ。
どれももう見た内容。
次のページ。
どれももう見た内容。
次のページ。
あぁ、どれもこれも見た内容ばかり‼︎
次‼︎
ここももう見た内容ばかr……
「あれ?」
1つだけ、まだ見たことのない記事を見つけてしまった。
「『夢見安眠店』…?」
気になって、つい内容を見てしまう。
その記事は『夢見安眠店』の公式ホームページだったらしい。
どうやら、オーダーメイドのベットや枕、アロマなんかを取り扱っている店らしい。そして、睡眠に関するプロフェッショナルもいるのだとか。
「オーダーメイド…」
当然、学生である私に、オーダーメイドなんて頼めるお金はない。
アロマに関しては、もう試してみた。心は確かに少し安らいだ気がしたが、しっかりとした睡眠は取れなかった。
つまり、行っても無駄……
少しがっくりしてしまう。
だけど、睡眠に関するプロフェッショナルがいるとのこと…
睡眠に関するプロフェッショナル…?睡眠に関する悩み等、是非ご相談ください。とも書いてある。
興味がないのか、と聞かれたら、そうでもない、と答えるだろう。
とりあえず、話だけでも聞いてみたい…それで少しでも症状が緩和されるなら……
住所の欄を見てみたら、自宅から徒歩10分程度のところ。何故今まで知らなかったんだろう?
少しだけ、希望が生まれた。
それは細い、本当に細い糸のような希望なのかもしれない。
でも、今の私からしたら、藁にも縋る程の思いだった。
「夢見安眠店…」
そのことだけを考えて午後の残りの授業も耐え続けた。